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2F/当番ノート

世界

当番ノート 第18期

 
 
お酒をのんで帰ってきて
 
部屋の安っぽい扉をあける
 
だれもいないここへ帰ってきても,
 
外と気温はそうかわらない 白い息がうわっと出てすぐに消える
 
街灯がないぶん,外よりも暗くて
 
 
お酒をのみに行って,
 
今日はよかったな とか
 
きょうはダメだったなとかいうことを,いちいち思うようになったのはいつからだろう
 
きょうは,いつにもましてダメだった
 
 
もう暖房もつけず,
 
なにもせずジーパンのままベッドの上にいこうと決めた
 
 
安い居酒屋のレジにある,甘いだけのキャンディーを
 
最後の力を振り絞って噛みくだいた
 
 
 
布団をかぶってしまうと,
 
わたしの音しか聞こえない
 
布団も冷えきっていて,質感がやわらかいことだけが
 
なんとかいまの私のこの雰囲気をたしなめている
 
 
それでも少しずつ暖かくなってきた
 
わたしがわたしを守ろうとしているようで可愛い
 
 
こんな狭い世界しかあたためられないのなら
 
せめてこの布団のなかだけは暖かくいさせてほしくて,
 
外の空気が入らないように布団の端を持って
 
きつく腕にひきよせた
 
お前はその小さな世界でずっと生きていればいいだろ と,
 
聞き覚えのあるひとの声が聞こえる
 
 
くやしくて
 
足も折り曲げて,ちからいっぱい
 
胎児のような格好でねむります
 
自分の身を,自分だけで守るみたいにして
 
母親のいない胎児だな
 
 
ちいさな声で,オギャーと言ってみる
 
さっき舐めたキャンディーの甘いにおいが
 
私のちいさな世界を,すこし安心できるものにした
 
 
 
 
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