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2F/当番ノート

YKKで日々をのりきる

当番ノート 第31期

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自分のペースを保ち続ける。これがなかなかに難しい。食料の分だけ重さが変わっていく荷物を背負い、砂漠や山岳で毎日走っていると、自分のペースといいうのが時折分からなくなる。

もちろん疲労感や呼吸、発汗など体からのサインはあるので、それを基にする。それでも、頭で今日のペースはこれくらいと予測していたら、余力を残しすぎてしっかり走り切れていないということもあった。去年走ったナミブ砂漠の大会でのことだ。ペースとタイムにとらわれて、自分の体の見極めが出来ていなかった。データやセオリーも大切だが、振り回されるのは、なんだかなあという気持ちになった。結局のところ、その瞬間、その瞬間でまだ追い込めるのか、抑えた方がいいのかを感じながら走るしかない。やれることをこなす(YKK)の精神だ。

日常においても、同じようなことを感じる。

元来、短気な性分なので、怒りにとらわれるなとたまに諭される。もっともなのだけれど、怒りにとらわれないことにとらわれてしまうと、なんだかもう困ったことになる。いったん考えはじめると、怒りにとらわれないことの虜になる。とらわれていることに苛立ちを覚えて最初の怒りは失われたにも関わらず、イライラとしてしまう。これでは主客転倒だ。かえって精神的に疲れてしまう気もする。

怒りもなかなかのものだが、丁寧なくらしを意識しすぎるのもいかがなものかと思われる。

「ああ、いけない。今日も手作りのお菓子を作らなきゃいけない。やっぱりハンドメイドじゃないとね。それにしてもハンドメイドとアンドロイドって意外と似てるわね、不思議。あら、いけない。大変もうこんな時間じゃない。バカなことばかり考えてちゃダメね。何やってたんだろ、私ったらどうかしてたわ。おっかしい。なんつって。さあベーグル作らなきゃ。きょうはブルーベリー入りなの」

これではもはや丁寧ではなく、情緒不安定な生活である。そもそも丁寧な暮らしといってみたものの、よく分からない。ネットでひもといてみると、いまに集中する、いまを楽しむのが大切なようだ。集中しているときには、そんなことを考える暇はないし、ああいま楽しんでいるよ、などと考えなければいけない日常は、丁寧というより、なんだか神経質なようで嫌だ(個人の感想です)。

そんな自家撞着に陥りがちなときは、砂漠でも走ってみればいい。YKK精神で打ち込めば、嫌でもその日、その瞬間に集中しなければいけない(やはり個人の感想です)。

YKKといえば、社名が「吉田(Y)工業(K)株式(K)会社」に由来しているのは広く知られている。社名を変更した77年前はこんなに大きな企業になるとは思っていなかったのではなかろうか。その当時の関係者はきっと毎日やるべきことを必死にこなしていただけだろうから。

若岡 拓也

若岡 拓也

ローカル、移住、走ることなどを
題材にしてライターとして活動中
福岡県上毛町で地域おこし協力隊
海外の砂漠や山岳、ジャングルを
走る大会にチャレンジしています
7日間250kmが標準的な長さです
1984年生まれ石川出身の双子座

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