当番ノート 第36期
搭乗時間まで珈琲を飲むためにカフェに入ろうとした時。 ナオミ!と私の名前を呼ぶ声が後ろからする。振り返ると、ちょうど四年前に大雪のJFK国際空港で乗り継ぎのシャトルバスのことを尋ねたフランス人の女性に再会!ええービックリ!どうしたの?日本にいるの?私のことを覚えていてくれてたの?と立て続けに質問をする私に、遠くからでもあの時の子だってすぐに分かったわ!と。 とても賢くて優しい心の持ち主の彼女は、こ…
当番ノート 第36期
「あなたは神を信じますか?」 一昔前、そのようにいきなり路上でガイジンさんに聞かれたものだった。 ガイジンさんと言うことで、何故かたじろいでしまう由緒正しい日本人な私である。 ちゃんと日本語で話しかけてくれているにも関わらず、 「アナタハカミヲシンジマスカ?」という音の連なりにしか聞こえてこず、意味を解すことが出来なかった。 たぶんガイジンさんに対する怯みもあるけれど、 信仰、宗教というものを自動…
当番ノート 第36期
1997年の2月、初めて帆船で航海しました。 大阪から鹿児島まで、四国の南側、太平洋を超える一週間ほどの航海でした。 全部で25人ほどの乗船客がいました。 6,7人の3チームに分かれて、チームごとに様々な作業をして船を動かしていきます。 ぼくのチーム(船ではワッチと呼ばれていました)は、 高校生男子、大学生女子、20代男子(ぼく)、30代女子、40代男子、60代男女各ひとり、とものすごく年齢のバラ…
当番ノート 第36期
photo by rika minoda 2015/9 in domeki-river mashiko-cho tochigi pref. 私が生まれ育った家の玄関の小上がりに、サンタクロースが抱えていそうな白い大きな袋が二つ三つ置かれるのは、 毎年決まって元旦の朝だった。 父が郵便局で働いていたので、 地域の家々に年賀状を届けに行く配達の人たちの拠点になっていたのだ。 配達の人たちは、「失礼しま…
当番ノート 第36期
ふと、携帯に残っている服飾の学生時代からの写真をざっと見返してみた。 たいがいそれらはどれも微笑ましい。 スマートフォンで写真を撮るというのは基本的には良い思い出を残すためにするし、思い出したくないことと関連するものは後から消してしまえるからというのもあるだろう。 楽しかったこと、感謝していること、心動かされたことをたくさん思い出せる。 ものを作る純粋な喜びを知ることができた。 学生…
当番ノート 第36期
生姜の入ったお茶の美味しい季節。すでに新年に入ってから今日で18日が経過。日に日に寒さが深まりながら、でも日も長くなってきて春が近付いてきてもいるのを鼻にツーンとくる冷気とともに感じています。 自然の中で、朝早く起きて瞑想や座禅をして、カフェイン・アルコール・五葷を避けたピュアな菜食料理をいただいて、のんびりゆっくり過ごした中で、徐々に自分の意識が透明になっていったように感じてとても幸せだった。 …
当番ノート 第36期
昨年末、連日にわたるラジオの通販番組の「カニいかがですか?」攻撃に私は曝されていた。 曰く、「お送りするのは、氷の重さは除く正味のカニの重さです」とか、 曰く、「年々水揚げ量が減り、ご用意するのが大変なんです」とか、 曰く、「水揚げ量が減っているので、近年ますます高値になっているんです」とか、 曰く、「そんな貴重なカニを3キロに加えて、もう1キログラムおつけします」とか、 曰く、「これだけのお値段…
当番ノート 第36期
1995年の1月にフリーランスになって1年半ほどが経っていました。 仕事は順調でしたが、少しずつ追い詰められているような気持ちになっていました。 しかも、何に追い詰められているのかもわからずに。 ずっと同じことをやり続けることが苦手で、いつも新しい何かを作り続けていたい。 舞台という非日常な時間のなかでずっと暮らしていきたい。 そんな気持ちもあって舞台照明家になりましたが、人生の全てを夢の時間で暮…
当番ノート 第36期
photo by rika minoda 2014/7 in ashinuma mashiko-cho tochigi pref. 北から東京へ向かう新幹線の車内、 通路を挟んで隣の席に、おそらく30代前半の両親と、小さな女の子の3人が座っていた。 お父さんは、とても良い姿勢で、ずっと静かに新聞を読み続けている。 女の子は、なにか動物のぬいぐるみを手にしていて、…
当番ノート 第36期
恋人と知り合ったとき、自分はこういう人と出会うために生まれて生きてきたのかもしれない、と思った。 浮世離れした人だ、という印象を最初に持ったのを憶えている。 直接会って言葉を交わした人の中で、浮世離れしているなどと思った相手はあまりいない。 たくさんいたって困る。 知り合ったあと、私たちはときどき何人かの友人たちと共に食卓を囲んだり、映画を観たりした。 コンビニでお酒を買って飲みながら、あても無く…
当番ノート 第36期
タイトルの “fail, fail again, fail better” はサミュエル・ベケットさんという劇作家・小説家の言葉。 最近読んだ本の中で心に残った言葉です。 世の中には、こんな風にしたら成功するよとか、もっと早くできるよという元気いっぱいの本も沢山出回っていますが この本はその方向ではなくて。 生きていると悲しみや失望、挫折が次から次に形を変えてやってくることもある。 いろいろ思うよ…
当番ノート 第36期
家人がタートルネックのセーターを買ってきた。 タートルネック…日本語だと「とっくりのセーター」となる。 …とここまで書いて、疑問が湧いた。 昭和56年生まれの私でも「とっくりのセーター」と言うとき、少し気恥ずかしく、若干の躊躇いを伴う。 疑問とは、英語圏において、タートルネックはその気恥ずかしさを伴わないのか?つまり、タートルネックと言う呼び方は古びてないのか?その場合の「とっくりのセーター」に対…