当番ノート 第40期
滋賀県高島市の山深い土地に朽木古屋という集落があります。いまでこそ年間通してここに住まう世帯は片手で数えられるほどの過疎集落ですが、この古屋には800年以上にわたり継がれるとされる六斎念仏踊りという芸能が伝承されています。 六斎念仏といえば、この朽木古屋をふくむ、奈良/京都から若狭に掛けての鯖街道沿いをはじめとして、大阪、和歌山、遠くは高知、長崎にもその分布がみられ、その土地の生業や歴史からそれぞ…
当番ノート 第40期
東京国立博物館で「縄文ー1万年の美の鼓動」が始まっている。 ここで展示されている土偶のうち1体と再会できるということもあり、とっても楽しみにしている。 そいつを初めて観たときのことは、今でも印象に残っていて。 もう一度実物と向き合うにあたり、土偶を通じて思うところについて、自分なりに書き留めておきたい。 展示をすでにご覧になった人もそうでない人も、しばしおつきあいいただければ幸いです。 問いかけ続…
当番ノート 第40期
いろ【色】 ①視覚のうち、光波のスペクトル組成の差異によって区別される感覚。 ②華やかな様子・姿。 ③表にあらわれる様子・おもむき。 ④愛情・情事。 いろ・どり【色取り・彩り】 ①いろどること。彩色。着色。 ②色の配合。配色。 ③はなやかな変化。おもしろみ。 -『広辞苑 第七版』より抜粋 - この人たちの世界は何色をしているのだろう。 テレビやスクリーンの向こう側にいる 青色や緑色の瞳を持つ人たち…
当番ノート 第40期
20代後半…だからもう5年以上前になる。 30代を目前にして、結婚しはじめる友人たちを見ながら、わかりやすく焦っていた。 あれからもう5年以上経つのだなと思うと本当に早い。 振り返るときだけ時が過ぎる早さを感じるなんて、ずいぶん都合のいい話だけれど。 わたしは女性としての自信のなさに拍車がかかって「モテなければ」と思っていた。 そこであれこれ検索していると、どうやら「モテコスメ」というものが存在す…
当番ノート 第40期
歩いていると、こぽこぽと、頭に言葉がわいてくる。 歩きながら書くのは危ないし、かといって、それら全てを書き留めようと何度も立ち止まるのは途方も無い。なんとなく勿体無いな、という気持ちはあるのだけれど、目的地の方を優先させてしまって、言葉を後へ後へと流してしまう。 そうして、歩き終えたら、跡形もない。 どうなんだろう、この夏に。 いつも「わかりやすさ」とか「伝わるかどうか」とか、余白の中にそういうも…
当番ノート 第40期
日本各地で古くより継承されてきた民俗芸能は現代を生きるわたしたちにとって、もはや無用の長物なのでしょうか? 開国以降の西洋に習う国策、敗戦以後の民主主義化や高度経済成長などの社会構造の変化を起因として、多くの民俗芸能がいま断絶の危機にあります。…と聞くと「何百年前の開国に何年十年前の敗戦にと、そんな過去の出来事がなんで現在の民俗芸能の存続に関係するのか?」と疑問を抱かれるかもしれません…
当番ノート 第40期
「絵を描きたい気持ちがコロコロと丸まって、小さな犬コロみたいになって坐っている。」 これは日本の前衛美術家・赤瀬川原平によるあるエッセイ(※1)の書き出し。 いわく、この犬コロはふわふわして、トロンとして、とってもさわり心地がいいらしい。 同級生・荒川修作の大胆な絵の具の使い方の話から、光を獲得した印象派による喜びにあふれた筆触の話、デパートで催されていた展覧会での「タッチ不在」の絵について…… …
当番ノート 第40期
あそび【遊び】 ①遊ぶこと。遊戯。 ②猟や音楽のなぐさみ。 ③遊興。特に、酒色や賭博をいう。 ④あそびめ。うかれめ。遊女。 ⑤仕事や勉強の合い間。 ⑥(文学・芸術の理念として) 人生から遊離した美の世界を求めること。 ⑦気持のゆとり、余裕。 ⑧機械などの部材間・部品間に設ける隙間。 あそ・ぶ【遊ぶ】 日常的な生活から心身を解放し、 別天地に身をゆだねる意。 神事に端を発し、 それに伴う音楽・舞踊…
当番ノート 第40期
疲れと眠気でしょぼしょぼした目で家のポストをのぞくと、ジュエリーショップからカタログが届いていた。クリーム色の紙に、やわらかな写真が載った表紙。 そこは、確かにジュエリーショップではあるものの、あまりその言葉は似つかわしくないお店だと思う。 カフェのようなほっと呼吸のできる感覚も、旅をしながら何気ない草花を写真に収めたような雰囲気もある。 「ジュエリー」という言葉の持つギラギラした印象がない。 な…
当番ノート 第39期
こんにちは。 今年の夏は去年と比べ物にならないくらい暑いですね。この記事を書いているのは夜の22時なのですが、未だ気温は30度です。ノートパソコンのHDDが発する熱がいっそう手を汗ばませます。ここ数日は水道をひねっても冷たい水がいっこうに出てこなくて、お湯みたいな水で手を洗っています。まだまだ暑い日が続きそうですね。 今日でこの連載もおしまいです。2ヶ月というと長いようで、意外とあっという間でした…
当番ノート 第39期
久しぶり。 今はどこにいるのかな? こう聞くのもいつもどこか僕の知らない場所にいて、 一つにとどまることがないからね。 どこかで目を輝かせながら、 毎日過ごしているところを 想像しています。 僕はといえば、酷暑の東京にある自宅で、 フィッシュマンズを聴きながら、 この手紙を書いています。 東京の夏は過去に類を見ないほど毎日暑くて、 「命に関わるほどの暑さ」とも言われてるよ。 この間ソフトクリームを…
当番ノート 第39期
抱きしめられるのが、恐ろしく下手だった。 下手ぶりを説明しようにもサンプルが異様に少ない人生なわけだが、とりあえず初めての恋人から「第1回・抱擁」をしかけられたときも、私は非常に緊張していた。 どのくらい緊張していたかというと、向こうが私のあまりのガチゴチぶりに、腕を離して「ウーン、こんなに固くなってる人は初めて見た……」と唸っていたほどであった。 私の記憶では、交際から2、3ヶ月経っても…