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2F/当番ノート

劇場

当番ノート 第38期

劇場はそのものに命があるようで、それぞれ性格があるように感じる。

今まで踊った中で印象的だった劇場

Le Palais de Beaulieu ローザンヌボーリュ劇場。
例えるなら60代の美しいマダム
若手ダンサーの登竜門と呼ばれるローザンヌコンクール行われる劇場。
みんなが10代の頃に通った場所に30代になってから私はやってきました。
安心して踊れる場所だった。とても暖かい雰囲気の劇場。包み込んでくれるような。
ここをベジャールは選んで、いろんなダンサーが通って行った。なんだか神社に来た気持ちと似てた。
ローザンヌ

倉敷芸文館。
例えるなら 30代清楚で美しい女性
子供の頃に踊って好きだった劇場。倉敷川の横に佇んでいる。
すぐ近くにある倉敷市民会館の方が客席数が多く立派な劇場なんだけど、私は芸文館の小さくて可愛いくまとまってる感じが好きだった。きゅっとしている。
kurashiki

Teatro municipal baltazar dias ポルトガルマデイラ島の劇場。
例えるなら100歳可愛いおばあちゃん
小さくて古い。でも修復は行き届いている。ものすごく傾斜がかかっていて、回転をするのがすごく大変だった。ピケターンは山を登り、下るようだった。
劇場を出るとすぐ近くに海が感じれて好きだった。劇場についているcafeが夜はclubになるって、舞台後も楽しい。何もない時もよくこのcafeに行った。
昔リスボンのバレエカンパニーは船で公演に来ていて、小舟で大道具を運んだんだと昔のバレリーナに聞きました。
マデイラ

Teatrul national opera si ballet Oleg Dnovski ルーマニアコンスタンツアにある私が今現在踊っている劇場。
例えるなら50歳人生を楽しんでいる叔父様
お客さんがいつも熱狂的。お客さんにとって何かを発散する場所なのかもしれない。町の人々は舞台を楽しみにしてくれている。
古くてぼろぼろ。修復もされていない。ロビーのシャンデリアは壊れたまま。
こちらも海がすぐ近くにあるんだけど、それをいつも忘れてる。なぜだろう。
マデイラにいた時はどこにいてもいつも海の存在感がすごかった。
oleg

合田 紗希

合田 紗希

はじめまして。

私はバレエダンサーとして、リスボンのダンスプロジェクト、マデイラ島でのバレエ教師、チェコのバレエ団、ルーマニアの黒海沿岸にある劇場など活動していました。

現在は日本に拠点を移し
Ballet Class Natureを立ち上げました。

バレエのオンラインプライベートレッスンをお届けしています。

Ballet Class Nature
https://balletclassnature.wixsite.com/home

photo by Veronika Brunová

Reviewed by
高野 裕子

舞台の上から見える景色。
これは、とても特別な景色だと思う。
舞台上にいる演者と観客が対峙し、交感していく。
緊張と高揚、互いの反応が露わになる場所。
そしてその場が一体となる瞬間を思うと、鳥肌が立つ。

ちなみに日本の劇場の舞台は多くが平らであるが、海外の劇場(特に歴史が古いところ)は、舞台上に傾斜がついている。
観客席側に傾斜が少ないので、後ろの席の人にも舞台がよく見えるように、舞台奥が高く、手前が低い。
舞台用語でも、舞台奥をup stage、舞台手前をdown stageという。
なので、紗希さんが書かれているように「山を登り、下るよう」な傾斜がある劇場では演者の平衡感覚にも変化があって、その分からだに負荷がかかる場合もある。

紗希さんの文章にも出てくるスイス・ボーリュ劇場には、私も2011年に観客として訪れたことがある。
他にも日本や世界の国々の劇場やスペースで作品を鑑賞、上演しているが、その度に、劇場は「何かを鑑賞する場」であると同時に、例えばしばらく会っていなかった友人にばったり会えたり、幕間や終演後に鑑賞した作品について語らう場でもあると感じる。

人々が集い、作品鑑賞や会話を通してそれぞれの想いを交ぐわせる場所。
そうやって、共に生きることを重ねていく場所。
年輪のように、ゆっくりゆっくりと重なっていく場所の歴史に思いを馳せる。

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