当番ノート 第35期
こんにちは!今日は、会社の下のディーンアンドデルーカからお届けしはじめます。うちのビルの1階には、スタバとディーンアンドデルーカが向かい合わせで入っていて、いつも10:1ぐらいでだいたいスタバにコーヒー買いに行くのだけど、でもディーンアンドデルーカはシーズナルのドリンクがかっちょいいので(「ラムレーズンクリームラテ」とか「ソルティレモンフラッペ」とか)時々、マーケティングリサーチ気取りで来店する。…
当番ノート 第35期
十一歳の頃、「永遠」に襲われた。 最初のきっかけは音楽の授業で習った、リコーダーのためのある練習曲だったと思う。 遠いどこかの牧歌的な夕暮れの風景を連想させる、どこか物悲しい曲だった。 曲名は忘れてしまったけど、その旋律だけがずっと頭を離れずに残っている。 当時考えていたことと、その曲から思い浮かべたイメージとが分かち難く結びついたとき、 その隙間を通りぬけて「永遠」は入り込んできた…
当番ノート 第35期
卒業式の翌日の昼下がりに兄のもとを訪ねた。兄に会うのは五年ぶりだった。携帯電話のメッセージで送られてきた兄の現在の住所は意外なことにぼくの通っていた高校から近い場所だった。ぼくがクラスメートや天文部の仲間たちと何度も買い食いをしたコンビニ。そのすぐ横にある小さなアパートの二◯二号室が兄の住まいだった。予め伝えられていた通り玄関の扉の鍵は開いていた。室内にはぼくの記憶にあるよりも更に痩せて髪も伸び…
当番ノート 第35期
「地獄寺」―あの世とこの世の境界にある、人間の本音が隠れている場所― ◆地獄めぐり day 16 地獄めぐりもいよいよタイ最北部へ。この日の目的地はワット・ナンターラームという寺院だ。前回綴った自然の脅威と隣り合わせの宿からバスで2時間、峠道を越えファーンという街に辿り着く。しかしバスターミナルなどはなく、市場のようなところに降ろされた。 そこから歩くこと30分、道路沿いにあるワット・ナンターラ…
当番ノート 第35期
こんばんは!ハロウィンが終わり、すっかりクリスマスですね(今日は新宿ルミネのスターバックスからお届けします)私は割合、クリスマスが好きだ。特に意識した訳ではないが、ちょうど10年前にクリスマスの前後半月をニューヨークで過ごしたことがあり、それからというもの毎年、街で洋楽のクリスマスソングが聞こえ始めると、あの寒くて大きな街のこと、イブの日にケンタッキーを食べる風習がないどころかお店もぜんぜん開いて…
当番ノート 第35期
人間の本質について 「人は矛盾を愛する存在である」が本質だと仰っていましたね。 「誰かを恨み、憎むことで幸せになれる人が存在し(身近にも)、 平和のために憎しみが、戦争のために愛が語られるのがこの世界なのだと痛感しました」 この熊谷さんの文章、書くだけで哀しみに押しつぶされてしまいそうになります。 この人たちは、本当にそうなのでしょうか。心の底から本当にそれで幸福なのでし…
当番ノート 第35期
Aの本名を私は知らなかった。年齢や職業も聞いたことがなかった。私とAは毎週日曜日の十一時に彼が住むマンションの部屋だけで会った。その時間に部屋を訪ねると玄関の鍵が開け放されていた。毎週決まった時間と場所で会うのでそれ以外の時に連絡を取り合う必要はない関係だった。私たちは会うたびに一度ずつセックスをした。Aの身体は酷く痩せており二十四本ある肋骨のすべてが浮かび上がっていた。細く長い腕や脚はまるで執…
当番ノート 第35期
「地獄寺」―あの世とこの世の境界にある、人間の本音が隠れている場所― ◆地獄めぐり day 13 前日、興奮の新地獄を発見したランパーン県からチェンマイへ移動した。ご存知の通り、チェンマイはタイきっての観光都市であり、世界中から多くの人が集まっている。これまで自分以外にひとりも外国人を見かけないような生活が続いていたため、チェンマイに着くとどこかホッとした。 そしてこの日は、チェンマイの隣県、…
当番ノート 第35期
こんばんは、おはよう。夜19時に自動投稿される連載の仕組みに合わせて、これまで「こんばんは」としていたが、実際は夜眠くて断念して朝に書いていることも多い。朝の曳舟駅。行くのは今のところ毎回、今年の夏にできた東武の駅ビル(というか小さな通路)の中に入っているタリーズで、駅直結の大病院に隣接したこの新しい一帯は、ほのぼのと薄暗い下町すみだの中では際立って照明がまぶしいし、いかにも白々しい。できたとき、…
当番ノート 第35期
今回はひと息つくつもりで、コーヒーでも啜りながら 肩の力を抜いて書いてみようと思います。 これから先、書こうと思っている幾つかのことは 自分にとって向き合うのがとても難しい問題であり、 内容的にもたぶん重たくなってくるからです。 なのでその前に今回は、少しゆったりとした気持ちで書かせてもらえませんか、という提案です。 コーヒーを啜っていると、大学時代にお世話になったある先生のことを思…
当番ノート 第35期
今年の四月に入社したアサクラは嫌なやつだった。口数が少なく表情にも乏しく可愛げがなかった。挨拶が出来ず飲み会には出席せず先輩に対する礼儀というものがなっちゃあいなかった。けれど呆れるほど仕事が出来る男だった。ひとたびパソコンの前に座らせれば新人離れした豊富な知識量と並外れた機転で以て、この道十年の上司たちでも手を焼くような無理難題でさえあっという間にいう間に解決してみせた。その働きぶりは社内の誰…
当番ノート 第35期
「地獄寺」―あの世とこの世の境界にある、人間の本音が隠れている場所― ◆地獄めぐり day 11 前日、ランパーン県で学生に日本語を教えているという友人の家に宿泊させてもらった。そしてこの日、なんとその教え子のお母さんが目的地の地獄寺まで車で送ってくれるというので、お言葉に甘え連れていってもらうことにした。タイで地獄めぐりをしているとこういうことがたまにある。見知らぬ私を100%の善意で送ってく…