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3F/長期滞在者&more

声は届く

長期滞在者

20157月展示風景今週末(7月12日)まで、関西で主に活動する林 直さんの個展「みつめる写真舘」を開催しています。
もうすぐ終わってしまいますが、もっとこの写真に囲まれて過ごしたいと感じる素晴らしい展覧会でした。

この作品は、林さんがいろいろな方の愛着のある品物を見せていただき、持ち主との歴史を偲びながら丁寧に撮影を進めてきたモノのポートレートと呼びたくなるシリーズです。
被写体に宿る持ち主の想いと、伝統的な写真技術に信頼を寄せている林さんのプリントが持つ美しさは、日頃写真を見慣れていない人にも、静けさをまとった作品でありながら、見る人の心にストレートに向かってきます。
何より多くの人が会場に入る瞬間に、いつものギャラリーとは違った空気が流れているように感じてくださったみたいです。

以前写真を読むことについて、このコラムで綴ったことがあります。「読む」とは画面の隅々まで写っている情報を丁寧に見ていくことで、撮影者の気持ちに想いを馳せる作業です。写真を見る読む喜びは読む意識を持つとさらに奥深いものになると思っていますが、作家さんが長い年月を積もらせて、構想から制作まで丁寧に進めてきた仕事というのは、深く読めなくても、言葉にならなくても、見る側に訴えかけてくるものがあるようです。
時にそれは激しく、またある時は優しく語りかけるように相手の心に届きます。

先月開催した愛知県在住の写真家上野龍さんの作品もそうです。上野さんの写真は初めて拝見してから10年以上経って未だに印象を形容するのに適切な言葉が見つからないのですが、上野さんが世の中から切り取ってきたひと時の光景が、妙なクセを持っており、一度見ると頭の片隅から離れない。先月の個展はぼくが、大小ざまざまな額装されたプリントを50枚以上、まるで夜空に散らばる星がごとく即興で並べたのですが、やはり独特の空気のざわめきがある。

言葉にならないメッセージは、体で受け止めるものだから、強引に例えるならばマッサージだろうと思います。それもまた作家さんの声が届いたことにはならないだろうか、と近頃もやっと考えています。
個展の撤収が終わった時の会場の静まりは少し寂しい。何も並んでいない白い空間に一瞬その残り香を感じる時があります。
写真集のように形は残らないのだけど、展覧会はそうやって毎週浮かんでは消えていくのがまた良いのではないかと思います。

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

Reviewed by
鈴木 悠平

写真から放たれる、作家さんと被写体の関係の温度。写真を並べた時に生まれる、「空気のざわめき」。立ち止まり、吸い込まれたかのように写真に見入るお客さんのまなざし。言葉にならなくとも、そこには確かにメッセージがあり、応答がある。

"作家さんが長い年月を積もらせて、構想から制作まで丁寧に進めてきた仕事というのは、深く読めなくても、言葉にならなくても、見る側に訴えかけてくるものがあるようです。
時にそれは激しく、またある時は優しく語りかけるように相手の心に届きます。"(本文より)

以前、写真を「読む」ことについてコラムを寄せられた篠原さん。画面の隅々まで写っている情報を丁寧に読み取り、作品の背景、動機、メッセージをあぶりだしていく作業。日々たくさんの写真を「読み」続けてきた篠原さんが、それでもなお、言葉にならない声、身体で受け止めるメッセージがあると語られるのを読むに、写真作品が持つエネルギーの奥深さを感じる。

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