「ぼうやはこれがなんにみえる?」
おかあさんと木苺をつんで遊んでいたら
不思議なかたちをしたのがたくさんあった
「ねこのお耳みたい」
心の中でそう思って
うーんと言ったら
おかあさんは
「ずうっと昔、ぼうやにはじめて会ったときの、ぼうやのあんよみたいよ」と笑っていた
嬉しくなったあと
ちょっと恥ずかしくなって
真っ赤な飴玉をひとつ
ごくんと飲み込んだ
「ねえ、これ似合う?」
仲良しのしろうさぎが
頭に黄色のお花を飾ってくるくる踊っていた
「とてもかわいい」
心の中でそう思って
ふふふと笑ったら
しろうさぎは
「なによう〜」と言いながら
今度はバタバタあしぶみをした
ハラハラしたあと
どきどきして
黄色の飴玉をひとつ
ごくんと飲み込んだ
「ああ、もう一度お空を飛びたいもんだなあ」
羽をこわしてしまったフクロウのおじさんが
紺色の夜空を見ながらつぶやいた
「とても気持ちいいんだ、空ってやつは
ヒューイヒューイって なにもかもがちいちゃくなるのさ
…でもだめなんだ
もううまく、飛べなくなっちゃってね」
「羽がちゃんとなおったら、きっとまた飛べるよ」
心の中でそう思って
「痛いの?」と聞いたら
「痛いねえ」と、悲しい顔でホーホー鳴いてた
寂しくなってから
悲しくなって
紺色の飴玉をひとつ
ごくんと飲み込んだ
お家に帰ってつくえのまえで
お口を大きくぱかっと開ける
飲み込んだ飴玉たちが
真っ白な画用紙めがけて
ポロポロポロポロ飛び出した
飴玉は
溶けて滲んで絵の具に変わり
画用紙の上で遊びながら
大きな絵になり
小さな絵になる
いろんな絵が浮かぶのを眺めながら
一晩中遊んだあと、
気づいたら眠ってしまうんだけど
あんなにたくさんの絵が浮かんでくるのに
朝になったら
みんなみんな
消えてしまうのはなんでかな