ドンキホーテの公演が9月の終わりにあった。
今シーズン最初のバレエの公演。
スペインを舞台にした若い男女の恋物語。
明るくコメデイの要素も強い作品。私たちの劇場ではいつもとても盛り上がる演目の一つだ。
一度この演目の公演の時に、中高生団体が2階席にずらっといて、ものすごく盛り上がっていた。
この国では中高生が休みの日にみんなでバレエを観にくる。舞台芸術が浸透していることを感じ感動した。
日本にはこのように舞台芸術が人々の日常の中にないと感じる。何か特別なもののような感じ。
私の住む街constantaはルーマニア5番目の都市だが、街に国立劇場があり、
毎週末バレエかオペラかオーケストラの公演がある。
そしてドンキホーテは私がこの劇場で初めて踊った作品。
1週間しか練習がなくドキドキしながら本番を迎えたことを思い出す。
久しぶりの舞台の嬉しさと踊り終わった後の満足感。
私はこれからここで踊っていくことを実感した。
ルーマニア人達は演技がとても上手い。
普段から喜怒哀楽を出すことが多いからか、みんな自然な演技ができる。
どんな状況が訪れても色んな演技で切り抜ける。
毎回違うみんなの演技を観る、一緒に演じるのはとても面白い。
今回の舞台では16歳のバレエ学校の男の子達が初めて参加した。
舞台の上でみんなで手をつないでステップを踏みながら入っていく時
私の前にいたその少年が一人だけ体を反対に向けていた。
反対!反対!!と日本語で叫ぶ私。
なぜか 英語のoppositeも ルーマニア語のインベルスも浮かんでこず、
ずっと反対反対と言い続けてしまった。。。。。
彼にはもちろん届かなかった。
こういう咄嗟の瞬間に私はいつも日本語しか出てこない。
でも彼はもしかしたら間違えたと気づいていて、直したらいけないと思ったのかもしれない。
振りを間違えることは起こりうるけど その後どう振る舞うかで観え方は大きく変わる。
そういうことをこれから彼は知っていくんだろうなと思う。
16歳から引退間近の50歳のダンサーまでの年齢層豊かな公演だった。
ベテランの人たちの味わいある踊り、若者のフレッシュな踊り。
20代から30代前半までの若いダンサーが多いバレエ界にあって、
こういうところが私たちのカンパニーの魅力だと思う。
一幕街中の衣装
二幕夢の場の衣装