どんなに些細なことだったとしても、誰かは誰かの人生に影響を与えている。
子供のころから他人とコミュニケーションをとることが苦手だった。
どれだけ言葉を尽くしても自分の考えが100伝わることはないと感じていて、どうせ70とか60しか伝わらないのなら最初から何も言わない、つまり0のままでいいと思っていたからだ。
そんなことしか考えていないくせに、誰も心を開いてくれないし誰かに心を開くこともできないといつもいじけていた。いつも寂しく孤独だった。
振り返るとそれはとても貧しく傲慢な考えだったと思う。
そんなやつが誰かと通じ合えるわけねえだろうが!出直してこい!!と怒鳴りつけながら当時の自分に平手打ちしたくなるほどだ。思い出すのも恥ずかしい。穴があったら入りたいしなんなら入った後に埋めてほしい。
ここではそんな私が少しずつ変わっていくきっかけとなった「かれら」のことについて話をしていけたらいいなと思っている。
「かれら」は、私の友達であったり恋人であったり家族であったり、なんとも呼べない不思議な間柄であったりと関係性は様々だ。
私はかれらのことが大好きで、おそらく一生忘れることはない。もう通り過ぎていってしまって二度と会えない人もいるけれど、いつでもどんなときでも大切な存在として心の中にありつづけている。
ひとりでは行かなかったであろう場所、選ばなかった色の洋服、試したことのないヘアカラー。
食べたことのないもの、読んだことのない本、聴いたことのない音楽。
私を変えてくれた人たちだ。
かれらを通して見た世界、かれらとの思い出、かれらがいた風景。
かれらに出会わなければわからなかった自分のこと。
朝がきてバタバタと身支度をし玄関のドアを開ける時、いつもかれらの存在が丸まりがちな私の背筋を伸ばす。
さて、誰のことから話し始めようか。