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2F/当番ノート

雨夜の喫茶店の思考

当番ノート 第37期

雨の日の夜に、喫茶店に来る。

雨の日の喫茶店は、とても好き。
雨に濡れない安全なところにいることを感じられるし、元気でいなくても、罪悪感がないから。

喫茶店て少し不思議な場所だなと思う。
それぞれが1人の時間を過ごしに、人がいる場所に来る。一人一人観察したいけれど、あんまりじっとも見られないから、横目にちょっとずつ見る。

カフェオレボウルに入ったたっぷりのカフェオレが運ばれて来る。嬉しい。
喫茶店のコーヒーって、少し小さめだから、いつも少しだけ、心もとなくなってしまうのです。

カフェオレに砂糖を入れようと思って、蓋を開けたら、ザラメが宝石みたいだった。きゅん、として、きらん、とした。カフェオレの上の泡に砂糖をかけて、スプーンですくってジャリジャリ食べる。とてもおいしい。

昨日、包丁で切った人差し指が、たまにじくっと痛い。昨日の夜は、痛くて、時々目が覚めた。

湯葉の真空パックを切ろうとして、滑って指にグサッと包丁の先端が刺さった。
うっへ!という声がとっさに出た。
痛さよりも、衝撃と、やばい、これはやばいやつ、という恐怖の方が先に来た。

ささーっと水で洗って消毒して、絆創膏をする。血が滲んで来る。こわいから、ぐるぐる巻きにして、それ以上見ないことにした。

そのあと、多分、これはやばい、という意識のせいで、気持ちが悪くなって、血の気が引いて、動けなくなった。

採血の時にも、いつも、この状態になるんだけれど、血管迷走神経反射、という症状らしい。

採血でそうなった時には、貧血なのかと思っていたけれど、どうやら、身体がショックを受けて、あぁ、もうだめだあぁ〜、と勝手にメンヘラになっている、ということらしかった。

今朝病院に行ったら、診察の前に看護師さんが、「痛いね〜、痛いね〜」と言いながら傷口を洗ってくれた。

仕事中の怪我だったから、上司に伝えると、「それは、痛かったですね〜」と言ってくれた。

痛みに共感されると、なんだか落ち着く。
子どもみたいに甘えたくなって、懐かしい気持ちになった。

必要なところで、ちゃんと共感されると、とても安心できる。他にいろんなことができなくても、それができる大人になりたいな。
もう5年以上、子どもと関わるアルバイトをしている。バイト先の子どもたちに、早く会いたいなと思った。

ショーケースのケーキが、どうも、気になる。
イチゴがひときわ魅力的で、いつまででも見ていられそう。でもずっと見ているのも恥ずかしいから、ちょっとずつ、じっと見る。イチゴのミルクシフォンケーキを頼もうか、15分くらい悩んでいたけれど、もう夜も更けているし、うん、もうすぐ撮影もあるし、うん、我慢しよう、と思う。本当に食いしん坊で、困る。

窓外の雨を見ながら、昔、あめふりくまのこって童謡が、好きだったな、と思い出す。
こんな夜中に、一人で喫茶店にいるなんて、大人になったものだな。

雨は明日まで降るらしい。
今日は昼寝をたくさんしたけど、カフェオレをこんなに飲んでいるけれど、帰ったらまたちゃんと、眠れそうな気がする。

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鈴木 睦海

鈴木 睦海

1988年に、福島県白河市で生まれ、育ちました 今は東京で、役者というものをやっています

Reviewed by
猫田 耳子

誰かが語る「好き」の話がとても好きだ。特段「おたく」と呼ばれる人たちの話がとても好きだ。
最近は「承認欲求」なんて言葉が流行っているけれど、本当は人間の欲求はそんな言葉だけでは片付けられないくらい奥深いはずだ。「好き」はそれだけ色濃く、幅広いはずだ。

…睦海さんの話は「おたく」の話ではないのだけれど。

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