当番ノート 第6期
「なんも聞こえないよー」 そこに立って何か聞こえるみたいにしてみて、とわたしはカメラを構える。 12月の最初の土曜日、とても風のつよい日だった。 3時過ぎ、片瀬江ノ島駅のホーム。日はもう傾き始めている。 そう、なにも聞こえるわけがない。 たとえば きこえないものがきこえるかもと思ったら 小さな耳はたちまちうさぎの耳になる。 たとえば みえないものがみえたような気がしたら キセキでも、こわくても、不…
当番ノート 第6期
Henning Schmiedt が好きだ。 初めて聞いたのは、今年の初め。2月の11日のことだ。 東京池袋の自由学園明日館講堂で行われたJapanツアー2012のライブに行った。 東日本大震災から、丁度11ヶ月の日である。 震災から一年が経ったその日は(今でもそうだが)消えない不安感というか、 緊張感というか、震災前の自分を忘れてしまったかのような落ち着かない気持ちでいた。 Henning さん…
当番ノート 第6期
アルモドバルの”神経衰弱ぎりぎりの女”を渋谷シネマライズで観たのは今から20数年も前のこと。 この映画に関しては絶叫も嘔吐も感涙もしなかったが大好きな1本だった。 それからは多分恐らく、アルモドバルの映画は全部みている。 特にフェイバリットなのは”ライブ・フレッシュ” “バッド・エデュケーション” “ボルベール…
当番ノート 第6期
私が住むマンションには、ゲイのカップルが住んでいる。 私は2人が好きだ。 名字が違う、でも少し似た雰囲気を持つ二人はいつも控えめに過ごしているように見える。 フレンチブルドッグを一匹飼っていて、夕方もしくはたまに朝に2人でその一匹と散歩に出る。 私もライカという名前のダックスフンドと散歩に出ると時々2人と会って、少したわいもない立ち話をする。 穏やかな話し方をする2人は、程好い距離を持ってこのマン…
当番ノート 第6期
マルセイユ市内バス車内ポスター これは真冬のマルセイユのバス車内に下がっている啓蒙ポスターです。 「ビーチでは水着を、バスではT-シャツを!」 マルセイユを知らない人には一瞬意味がわからないかもしれません。 マルセイユでは道行く人は老若男女ハダカです。このことは常に私はインターネットを通し世界に訴え続けているのですが、なかなかみなさん信じてくれず、誰も助けにも来てくれません。そこで今回このような証…
当番ノート 第6期
この赤ちゃん猫の名前はピー助。通称ピーちゃんです。 ピーちゃんの写真は私のiPhoneに入っている数枚しかありません。 死んでしまうなんて夢にも思っていなかったからです。 出だしから暗くって申し訳ないのですが、今回はこのピーちゃんの話をさせて下さい。 妹が帰り道でピーちゃんを拾って来たのが、今から3ヶ月程前の9月20日。 帰宅途中に子猫の鳴き声に気づいて、よく見てみるとそこには目も開いていないへそ…
当番ノート 第6期
こんにちは!中村むつおです! 今回はすごくくだらないです。でもそこがかなり気に入っています。特に、ラストのブレイクビーツからの黒人のアップになるところが気に入っています。 この一コマの間にかなりの時間が経過しているということを、驚きと説明を交えて表現できたと思います。 ちなみにこの黒人の方は、インターネットで「黒人 ラッパー」で検索したところ、NASという人がヒットしたので、適当にトレースして描き…
当番ノート 第6期
にげられないきせつがくる きせつはずれの台風のまんなか たんたんと過ぎ去ってくことから 投げかけられるわたしの視線から きみはきっとのがれられない だるくなった脳みそ ゾウの目のおくに わたしの知らぬふかい海 きみのあやつる まあたらしい呪術的なことば そのことばはせかいじゅうの どんなことばよりもたのもしい きみのからだ 1000年前から続く、意味ある光を溜め込んだ大木。 わたしのからだ 気…
当番ノート 第6期
学生時代、バンドを組んでいた。大学3年の頭から大学4年の秋までの間、活動していた。 名前は「MONTRA」という。 僕は美術大学に通っていたのだが、メンバーは同級生の8人。 皆それぞれに普段から表現したり作ったりしていた。 僕 たちは『blue』という決まった一曲しか演奏しないバンドだった。決まったフレーズを皆で共有し、抑揚をつけて毎回曲を作っていくのだけれど、毎回の国…
当番ノート 第6期
突然クスクスが食べたくなったこと。 そして意識は頭上5センチあたりを彷徨う。 クスクスに想いを馳せて頭上5センチあたりに手のひらを翳してみたが、想い虚しくそこにクスクスはなかった。 やっぱりクスクスはあんなに粒々なくせしてちゃんとした実体なんだな、と自分の想いの足らなさを宥めた。 というのも抽象こそがリアルで、世界のあらゆる物体は実は概念的な何かでしかないんじゃないか、 という無根拠な想定が近頃こ…
当番ノート 第6期
あの日もとても寒かった。春の欠片も見えず。 3月で卒業する生徒さんはもう課題に入っていて。 私はその時間がとても好きだった。教えたことをそれぞれが消化して形にしていく時間。 Webデザインを教えているその教室はパソコンと人がぎゅぅと詰め込まれていて。 排気熱と体温で本当はそんなに寒くないはずだった。 なのにあの日は足先が凍りそうなくらい寒かった。 考えてみるとあの日のことを誰にも話したことが無い。…
当番ノート 第6期
前回、文章を締めるために何か書かなくてはという義務感に駆られてうっかり「マルセイユはいいところです」とくくってしまったのですが、それはあくまでもゴミを捨てる側の観点のみから語った場合であってやっぱり全然いいところではありません。 とりわけ治安の悪さにおいては北アフリカで右に並ぶ地区はなく、治安取り組み優先地区にも指定されています。警察などあってなきがごとし。麻薬マフィアのほうが武装資金も上でどうみ…