当番ノート 第37期
私の名前は、睦海、という。 海の字がついているけれど、生まれは、那須連峰がきれいに見える、田んぼと果樹園の広がるところ。海には何の縁もなく、親近感も持たずに育った。自分の半分は海のはずなのに、私は海を全然知らない。海ってどんなものだろう。そんなことが、なんだか忍びないような気持ちがして、子どもの頃から、もやっと、引っかかっていた。 二十歳の時、きれいな海を見るために、旅をした。 きれいな海は南だろ…
当番ノート 第37期
2月12日(月) 朝起きて「お腹空いた」と呟くと、恋人さんが起き出してカルボナーラを作ってくれた。恋人さんはイタリアンレストランで少しだけバイトをしたことがあったことや、カルボナーラづくりにハマって、365日中347日くらいカルボナーラをつくった時期があったので、恋人さんがつくるカルボナーラは天才的においしい。昨日の夜から泊まっていたお母さんと一緒にカルボナーラをすする。瓶のケースの半分くらい使っ…
当番ノート 第37期
(お気に入りの画像です) 大学浪人生だったとき、私は小説を書き始めた。 完全なる自己満足だったけれど、書かずには居られなかった。 以来10年間、私は何かあるごとに文章を自分勝手に書いてる。 僭越ながら分類分けをするならば、エッセイであったり、ファンタジーであったり、私小説であったり。 特に、心が落ち着いていなかった時期は毎日のように書いていた。 現在のファイル数でいえば、ざっと数えて300ほど。 …
当番ノート 第37期
いま、ここで、どうなるのか。どうするのか。 毎日、そんなことを考えている。 6歳からクラシックバレエを習っていた。 初めて発表会で踊ったのは「おもちゃの兵隊さん」と「おもちゃのチャチャチャ」。 踊るのは好きだったけど、恥ずかしさと緊張で、いつも仏頂面で踊っていた。 小さい頃のひとり遊びはバレエの先生ごっこ。 母がピアノの先生だったこともあり、家には音楽CDがたくさんあった。 その中から好きな音楽や…
当番ノート 第37期
時計の秒針の音。 冷蔵庫のモーター音。 1人で眠る部屋は、いやに静かで、そんな音が、時折大きく聞こえる。 電気を点けたまま、目を閉じる。 いつの頃からか、1人の時には明かりを点けたまま眠るのが、当たり前になってしまった。 一生こうするとすると、電気代、どれだけかかるんだろう、か。いつかはこの癖、やめなければ。 寝る時には近くに誰かがいるといい、と思う。 思い返せば、子どもの頃から、1人で寝るのが苦…
当番ノート 第37期
2月5日(月) 朝10時から久しぶりのクライアントワークの取材で浜松町へ。そのクライアントさんとは何回かお仕事をさせてもらっていたのだけど、久しぶりにお目にかかるなぁと思って、考えてみたら1年ぶりだった。春みたいに温かい気候で薄着をしてきたのに、また数日後には大寒波が来るみたいですよと編集者さんが言う。この季節は本当に思わせぶりだ。 小さな店舗にお邪魔する取材だったのだけど、思ったよりもスペースが…
当番ノート 第37期
(家近くのにて。もうすぐ桜が一面に広がるのです。) 前回の続きとして、本稿では再会について書いていこうと思う。 再会を通して、私は出会いよりも多くのことを学んだ。 もちろん、意識して再会していることが大きな因果として存在しているはずだが、なんというか、 様々なことがよりリアリティを持って自分に届いている感覚だ。 それは年齢が関係しているのか、自分が変わったからなのか、それとも・・・ —…
当番ノート 第37期
「息を合わせる」という言葉がある。 例えば、誰かと踊る時に、お互いを意識し合いながら、タイミングを合わせたりずらしたりして踊るということ。 音楽を演奏したり、言葉を話す時、そして普段の生活の中にも通じている、からだと言葉。 同じ流れやリズムをからだの中に持つことで、同調させていく。 人だけでなく、音楽や空間そのものとも交わっていく。その逆も然り。 「息」に関する考察って、面白い。 + 先日の稽古で…
当番ノート 第37期
故郷のことを思い出すことが増えた。 とくにアパートメントで文章を書くことになってから、何を書こうか、と考えるとき、何度も故郷の風景が浮かぶ。 でも、故郷の、何が書きたいのだろう。 天井に貼られた星座表。自分を宇宙人だと語った父の小話。毎日犬と歩いた散歩道。何でもない朝ごはんの風景。はげしい兄弟喧嘩。夏休みのプールとキッズウォー。 とめどなく、色んな風景が浮かんでは消え、どれに、どんな言葉を添えたら…
当番ノート 第37期
1月29日(月) 昨日の夜は楽しくて、おまけに手酌でウイスキーを飲んでいたものだから、だいぶ酔っ払ってしまったみたいで、現実に戻るまで記憶の糸を辿ろうとするけれど、途中で糸がぜんぶ切れてしまっているようで、恋人さんを揺り起こして、わたし大丈夫かな、と聞いた。恋人さんは「えーっ、覚えてないの?」と笑っていたけれど、案外にたぶん、大丈夫だったらしい。 1人暮らしのときは飲みまくった次の日はだいたい記憶…
当番ノート 第37期
「大人」と聞くと、皆さまは何を思い浮かべるだろうか。 大学生のころの私は、自然と「大人の条件」や「大人とは」みたいなものを次々と連想してしまっていた。 仕事、自律、温厚、自由、制限、諦念、幸福・・・ 考えれば考えるほど混迷していく思考の繰り返しだから、逃げたい一心であったが、 そうは言っても迫りくる自分の大人世代に向けて時間は容赦なく進むわけで。 今振り返れば、私は「モデル」を持っていなかったのだ…
当番ノート 第37期
からだって、建物みたいだなあと思う。 骨組みとはよく言ったもので、例えば立ち上がった時、足の裏が一番底辺にあって、二本の足は股関節から骨盤を拠点に一本の背骨となり、そのてっぺんに頭が乗っかかる。 私の足の大きさは23.5センチ。 二つの足の裏で自重を支えてバランスをとっているんだから、こりゃすごい。 からだは私が知らないうちに、多くの仕事をしてくれている。 感覚と身体運動について考える。 数年前に…