当番ノート 第47期
アパートメントに入居してからもう少しで1か月、 今週は、アパートメントの管理人さんや親友と相談して、 振り返るのを少し休憩することに。 うちのシェアハウスでは、たった今まさに、 nちゃんがこたつコードを押し入れの隅から掘り当てて、 こたつをONしたのでぽかぽかしています。 昨日は糺の森でマーケットがあって、 ミトン型のほかほかの手編みの手袋に出会えて、うれしかった。 もう冬支度。 冬支度、と聞くと…
当番ノート 第47期
駅前のファーストフード店には、喫煙席がまだ残っていた。「ランチタイムは禁煙」という扱いにはなっていたものの、ガラス戸で仕切られたそのエリアには常に見えない煙が充満しているからか、お昼時は滅多に客の入らないスペースになっていた。あの日はそこに珍しく、一人の母親と一人の娘が座っていた。 母親は一番奥の窓側のソファ席に腰かけ、手鏡代わりのスマホを覗き込みながら、入念に眉を整えている。その向かい側の大…
当番ノート 第47期
人で賑わう東京のハロウィン。 今年は10月31日が平日だから、一番近い土日のタイミングでハロウィンを楽しむ人が多かったらしい。 なんだそれ、という感じもする。だってハロウィンはハロウィンの日にやるからハロウィンなのであって、云々。 けれど、人間という生き物は思った以上に適当で、勘違いや思い込みも多い生き物だ。 どんなに真剣に取り組んだところで、たとえばハロウィンというものについて及ぶ理解だって、本…
当番ノート 第47期
死にたい気持ちを抱え続けることほど、しんどいものはない。 「こんなにも幸せなのに、まだ死にたいと思うんですか?」 あぁ、そうだよ。 何でだろうな、幸せって誰が決めてくれるんだっけ。 質問の意図もわからないまま、僕はぼんやりと答えている。 「だって、いつも薄っすら自殺志願者ですから」 自殺を考えるのは、明確な理由がある人だけじゃないと思う。 僕のように、無性に死にたくなるような人だっている。 何故か…
当番ノート 第47期
誠とのことについて思い出そうとすると、呆然となる自分がいる。 もの凄いたくさんのことがあるのに、頭の中にロールスクリーンがたくさん張られているようで、もどかしくて辿りづらい。 けれど、苦労しても思い出すことが出来ないのに、音楽を聴いていると唐突に感情、光景、香りまで脳内に蘇ってくることがある。時々、思い出したくないことまで思い出されてしまって、慌ててて曲をスキップさせる。 音楽だけではない。香りや…
当番ノート 第47期
ついたちは 月に一度のおたのしみ 6時主婦 掃除洗濯御飯の支度 7時家内 愛し夫を起こして給餌 8時愛妻 モナリザの笑みで御見送り すまない、今日も残業で遅くなるよ わかりました、いってらっしゃい 鏡よ鏡 私は鑑 あと14610日間 続き続けるルーティーン 9時外出 財布とエコバッグとハンカチを持って 平日午前中の映画館はガラガラ …
当番ノート 第47期
「恋」や「愛」というものは、きっと人の数だけ存在している。 「交際」や「結婚」の形も、きっと一枚面(おもて)を剥がせば多様なはずだ。 ここ数年、「好き」とか「付き合いたい」とかの意味がいまいちしっくりこない期間が続いていた。 別に仲良くするには友達でも成り立つし、セックスがしたいならそれだけの関係でも成り立つ。「結局は独占欲みたいな話なの?」という論にはすぐにたどり着くけれど、それでもいまいちしっ…
当番ノート 第47期
生きづらさは、時に自分から、他人から、与えられるものだったりする。 人はいつだって、何かしらでマイノリティを抱えている。 多数派が正しいと見える世界で、同調圧力ほど少数派を苦しめるものはないだろう。 絶対的な正解も、絶対的な常識も、そんなものはどこにもないのに、どうして人は、白黒はっきりとしたがるんだろう。 多数派が選ぶものは、少数派にとっては理解し難いものなのかもしれない。 少数派が選ぶものは、…
当番ノート 第47期
先週、白川通のちょっと裏にある雑貨屋さんに立ち寄ってみた。明るい座敷に仔猫がいて、猫好きな私は思わずお店の方に声をかけた。 ケージから出たそうにしてニャーニャー鳴いている。 何か月ですか、と聞いてみたら、「生後4か月で、引き取って来て3週間なんです」と教えてくれた。 そしたら急に涙が溢れてきてしまった。自分で驚いて、とっさに息を詰めて涙を堪えた。 すごい元気そうな仔猫だし、とても大切にされているこ…
当番ノート 第47期
月末の金曜日なんて、いつもなら月次決算に向けたデータの整理やらで残業待ったナシなのに、あの日は経理部全員が16時に退社させられた。プレミアムフライデーというやつが初めて実施された日だった。課長は終日「後でしわ寄せくるだけなんだけどなあ」とぼやいていた。 大手町から丸の内線に乗り込み、20分ほど揺られ、地上に出た。まだ薄っすらと明るい夕方の新宿は、浮足立った会社員たちで賑わっていた。居酒屋やバル…
当番ノート 第47期
以前から、わたしは「モールス信号」というものが気になっていた。 元来は可変長符号化された文字コード。単音だけ、あるいは光の明滅のみで言葉を伝える手段。SOSを伝えるために使われたりもするという、言葉の形を持たない言葉。 日本の平成の時代に生まれたわたしには、これまで一度もモールス信号との接点はない。けれど、その普遍性のようなものにひどく心惹かれる自分がいた。 国を超えて、時を超えて、その単調な調で…
当番ノート 第47期
外は、大雨だ。おまけに雷も鳴っている。 大きく息を吸い込むとき、気管支が詰まったように、ひゅー、という音が聞こえることがある。 ごくわずかに喘息を持っているのだけど、それとは別に、息苦しさを感じるときがある。 何年も前のこと、僕はこの世界が灰色に見えていた。 ようやく色が着き始めて、彩色が薄ぼんやりと見えるようになってきた。 息も出来ないほど苦しかった灰色の世界は、何回息を吸っても上手く酸素を取り…