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3F/長期滞在者&more

ギャラリーのアフターアワーズ

長期滞在者

ウエストコーストスクールの代表的写真家のひとりイモジン・カニンハム。ぼくはモダンプリントしか手に取ったことがないけれど、ドライマンウトされたミュージアムボードの隅に「意・無・尽・印」の四文字が組合わさったエンボスが打たれています。「イモジン」の当て字であると同時に、どうやら、彼女の写真集のタイトルでもあった「IDEAS WHTHOUT END」とも意味を重ねているらしい。
70余年の写真家人生が常に新しいチャレンジの積み重ねであったイモジンらしい言葉だと思います。

ぼくのような、小規模なギャラリーを何年も続けていくには、とにかく他でやっていないことを考え続けるしかありません。新しいアイデアを日々出し続け、そのうちのいくつかを実行に移す。いくつかは失敗して、いくつかがうまくいきます。うまくいったものは、大資本にマネされるのは分かっていますので、そうなってきたら、次の新しいことをはじめます。

思いつきの域を出ないようなことも、実現性に乏しいものも、頭に浮かんだらなるべく早く、正確に、そして正直に書き留める様にしています。それが起点になって思考を重ね積もらせることによって、思っても見なかったような名案に仕上がってくるから不思議なものです。一見、どうしようもないような思いつきであっても、頭の中で打ち消してしまうような週刊が積もりますと、自分のアイデアが頭の中から詰まって出てこなくなります。

あるとき、当時のスタッフだったOさんと、軽いブレーンストーミングをしていました。今までやったことのないギャラリーの使い方についでです。彼女も半ばヤケクソ気味だったのかもしれませんが、ギャラリーにコタツを置いてみかんを食べる会をやりたい、と言い出しました。
最初はぼくも、う〜ん、と思いました。こたつでは定員が4名ではないか。と。興行としてどうやって成立させれば良いのだろう?みたいに。
しかしながら、よくよく考えてみると、ギャラリーの中で飲食をする機会というのは、オープニングパーティーの時ぐらいしかありません。それもオープニングパーティーというのは、お客様の出入りが激しく、落ち着いて飲食を味わう漢字ではありません。
ギャラリー稼業の役得としては、このパーティーが終わった後、殆どのお客様がお帰りになって、後片付けをしながら、残り物だけど軽く飲みながら、賑やかなパーティーの余韻を味わうかのように会場でくつろぐことです。

写真の楽しみ方のひとつとして、じっくり見る、以外にも良い作品に囲まれてひとときを過ごす心地よさというのがあります。自分の好みで選び抜いたお気に入りのモノたちに囲まれて生活するのは、中々良いものです。

日頃、立場としては写真を買え買え、と言ってるけど、その後の楽しみ方を皆さんにどれだけお伝えしているんだろうか、と。何かやって来たんだろうかと、思い直しました。

そこで生まれた企画が「Photography ×Lifestyle」というイベントで、予約制で一時に会場には4名様までしか入れません、展覧会をご覧頂くのに4000円頂戴します、というものを考えました。
会場には一人掛けのソファをいくつか持ち込み、展示作品はミュージアムクラスのビンテージプリントです。飲み物と軽いお食事はこちらで準備してお好きなタイミングで召し上がって頂けます。展示作品の他にもぼくの資料棚から大量に貴重本を搬入しまして、壁にかかっている写真をみたり、写真集をパラパラやったり、疲れたらそこで居眠りしてもらっても構わない。

コタツでみかんとは全然違うものになってしまいましたが、このイベントは大成功で、今はギャラリーを飛び出して、大人が静かに過ごせる様な雰囲気の良い場所で展開させる方向に変わって来ています。
来月、ぼくのセレクションでしばらくお見せしていない取り扱い作品を並べ、一日だけこのイベントを開催しようと思っています。
モノとしての魅力のある写真に囲まれてひとときを過ごす、どんな感じなのか興味のある方はぜひ遊びに来て下さい。

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

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