当番ノート 第15期
新米に、触れる。 毎年、ドキドキします。 今年のお米はどうかな? 草みたいな味になってないかな? 水分量はたっぷりあるかな? 米粒が、大きいかな? 小さいかな? 新米を、食す。 これもまた、ドキドキします。 風味はいいかな? 弾力はあるかな? 割れ米はないかな? 毎年、最初の一口を食べる瞬間は、緊張します。 それが、これまでの田んぼ仕事の成果、すべてだから。 このお米を売りながら、一年間、家族が生…
当番ノート 第15期
ぼく達の住んでいた家の一階には一人の女性が住んでいた。 引っ越して来て始めの数ヶ月は挨拶を交わす程度で距離を置いた付き合いだった。彼女の部屋の前を通るといつも開け放した窓からEva Cassidy やSting のFeilds of Gold の曲がそよ風がレースのカーテンを揺らしながら流れ出る様に聞こえて来た。クチナシとイチジクのキャンドルを燃やす香りがいつもそこはかとなく漂っていて、何かスピリ…
当番ノート 第15期
先日、フラフープ仲間が「The Hooping Life」というドキュメンタリーフィルムの上映会を催してくれました。撮影されたのはもう5、6年前で、登場するのはフープダンス黎明期の立役者たち。現在もなお第一線で活躍するフーパーもいれば、すでに一線を退いて違うビジネスに乗り出している方も登場していました。 連載初回にも少し触れましたが、わたしが生涯の友と決めているフープダンスは、実は大変歴史の浅いも…
当番ノート 第15期
ジリジリと照らす、強烈な陽射しの八月。 暑さとともに、お米のうまみも増してきます。 日ごと、稲穂の色も変わってゆく。 暑さに耐えながら、草とりの日々。 台風におののき、強風やゲリラ豪雨にあわてふためき、害虫発生時は困り果て。 気温が上がらぬ冷夏や、日照不足の時は、田んぼの神様にお願いするばかり。 風にそよぎ、黄金色に実った 稲穂たちが波打つ。 ちゃんと実ってくれたこと、今年も収穫できること。 ひた…
当番ノート 第15期
Fair weather friends 〜直訳通りのお天気の良い時だけ都合良く遊びにくる友人家族がシドニーにカナダから遊びに来ていた。本当の友人はお天気の良い時も人生の嵐の最中、曇った日が続いてにっちもさっちも行かなくなった様な時も変わらずに側にいてくれるものだけれども、どの人がFair weather friendかと言う事 は自分を取り巻く環境が嵐に巻き込まれてみないとなかなか判別できない。…
当番ノート 第15期
その日は新宿御苑の事務所にこもっていたところ、野暮用でついと外に出て、また事務所に戻る途中、花園小学校の脇で地震に遭遇しました。 横を走っていた車がぐにゃりとハンドルを切って停車し、おやと思った瞬間に電信柱が風になびくススキのように揺れ、往来を歩いていた人びとが一斉に目の前の花園小学校の校庭になだれ込んでいきました。校庭から見ず知らずの人々と肩を寄せ合いながら眺めていた、コンニャクのごとく揺れるビ…
当番ノート 第15期
青々とした稲粒。 花を咲かせたあと、稲穂はどんどん栄養をたくわえて、実入りします。 八月初旬、田んぼは、一瞬、ぐっと静かになります。不思議なほど、しんとする。 しっかり実をつけるための時間。 農家は、淡々と、草をとって、水をみて、田んぼの世話をする。 写真をみると、波打つ緑は、とても涼やかなのですが、 実際、この時期の田んぼは、かなりハード。 ジリジリと照りつける陽射しと、脳が溶けるような暑さに、…
当番ノート 第15期
パンパンに張った二個のスーツケースを引きずりたどり着いたシドニー。まるでそこはテーマパークに迷い込んでしまった様な感じがする不思議異空間だった。圧倒的な白人文化が街中に溢れかえっていたものの、そこはアメリカとも違う、イギリスでもない、カナダとも何かが違った。ハワイに似ているのだけど、何故かぼくは空気の中にそこはかとなく乾いた鉄の赤さびが朽ちてゆく気配をいつも感じた。そんな中で唯一の救いはオーストラ…
当番ノート 第15期
覚えているのは14の夏、昼寝から目覚めた瞬間のこと。いまここで命を絶って、彼岸に渡らねばならない。衝動というよりも確信に満ちた思いで縊死の準備をしている最中に母が帰ってきて、その試みは頓挫しました。 以来つかずはなれず寄り添う希死念慮と共に生きてきました。 4年前を境にたもとを分かち、もうまみえることはないだろうと思っていたそれが、この春ふたたびわたしの元に帰ってきました。 今、それはだいぶ小さく…
当番ノート 第15期
苗が、分けつを繰り返しながら育ち、稲葉になる。 そのなかに、葉っぱのような、茎のような部分ができます。 それが、葉鞘。 「はざや」の中に、ぎっしり詰まって、眠る稲粒たち。 7月の終わり~8月のはじめ頃になると、 稲は葉を増やすのをやめ、茎のなかで穂をつくりはじめ、 お米の入れ物である籾殻(もみがら)を形成します。 やがて穂は、葉鞘から生まれでるように、外へ出て行きます。 それが、出穂。 「しゅっ…
当番ノート 第15期
それから一週間ほどの間、ぼくは彼と連絡を取ることを一切止めた。不機嫌な奥さんへの恐怖に翻弄される彼の姿を目の当たりにした後、”徹底的な習慣化してしまった奥さんの支配から解放されるために立ち向かうだけの肝っ玉、ガッツを彼は持ってるだろうか?”と何度も自問した。自分の真っ赤に煮えたぎった頭を冷やすためにも、彼から完全に離れた時間と空間がぼくには必要だった。その間にも彼からは一日に何通ものメールや留守番…
当番ノート 第15期
2ヶ月の入居期間のうち半分が過ぎ、さて折り返し地点、最終地に向けて舵取らねばと思っている矢先に、ぎっくり腰にやられました。 フラフープ教室の先生でもあるのに。 しかも先週半ばにほぼ裸でのショウがあったためか風邪も引きまして。そして迎えた週末の現場は仙人が住んでいそうな山奥のキャンプ場で、この時期ですから雨降ったりやんだりで、間断無いくしゃみに激震の走る腰。 そんなこんなで東京帰ってきまして、先週の…