みなさんこんにちは、イラストレーターの高松です。
この連載は神奈川県の西の、山の途中にあるあなぐらのような自宅にて、ボイスレコーダーに録音したトーク内容を書き起こして投稿しています。
全8回の4回目です。
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少し伝えるのが難しいのだけれど、昔から、物と物の距離と、そこに発生する意味に興味がある。
例えば絵を描く時。手を伸ばしている人がいて、その手の先にはリンゴがある。こういう時、この人とリンゴの距離を色々と試したくなる。
ただリンゴを掴もうとしている、という説明的な絵を描きたい場合は手の先すぐにリンゴを置く。今度は画面の端と端くらい遠くに置くと、届くはずのないリンゴに手を伸ばすその人物の心境が発生してくる。この人はどうしてこんなにもリンゴを欲しているんだろう、とか。このリンゴはもしかすると何かの比喩なんじゃないなんだろうか。などそれぞれの距離感に対して異なる意味が発生しだす。人物とリンゴの間の空間に様々なストーリーを想像することができる。
さらに、この画面の中に一匹の蛇を登場させると。途端にアダムとイヴの禁断の果実の話が思い浮かべられる。そんなふうに、物を次々に置いていって、そこで発生する意味、を考えるのが好きだ。そして、その物同士は無関係であればあるほど想像するのが楽しくなる。
羊とセーターの関係は考えれば意味がわかるけど、羊とコンセントの関係はちょっと意味がわからない。これを理解しようとするには、たくさん想像力を働かせなければならない。この間に何を想像するかは受け手によって違うと思う。そんな余白が好きだ。
これは言葉も同じで、本や音楽のタイトルや歌詞にも、そういう良い距離を感じる言葉の組み合わせが沢山ある。いくつか思いつくものを挙げると。
世界クッキー:川上未映子
ハチミツ魔女湾:井上陽水
ブラインドタッチの織姫:キリンジ
風街ろまん:はっぴいえんど
サボテンレコード:フジファブリック
どれも言葉と言葉のあいだに絶妙な空間がある。(こういう言葉のメモ作ってみたいなあと思っている。)
最近聞いているLEO今井というアーティストのアルバムに「City folk」というタイトルが付いていて、すごく良い言葉だなと思った。意味を調べると「都会人」と出た。都会が故郷という意味。
CityとFolk、都会と田舎は真逆の単語だから普段は別々に使うことが多い。だから最初この言葉をみたときには少し違和感を覚えたけれど、あたりまえだが都会生まれて育った人もいる。多くの人が憧れの街として上京してくる東京の、あの街並みがFolkなんだと思うと、途端に情緒や哀愁、懐かしさが生まれた。
こういう作品に触れたり、自分で作ってみたりするのはとっても楽しいので、年末年始の休み、暖かいお酒でも飲みながら静かに遊んでみようと思う。
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それではまた次週。
イラストレーターの高松でした。