当番ノート 第37期
久しぶりの東京の雪の日 その日は夕方から少し用事があって、夜家に帰ってくると、それから特にすることもなくて、だけれどなんだか気持ちが落ち着かなくって、眠れなかった。 そり滑りがしたいな、ちょうど良さそうな坂、近くにあるな、あーっ、この間段ボール捨てちゃったやー、と半分本気で後悔なんかしたりしていた。でも、ほんとはそり滑りする勇気、持っていなくて、それが悔しい。 でも、雪がある。早くしないと、雪が溶…
当番ノート 第37期
1月22日(月) 朝イチで猫の病院に行く。病院に向かう途中で、ペルシャ婦人とすれ違った。ペルシャ婦人も猫を連れていて、通院の帰りらしい。高めのか細い声で「何かあったら言うのよ」と言ってくれるペルシャ猫に似た品の良い夫人はジブリ感がある。 ペルシャ婦人が紹介してくれた病院で診察を待つ。クールな女医さんが出てきて、くしゃみちゃんを撫でると、くしゃみちゃんはゴロゴロ言い始めた。「あーっ、これ!このゴロゴ…
当番ノート 第37期
人との出会いには ‘色’ や ‘形’ がある、と思う。 その人がくれる色を、自分というキャンパスにどう落とすか。 または、もらった形をどう解釈するか、どう役立てるか。 それは、その人との関わり方や密度やインパクトによって変わってくるのだけれど。 本稿では、出会いが生んだ出会い、とも言うべきか、ある二人との出会いについて、書いていこうと思う。 R…
当番ノート 第37期
近くにあって遠い、仄かに気になる存在。 それが私にとっての「言葉」である。 大学生の頃から、ダンス作品をつくるようになった。 それは、まだ形になっていない、けむりのような思考や想像を言語・身体化し、ダンサー、舞台美術家、音楽家、舞台のスタッフなど、関わってくれる人に対して伝えるという作業だ。 具体的に動きを「こうやってください」と見せ模倣してもらったり、手や身体を用いて身体感覚を伝えたり、時には「…
当番ノート 第37期
ここで、文章を書くことになりました。 しかしながら、私、文章、苦手。 言葉にすることが、苦手。 もともと、私は話すこともとても苦手でした。幼稚園から中学校までは、同級生は40人くらい、ずっと同じメンバーで過ごしたためか、その子たちとは仲良くやっていたけれど、というかそっちではむしろおちゃらけキャラで通っていた気がするのだけれど、新しく人間関係を築く、ということが本当に不慣れで、内弁慶な、極度の人見…
当番ノート 第37期
1月15日(月) プライベートで2件の約束と会議があった。週のはじめのほうしか体力が持たないので、はりきって予定を詰め込んだ。プライベートの約束の1つめは憧れていた作家さんと、2つめは大学時代の同級生の子と。2人ともずっと気にはなっていたけれど話す機会が持てなかった女性”で、何だかおさななじみと話しているような気持ちになった。また定期的に会いたいな。 恋愛の話もした。昨日で恋人さんと付き合い始めて…
当番ノート 第37期
初めまして。小峰と申します。 本稿を初回に、2ヵ月間こちらに寄稿していきます。 よろしくお願いします。 —— この当番ノートへ寄稿を併せて、「出会い」を中心に文章を書いていこうと思う。 「出会い」と聞いて、読者の皆様には、何が思い浮かぶのだろうか。 人?モノ?見えないもの?・・・気になるところである。 私はやはり、「人との出会い」が初めに浮かぶ。 思い返しても取るに足らない…
当番ノート 第37期
長野県松本市のほど近く。 大きな山々に囲まれた、静かな町。 山からごうごうと流れてくる水の音、石畳の道、夏はスイカ畑の農家の方がかけているラジオの音が聞こえる。 そして冬はとても、寒い。 夫の実家に帰省すると、二人でよく散歩に出かける。 雪がたくさん降った、数年前の冬。 積もる雪を踏みしめながら、その町にある古い神社へ歩いた。 静寂の中、まさに「しんしん」と降る雪。 耳の奥が震える。 雪の粒が地面…
当番ノート 第36期
自分自身の変化に対して、人は鈍感である。 屁をしながら、最近そのような事に気付いた。 と言うより、屁をしたから気付いたのだった。 なぜなら、自分の屁にただならぬ違和感を感じたからである。つまり、屁が臭くないのである。 今年の冬は屁が臭くない。毎年何故か、冬になるときまって屁が臭かったのである。「冬の屁」とかなんとか、自分の中での季語にしてもいいくらいのものであった。 それは衝撃の変化であったのだ。…
当番ノート 第36期
1997年の2月。 帆船での初めての航海は、一週間ほどかけて大阪から鹿児島まで太平洋を越えていくものでした。 それまで海や船に興味があったわけではありませんでした。 ほんの数回フェリーに乗ったくらいが、これまでの航海経験の全てでした。 そんなぼくが自分たちで船を動かすことを目的としたセイルトレーニングというプログラムを受けて感じたこと。 船という完全に外部に閉じられた環境。 初めて知り合った、年齢…
当番ノート 第36期
一片の詩の中に、数学は、たぶん存在しないけれど、数学の中に、詩が見え隠れすることがある。 おとなの五教科、最終回のお題は[命題:逆裏対遇/真と偽]です。 ——— 命題 「p ならば q」 この命題の逆は 「q ならば p」 この命題の裏は 「pでない ならば qでない」 この命題の対遇は 「qでない ならば pではい」 * 命題が、真(正しい)…
当番ノート 第36期
Film by Takahiko Watanabe 昨年の5月に、東京で催し物をした。 ムリウイという特別な場所があった。 その空間で作りたいことにしっくり来るものを探りながら、その日その時間の外枠として必要なことと、骨組みと、衣装を用意する。 「塔」という曲のミュージックビデオのために衣装を作って以来、よく歌を聴いているSatomimagaeさん(htt…