目が合えば、微笑んで「HI!!」って! なんて、たのしいんだ。これは、この国だからだの?
私は、数日前までスリランカにいたのだ。これまで2カ国しか行ったことがないから比較しようもないのだけれど、どの国がどうであれ、こういうコミュニケーションは愉快なものだった。なんていうか、こう、子ども同士が名前も覚えないまま、だれかれかまわず遊んじゃう感じに近い。BGMは『we are the world』だ。
現地で出会った女子大生のAちゃんは、「最初は私もニコニコしてたけど、日が経つにつれて慣れちゃったな……」と落ち着いたトーンで話してくれた(私よりも10つ以上年下のAちゃんは、私よりもずっと大人のように感じた)。海外だからってはしゃぎ過ぎなのかしら、私。なんて思いながら、結局最終日まで“目を合わせて、微笑んで「HI!!」”は楽しくて、あえてすれ違う人とは目を合わせ続けた。好奇心しかない。
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そういえば旅に出る前、京王線の下り列車内でインド人の男性と目が合い他愛のない話をしたことがあった。
ねえねえ、今度スリランカ行くんだけどさ、たのしいかな? と雑な質問をすると、彼は「ステキですよ!! 楽しいですよ、スリランカカレーですね!! 良い国ですよ」と目を輝かせた(「カレー!」と、私の目も輝いた)。
10分程経ったところで「ぼく、府中駅で降りるよ」と彼はいい、最後に笑顔で下車しながらこう付け足した。「実はスリランカ行ったことないんですけどね!」
えええええーーーーー
あいつ!!!!!!!
……なんて思ったけれど、実のところ怒りの感情は1mmも湧かなかった。彼の適当さなのか、ジョークなのか、悪意があったのかは、わからないままだし、どっちでだってどうでもいいけれど、彼の無邪気な笑顔勝ちだ。
それに、しばらく私は愉快な気分になれたからそれで十分だった(とはいえ、意味不明な出来事であった)。
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笑顔はいい、いいんだよ。
いろんなことを思い出しながら、久しぶりに東京独特の混雑している駅を歩いた。ふと人並みのスピードで歩けていないことに気がつく。(スリランカの占い師さんもいっていたんだけど)私はどうやら人よりノロいのだ。
どんどんどんどん私を追い越す背中を眺めて、みんな足が速い、だれとも目が合わない、だれも笑っていないなぁ。
もし、ここにいる全員が“目を合わせて、微笑んで「HI!!」”ってしたり、隣を歩く見ず知らずの人へ意味不明な冗談をいいあったりしたら。
妄想してみた。
……。
いや、その土地ならではの良さがあるってもんよなぁ。ねぇ。