死にたい気持ちを抱え続けることほど、しんどいものはない。
「こんなにも幸せなのに、まだ死にたいと思うんですか?」
あぁ、そうだよ。
何でだろうな、幸せって誰が決めてくれるんだっけ。
質問の意図もわからないまま、僕はぼんやりと答えている。
「だって、いつも薄っすら自殺志願者ですから」
自殺を考えるのは、明確な理由がある人だけじゃないと思う。
僕のように、無性に死にたくなるような人だっている。
何故か分からないけれど、自殺をしなくてはいけないような気持ちに駆られるときがある。
それは大抵、当たり前の判断が出来なくなっているほど疲れているときだ。
とてつもない絶望感に苛まれて、駅のホームから飛び込みそうになる。
満員電車、通過する電車、駅のアナウンス。
一歩踏み出せば、白い線を越える足。
眠れない夜を過ごして、迎えた朝には何度も吐いた。
それでも、明日はやってくる。
更けない夜も、明けない夜もない。
僕がいなくなっても、必ず地球は回るんだ。
誰かがいなくなっても、必ず朝日は上るんだ。
だけど、神様はそんな僕を見ているのかもしれない。
何だか今日はいいことあるんじゃないかって、神様は僕に思わせるんだ。
また何かいいことがあるんじゃないかって、神様は嘲笑うように僕を翻弄するんだ。
それはたわいもないことなのかもしれないけれど、死だけを考えるようになった僕には
刺激が強すぎると思えてくるほどの、されど些細な、そんな幸せな出来事。
夢を見せるかのように、神様は死を見つめた僕に、甘い現実を突きつけるのだ。
まんまと引っかかる僕は、またもや生きることを選択してしまう。
そして僕は、何度も裏切られた世界に、また舞い戻ってしまう。
世界に見放されたわけじゃない、なんて思ってしまう。
今日も僕は、生きている。
神様に騙されながら、生きている。
薄っすらとした自殺志願を胸に抱えて、踏みしめた地面は思ったよりも柔らかい。
そうして進む足取りは決して軽くはないけれど、きちんと前を向いている。
騙されたっていい。とろけるような甘い夢を見たっていい。
生きてるって、それだけで夢を見るチャンスを手に入れられるのだから。