当番ノート 第20期
文芸書の編集者だった頃は、書棚に並ぶ紙の書籍のほとんどが現代作家の小説だった時期もある。しかし、かさばるコミックを手始めに少しずつ電子版で買い直し、著名な人気作家の傑作ベストセラーも順番にKindle端末へ吸い込まれていくと、ラインナップがずいぶん様変わりした。今、紙で残った蔵書には「作家でない人」が書いた少部数の本の占める割合がかなり高い。 それで気づいたのだが、私は写真家の書いた文章が好き…
当番ノート 第20期
さて、スウェーデンの夏至祭から10日が過ぎ そろそろ移動かな、と思っていたところに チェコの友達からメッセージが。 元気?もうすぐ日本に帰るの?ぼくも今、旅行中。プラハの神学校に来てるんだ、会えたらいいね、と。 行くと決めたらすぐに航空券を予約して、滞在先からバスでストックホルム中央駅へ行き、アーランダエクスプレスに乗り換えて飛行場へ。 プラハ郊外の空港までAlešが迎えに来てくれて、約1年ぶりに…
当番ノート 第20期
6-1 鉄板に、油を流す。全体に行き渡って少し余るくらいの量が望ましい。でもホットプレートだと、どうかな。フライパンとは勝手が違う。羽付きに、出来るかどうか。 油が熱くなるのを待って餃子を並べる。このじゅわあという音が佐竹は好きだ。触れた点からちゅっと焼け、面が油に浸される。ちゅっじゅわあ。ちゅっじゅわあ。の心地よい連続。この「ちゅっ」もいい。出来るだけ隙間なく、最短時間で並べたい。初…
当番ノート 第20期
冬は寒ぶり、春は鰯、夏は本マグロ、秋はカマス。。。 水揚げ魚種をあげたらキリがない。 で、ときどき鯨もあがっちゃう氷見ですが。。。 そんな、魚処・氷見ではそんなブランド魚っぽいものだけじゃなく、もちろん雑魚も山盛りてんこ盛り。 そんな雑魚でも美味しくありがたく食べる知恵が氷見の中に色々あります。 1つは、カブス汁。(カブス、っていうのは、捕ったばかりの魚の中から、網元さんが漁師さんに対して、漁師さ…
当番ノート 第20期
栗の木のはなし 私は栗の木でした。 私の目の前には広い平地があってその眺めは抜群です。 首を通る清らかな水と顔にあたる柔らかい風はそのおかげです。 私の左右には、花が咲く名の知らない木、その香りで花歌が止まりませんでした。 私は動く事ができませんが、毎朝私をくすぐる小鳥がやってきます。 小鳥は歌い、私は踊り、毎日のそれが日課です。 私の葉を食べる虫たちは、食欲旺盛でまるで大地の母のような気分を味わ…
当番ノート 第20期
* 絵を見るとき何かを読み取っているという風に前回書いたのですが、 作品と人との間にはコミュニケーションが生まれています。 その伝達事項の中の一つが既視感です。 物心つく前の子どもが描いたように見える。 ロンドンの壁に描かれたストリートアートに見える。 80年代のヘタウマな日本のイラストレーションに見える。 図鑑の中の精密な図解のように見える。 〜のように見えるという風に、見る側の持っているいずれ…
当番ノート 第20期
学生からの依頼に応えて、インタビューなどを受ける機会がある。彼らは決まって「お金がないので、ギャラは払えない」と言う。そのくせ、実際には待ち合わせた喫茶店の代金をもとうとしたり、菓子折りを持参してきたりする。だから私は、いつもその場で彼らを怒る羽目になる。 タダ働きをさせることについて申し訳ない気持ちが少しでもあるのなら、本来あるまじきことだと思っているのなら、私にギャラを払ってほしい。こう言…
当番ノート 第20期
日本から遠く離れた北欧の国スウェーデン。 首都ストックホルムには、父方の親戚が暮らしています。 * むかし長崎の商社で働いていた私の祖父ゆずるが、長崎港に寄港したスウェーデンの海兵グスタフと出会い、 YMCAで英語を学んでいた妹の真理子に英会話の練習をと紹介したのがきっかけで ふたりは日本とスウェーデンで文通をつづけ、翌年またグスタフが長崎を訪れて祖父の家に滞在し、帰国前に真理子にプロポーズ・・・…
当番ノート 第20期
5-1 間奏。 井尾がいる。それとは別の場所に大熊がいる。そしてまた別の場所に佐竹がいる。今回三人は関係がない。出会っていない。そういうこともある。 佐竹は走っている。ランナーのように淡々と、一定のペースで走っている。 大熊はラジオ体操をしている。しかしその動きは、音楽と合っていない。拍だけはかろうじて合っているものの、まるでデタラメな振りでいい加減に体を動かしている。 井尾は誰かを…
当番ノート 第20期
みなさま、こんばんはー。 って、すかっとさわやかな青空画像で、こんばんは~ってのもなんですが、今日は、この「テント船」のお話。 この船は、2015年3月に新造船したばかりのピッカピカのnewフェィスですが、昭和40年代までは氷見浜にいっぱいありました(今は現役で漁にでている木造和船はありません)。 海の風、潮の流れはその土地ならではのもの。かつては、その土地、というより、ひとつひとつ…
当番ノート 第20期
ドイツでは白アスパラが旬の季節になりました。街中に白アスパラが登場し始めると今年も春が来たなぁ〜と感じます。春だけの楽しみ。 ある季節にだけ手に入ったり、その場所でしか手に入らなかったりというのは、いつも便利に存在してくれる事よりも、時として贅沢に感じたりします。 さてさて、今回は我家の仲間たちについてお話しようと思います。 食事をして、ものづくりをして、会話をして、寝る。 朝起きてから寝るまで、…