当番ノート 第13期
雨が降るといつだって、単純なわたしは洗い流してもらったと思う。 アスファルトに成された水の道とたまり場が、こんな凹凸があったのよと両手を広げるよう。 でも今日はその声に応えることもなく、のろのろと歩みをすすめた。 目の前の信号が赤。 横断歩道を前にどこを見ても灰色のビル街の隙間立ち止まる、濡れ鼠。 ぼんやりしていると、たん、と、 透明ビニールの傘越しに女性がわたしを追い越していくのを見る。 わたし…
当番ノート 第13期
アップルパイの魔女なんて題名を付けたのは、母親が長く栄養士をしていて、お菓子作りも得意だったからです。ジャムやホットケーキの類のおやつ作りから始まって、まだ物珍しいガスオーブンが、わが家へ来た日のことを覚えています。母の顔も、飛びきり輝いていました。 どんなにそのオーブンの活躍したことでしょう。アイシング・クッキーにキャロットケーキ、マドレーヌ、アップルパイ。それから、どっしりとしたフルー…
当番ノート 第13期
これから先、「私」と「今まで撮ってきた写真」にできることがあるとしたら、 2つ、挙げることができるだろう。 今日はそのうちの1つを。 ◯ 「良いことも、悪いことも忘れちゃうからなあ。」 一緒に行ったところ、話したこと、思い出を、すぐ忘れる。 だから、いつだって写真だけが頼りなのだと 忘れっぽいあのこが言っていた。 思い返せば、私が写すとりとめもない景色に、 価値のようなものを与えてくれた人がいると…
当番ノート 第13期
今週はずっと大きな紙に描いていた。 何度も重ねて描くため、結局ぐちゃぐちゃな色になり 形も定まらない。 行き着く先はダメだこりゃ、失敗だ。 なので次に移るかと思えばそうではなく 一日置いてまた同じものを続けていくのである。 行き着く先はぐちゃぐちゃなままであり ダメだこりゃ、なのであるが時間は常に優しく 作品を整えていっとくれると、盲目的に信じているわけである。 子どものディスクール
当番ノート 第13期
鼻が嗅ぐ香りになるかのように、 耳が聴くメロディーになるかのように、 ほっぺたが優しくくすぐる風になるかのように、 舌が味わう甘さになるかのように、 若き少女が惚れた少年の中に溶け込むかのように、 金が美のためジュエリーになるかのように、 絵具が風景になるかのように、 目線が鏡に写る目線とあうかのように、 心が何を感じていも心は心のままであるでしょう。
当番ノート 第13期
* * * * * いつのまにか扉が丁重にたたかれている。 これっぽちもまとまらない考え事を書いて捨て描いて捨てして、一週間たちました。 洗い立ての犬みたいに身震いを。 春がくる。 __________ ご案内をひとつ。 3月の18から30東京町田で、4月の2から7名古屋栄で、 旅に出た少年の絵を展示します。 18と29、30は町田に、6と7は名古屋に、それぞれ在廊しています。 ここでおみせしたも…
当番ノート 第13期
妄想ラッパ ひとりぼっちの原っぱで吹く きょうも 妄想ラッパ ぽっかりと 空いた 胸の中心には ドウドウどうと 涼やかな 風が滑り込んでくる ひとりぼっちの原っぱは うまれて初めて 鼻から水を吸った日のように ざわざわと ぐちゃぐちゃと 心もとない足下に立たんとして ブワブワぶわと 妄想ラッパを 響かせる ひとりぼっちの原っぱに吹く あし…
当番ノート 第13期
母の財布には、祖母の証明写真が入っている。 なんてことのない、4cm✕3cmの緊張気味な祖母の写真。 「なんでその写真なの?」 なんて声をかけたこともあったけれど、 それは野暮な言葉だったかもなあ、と今は思う。 ◯ 去年の秋、久々に母の故郷に足を運んだ。 そこは日本から8時間ほど飛行機に乗ったところにある。 年中真夏の熱い国。 祖母が亡くなるまでは毎年、夏は祖母の家が私の家で 日本で働く父に代わり…
当番ノート 第13期
日常の些細な事に目を向けて日々色々と書いていこうと思ったのだが、些細な事に特に目を向けていない事に気づく。 それでは日々何を見て過ごしているのか? 何も見ていないのである。 意識して外を見ない限り、些細な出来事どころか重大な出来事にも気づかず、日々が流れて行ってしまう。 意識をせずに生きて行くなんて不可能だと思っていたが、気づけば習慣と言う動力のみにたより生きている。 習慣とは恐ろしいものである。…
当番ノート 第13期
今週も引き続きノダフルタへのインタビューをお届けする。 前回の「音楽で伝えたいことは?」という質問を受け… ノダ:まあなんつーか、僕が今まで影響を受けてきたアーティスト達。それはジョンレノンであったり、 甲本ヒロトだったり、糸井重里だったり、麻美ゆまだったり… それぞれに共通している事でもあるんですが、 とにかく税金をしっかり払って、よく食べよく笑い(歯も磨き!…
当番ノート 第13期
プライドが大きくなる時は、このベッドを思い出す。 インドへ行くとき、良く泊まる部屋のベッドです。発達しているインドでは素晴らしいホテルいっぱい出来ていますが、 僕は今でもインド行く度に一人のおばあちゃんが経営してる古いホテルで泊まってます。 とにかく、このベッドは最高です。 一日目は寝れないんです。固いし、動くと音するし、掛け布団もないし、 朝に起きると「あ〜ぁ、やっぱちゃんとしたホテルで泊まろう…
当番ノート 第13期
形から入る。を、 長いこと馬鹿にしていたような気がする。 そのくせ実際は、道具や服装からはいる。 雰囲気が大事だと言って買った靴で足を痛める。 絵を描くとき必ずつけるエプロンを、いつのまにかつけていないと落ち着かない。 ひとの話なら、正直どんな入り方をしていようがなんでもいいのだけど。 どんな格好でドアを開けたかを説明されてもなあと、思ったり。 入り口で引き返したことなんて山ほど、ノックしてみたい…