当番ノート 第2期
3年前にやめた煙草を、3ヶ月前からまた吸いはじめた。 煙草を吸うことは好きだ。 煙草を吸うあいだ、僕は他のことをしない。 仕事をしながら吸ったりしない。 携帯を見ながら吸ったりしない。 ただ吸う。 できれば外で吸う。 たとえば家のベランダで吸う。 目のまえの風景をぼーっと眺める。 青空駐車場にならんだ車のフレームが光っている。 木々が枝を触れあわせてさらさらと揺れる。 風が…
当番ノート 第2期
4月だというのに台風のような雨と風。 今日の天気のように出会いやキッカケ、変化なんてモノはいつも突然にやってくる。 アパートの厨房と用務員室担当のりょうたクンから突然のコラムの執筆依頼。 面識もやり取りも少ない僕にりょうたクンが放った「勘。」というメッセージ。 参った。勘かぁ。大雑把で良い口説き文句じゃないか。 こんな風に言われれば断ることはできない。個人的に、は。 お願いされる事は嫌いではない性…
当番ノート 第1期
今日は暖かかった。 久しぶりに鴨川にいってたっぷり陽にあたってきた。 辺りいっぱいにサンバが鳴り響いている。いつも数人の若者たちが太鼓やら鈴やらを持ち寄ってはこうやって鴨川で打ち鳴らしているのだ。 春の鴨川に地球の裏側の音が鳴っている。 鴨川は鴨川と言うだけあって、本当に鳥が多い。 シラサギ、アオサギ、トンビ、ハト、オシドリ、スズメ、ホオジロ、カラス……数えだすとキリがないが、とにかく始終そこらを…
当番ノート 第1期
未だに別れというものにはまったく慣れない。 それがどんな環境であれ、どんな一年であれ、別れというものが年に二、三回はあるもので、いい加減に別れに対する所作をスマートにこなせる大人になりものだが、こんな時いつも僕はまったくもって頭も感情が追い付かないのだ。 だから結局今も何を書いていいものか考えあぐねているのが現状だ。 ここでコラムを書かせていただいたこの二か月間、回を重ねてコラムを書いていくほどに…
当番ノート 第1期
あの夏がなかったら、僕はダメなオトナになっていた。 あの「熱い」夏休みが、もし、なかったら。 人生の中での分岐点っていうのがあって、きっと誰にでもあって、 そう、ターニングポイントっていうやつ。 僕の場合、そのターニングポイントの最初で最大のものは小学校4年生の時に訪れた。 のび太みたいな子供だった。成績は中の下、リコーダーもドッヂボールもダメ。図工だってへたくそだった。 1年生からずーっとダメな…
当番ノート 第1期
夕方、ふと仕事をする手を止めて窓に目をやると、 鮮やかに燃える夕日と、赤く染まった雲が向かいのビルのガラスの壁に映し出されていた。 それに気がついたボクは、席を立ち自動販売機の休憩スペースから眼下に広がる新宿の街を見下ろした。 街は夕日の赤と陰のグレーの二色に染まっている。美しくてどこか物悲しい。 その赤い風景を見ながら、実は自分が今見ている向かいのビルの後ろでは 世界が地面から崩れ落ちている、そ…
当番ノート 第1期
素直に、さみしい。 こちらに入居させていただき二ヶ月、早いものですね。 週の当番ノートを書き続けられるのか、綴れるかどうか、不安だったのだけれど(笑) 漠然と、表現力を身につけたいと感じた三十代。 巧く話すと云うよりも、あたまの中に在ることを的確に伝えたいという欲求が突如として現れる。 脳みそがイメージすることを、そのまま現せる人を天才と呼ぶのだそうだ。 邪な思いではなく、格好よくでなくて、話すこ…
当番ノート 第1期
音のない環境が欲しい。最近ふとそんな事を思った。 話し声から環境音にいたるまで一切を遮断した完全なる無音空間。 考えてみれば生きていくうえで人はとても多くの音に囲まれている。 一番無音に近い自分の部屋の中でさえ、換気扇、冷蔵庫、かすかに聞こえる車の音など少し耳を傾けてみるだけで様々な音がしているのが解る。 もしたとえ両手で耳を塞いだとしても、その手の中では己の体の活動する音が地鳴りのように響いてい…
当番ノート 第1期
1+1=2 自分は1978年9月10日に生まれた。 ライオンはネコ科の動物である。 3月の次は4月である。 オリンピックは4年に1回やってくる。 これは「知っていること」。 木から落ちたら痛かった。 恋をするとウキウキする。 去年の9月にもらった梨はおいしかった。 手にすくった雪の嗅いだら夕立の雨の匂いがした。 部屋は多少散らかっていたほうが居心地がいい。 これは「本当に知っていること」。 先日、…
当番ノート 第1期
いつもよりちょっとだけ早起きをして アラジンの石油ストーブに火をつける。 バリエッティでコポコポ淹れたエスプレッソをたっぷりの牛乳に注いでから テーブルの上の朝刊を広げる。 端から順に目を通している間に息子がもしゃもしゃの頭で起きてくる。 「おはよう」「ん、あ、おはよう」 しばらくすると娘がまだ幼い時の面影を残したような顔でリビングでくつろぐ犬に寄り添う。 「おはよう」「おはよぅー」 「パン、焼こ…
当番ノート 第1期
高円寺に越してきて早いものでもう1ヶ月。 この街に来てからというもの、ボクは他の街で服を買っていない。 社会人になって東京に来て間もない頃はよく古着を買っていたのだけど、 古着好きは今も変わっていないみたいだ。 今日も古着のカーディガンを買ってきた。 紺地にボタン部分が黄色の、合わせが逆のカーディガン。 レディースなのだろうかと店員に聞いてみると、 80年代のものだとメンズでも個性を出すために合わ…
当番ノート 第1期
大気の匂いが変わってきた。 まだ寒い日もあるけれど、からだで感じる春のおとずれ。 お隣の杉山さんが云う通り、春は気持ちが不安定。 山の木々たちの緑が淡い色になりわくわくドキドキだったり、いたずらに雪が積もってみたり吹き飛ばされそうなほどの風が吹いたり。 からだはこころ次第だと考えているのだけど、この季節はときに逆転してしまう。こころがからだに転がされている。 そうそう、鼻のはなし。 ニオイフェチ。…