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2F/当番ノート

あなぐらラジオ#02_なにもしない

当番ノート 第54期

みなさんこんにちは、イラストレーターの高松です。

この連載は神奈川県の西の、山の途中にあるあなぐらのような自宅にて、ボイスレコーダーに録音したトーク内容を書き起こして投稿しています。
全8回の2回目です。

移動中は何もしていなくても許される気がする。

旅行に行くときはなるべく夜行バスを使う。座席が指定できる時は窓側を予約して、消灯になるのをじっと待つ。バスが高速道路に乗って車内が寝静まった頃、こっそりとカーテンに潜り込んで、窓の枠に肘をかけ頬杖をつく。オレンジ色の照明が次から次へと、一定のリズムで流れて行くのを目で追う。音楽を聴いている時もあるけれど、タイヤが路面を撫でるゴオオと言う音と、道路に均等に並んだ照明とすれ違う度にザアッザアッと空気が鳴っている感じ、そしてそのリズムを乱すようにトラックがバスを追い抜く音。そんなのを聴いてるだけのときもある。それだけで心地よい。

電車もなるべく各駅停車に乗って景色を眺めたい。でも都内では、スマホや本も読まずになにもしていない人は不自然だ、みたいな空気があるので、頑張って本を読んでみる。読書に没頭できる時もあるけれど大抵は2、3ページも読んだらもういいかな、となる。他人から、アイツ格好だけの読書だったな。なんて思われてないかなあ、とか思いながら本をリュックにしまって。結局ぼおっと向かいの窓の外を眺める。

たまに「なにもしない」をするためにわざと電車に乗ることがある。電車に乗ることが目的だから明確な目的地は決めない。気分が満足するところまで乗って、ここら辺かな。と直感にしたがって電車を降りる。

乗り物に乗っているときは、とりあえず「移動」だけはしているので、その他のことは全てがついでのことになるような気がしている。移動さえ出来ていればとりあえず大丈夫。そんな安心感がある。普段の生活の中で、はっきりとは意識していないけれど、生産性のない時間を過ごすなんてもったいない、という気分があって、そこから許されるために移動をしにいくのかもしれない。

実は最近引っ越したのは、そうやって「なにもしない」移動をするときによく降りていた駅。気分転換のための土地に住んでしまうのってどうなのかなと思ったりもしたけれど。自分の直感が度々選んでいたのだからと思って越してきた。

そんな訳か、ここではいまのところ、家の中でもぼうっと、なにもしない時間を持つことが出来ている。

コロナもあるので、在宅時間を豊かにしたいなと思いつつ。
それではまた次週。
イラストレーターの高松でした。

高松 直人

高松 直人

イラストレーター

1988年 神奈川県
2015年 木村創作教室
2018年-2019 HB塾
好きなもの:散歩/音楽/ラジオ

WEB : takamatsunaoto.com
instagram : @takamatsu_naoto
twitter : @takamatsu_naoto

Reviewed by
yuka

都会で経済活動の末端の一人として、せわしなく過ぎる時間や溢れる物事に囲まれていた頃、常に何かをしていなければならないような、何もしていないことが良くないことのような、そんな思いに取り憑かれていた。

気づくと目的ばかり見ていて、途中過程を楽しめていなかった。
ただ急いて行く道のりに、心まですかすかになっていた。

だけど、久しぶりに何の特徴もない郊外にある実家の、何の変哲もない道を歩いていた時。
意識の奥底に眠っていた感覚や、風景として広がっていた世界が少しずつ呼び覚まされた。
その時、あぁ何もない、と思っていた場所とか時間にこそ、自分らしい風景って残っていくものなのかなぁと思った。

高松さんは、新居のあなぐらで、どんな風景を見て、そして刻んでいくんだろう。
そんなことを考えながら、また次回の話を楽しみにしている。

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