一片の詩の中に、数学は、たぶん存在しないけれど、数学の中に、詩が見え隠れすることがある。
おとなの五教科、最終回のお題は[命題:逆裏対遇/真と偽]です。
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命題 「p ならば q」
この命題の逆は 「q ならば p」
この命題の裏は 「pでない ならば qでない」
この命題の対遇は 「qでない ならば pではい」
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命題が、真(正しい)であるなら、その対偶もまた、真である。
逆と裏は、必ずしも、命題の真偽に一致しない。
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例題1 次の命題の逆裏対偶をつくり、真偽を述べよ
命題|「わたし」は「あなたの味方である」
[解答例]
逆 :あなたの味方は、わたしである。
裏 :わたしでないならば、あなたの味方ではない。
対偶:あなたの味方でないならば、それは、わたしではない。
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わたしだけは、なにがあっても、あなたを信じています。
いつも、あなたの味方です。
あなたの味方は、もはや、わたししかいないのです。
わたし以外は、みんなあなたのことを理解してくれません。
わたしだけは、なにがあっても、あなたの味方です。
結論 初期恋愛の法則に従えば、逆裏対偶すべて真である。
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例題2 次の命題の逆裏対偶をつくり、真偽を述べよ
命題|「大切なもの」は「目に見えない」
[解答例]
逆:
裏:
対偶:
結論:
模範解答はありません。
日々の暮らしの中で、逆裏対偶と、その真偽を考えてみてください。
(出典|『星の王子さま』サン=テグジュペリ)
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わたしは、と言うと、落葉樹の姿を今日も眺める。
葉をすべて落とした、木の姿を見るのが好きだ。
夏の間は、青々と茂る葉に隠れて見えない樹形が、その姿を現わすから。
特に、ケヤキの樹形が好きだ。
大地と空の境界に、白いレース編みのフリンジ(周縁)を描いているようにも見える。
葉が茂り花が咲く時期は、その下の幹や枝の形には、なかなか心が向かないけれど、
いつのまにか、すべての葉を落とした木々が、
冬のはじまりの日に、澄んだ空に向かってすっくと立っている様に向き合うとき、
なにかこう、いつも、わたしは「ハッ」と気づかされる。
それがなにかは、まだわからないのだけれど。
目に見える世界も見えない世界も、命題に満ちている。