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2F/当番ノート

新しいコミュニケーションの方法

当番ノート 第30期

初めまして、珈琲子です。これから2ヶ月間、自分がお薦めしたい本について書いていきたいと思います!気になる本があったら、ぜひぜひ読んでみてください!

第一回は、 私とは何か 「個人」から「分人」へ 平野啓一郎さんの新書です。

分人という、新しい考え方が書かれている本です。私達は生活の中で様々な他者- 家族、友達、上司、恋人、配偶者と関わって生きていきます。自分対他者と繋がりを作り、社会と自分を繋げながら生きていきます。本書は、インターネットによって否が応にも世界中の人と繋がった、これからの私達への、新しいコミュ二ケーションに向けてのアドヴァイスが書かれています。私達がどのようにして、スマートフォン一台で繋がる世界の人達と、どのように向き合うのがいいか、書かれている本です。
まず、自分自身を「個人」、単体一つとしてみなすことを止めることから始まります。そして「分人」という、新しい自分、自分対個人、あるいは物との捉え方についての説明が続きます。
「分人」とは、自分が人と出会い会話をし付き合っていく中で、その人ごと、もしくはものごとに生まれる自分の一部のことです。親と話す分人の私、友人と話す分人の私、恋人と話す分人の私。このように出会っていく人、ものが増えていくごとに分人は生まれ増えていきます。ソーシャルメディアの中でのみ現れる私も分人の一人です。そして分人全てが自分という「個人」です。
私という人間の個性は「個人」という単体一つのみで在るのではなく、私が複数に分けられた、相手によって変化した私、幾つもの「分人」が存在しその集合体として「個人」の私がいる、という新たな捉え方です。
高校時代の友人との接し方と、中学時代の友人との接し方になぜ違いがあるのか。それは私の中に複数の「分人」がいるからで、相手によって話す内容や態度が変わることは自然なことなのだと本書は説いています。高校の友人といる「分人」、中学時代の友人といる「分人」。それぞれを別個の人格として分けて考えるのです。そうすれば高校デビューといった言葉にも気兼ねせずに高校に入学して新たに生まれた分人の私と、新しい友人とのコミュニケーションが楽しめます。
「分人」という考え方の利点、活用方法は何か。まず、自分が誰かとの関係が上手くいかなかった時です。虐められたり、悪口を言われて自分が自信を失うことがあります。しかしその人との自分の「分人」を好きになることはできなくても、他の「分人」を愛することができれば、自分の「個人」全体を嫌いになることはありません。あの人といる時の自分が嫌い、またはあの人といる時の「分人」の私が嫌い。けれどもあの人以外の人と過ごしている私、つまり私の中の他の「分人」は好きだから、私全部を嫌いになることはない。この考え方は、自尊心を損なわない手助けとなると思います。
そしてもし自分に好きな人ができた時、自分と好きな人とのコミュニケーションの対応策を考えることができます。「好きな人」に好かれる「自分」をどう作るのか、そう考えるのではなく、「好きな人」の「分人」が、一緒にいて居心地良く感じる、「自分」の「分人」をどう作るのかを考えるのです。
今、人間関係に悩んでいる人は沢山いると思います。どうすれば自分の「分人」が、相手にとって不快な「分人」ではなくなれるか。どうしたら、好きな人に、相手にとって居心地の良い「分人」を作ってあげられるのか。「私」対「他者」、「個人」対「個人」、という大きな括りで考えるよりもずっと解決策を見つけやすいかと思います。
例を挙げてみます。私はAさんが好き。Aさんはロックミュージックを聴くのが好き。でも、私は小さな頃から両親の勧めでクラシックをずっと聴いていて、ロックミュージックを聴いたことはない。そして、私自身も音楽はクラシックを聴くのが一番好き。
この場合、私にとってAさんと親しくなる方法、Aさんとの会話の糸口として、ロックミュージックを聴くことが有効かと思います。
ここで自分を一つの「個人」と考えた場合、「私」の音楽の趣向に変化が生じると思います。クラシックが一番好きだけど、最近はロックミュージックをAさんのために聴いている。クラシックとロックミュージック、「私」の音楽の趣味に変化が生じます。そして「私」の音楽の趣向の変化を、「分人」の考え方を使って整頓します。
まず「私」には幼い頃からいる、クラシックの好きな、私対クラシックの間に生まれた「分人」がいます。そしてそこから、私対Aさんの間に生まれる、ロックミュージックを聴く「分人」の私が新しく生まれます。対自分のためにクラシックを聴き、対Aさんのためにロックミュージックを聴く。「分人」の考え方を活用すれば、クラシックを聴く「私」と、ロックミュージックを聴く「私」が簡単に共存できます。
つまり、自分自身の心境の変化に違和感を持たずに相手に、環境に適用しやすくなります。
より良いコミュニケーションのためには、相手に、新たな環境に適応することがとても重要だと思います。新しい職場、学校、外国に行けばその場所でのルールがあります。そこで生き延びるために必要なのは、まずは自分をその環境に適用させることだと私は思います。そしてその手助けとして、「分人」という考え方は有効です。自分という「個性」の整頓方法として活用できます。
いつでも大切なのは、時代の変化を受け止め、自分を適応させることだと思います。
まったく矛盾するコミュニティに参加することこそが、今日では重要なのだ-本文より抜粋
インターネットの中に溢れている、読み尽くすことのできない膨大な情報の中を今私達は生きています。そして価値観の多様化は進み、全く自分とは価値観の異なる人達がこれからもどんどん増えていきます。日本人であっても、外国人であってもそうです。そしてこれから私達はその人達と一緒に仕事をし、競争をする機会も増えていきます。その中でいかに怯えずに貴重なコミュニケーションの機会を活かすか、いかに違うもの同士が会話を重ねていくのか。価値観が拡がっていったからこそ、コミュニケーションがより大切になっていくと思います。
Kindle版、新書とあるので良かったら読んでみてください。

珈琲子

珈琲子

気になる本、強く勧めたい!と思った本について書いていきます。

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