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3F/長期滞在者&more

街と かかわる

長期滞在者

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先日いま入居しているビルの隣のテナントさんが引っ越して行きました。岐阜県に本社がある織物関係の会社とのことでしたが、仕事の量が少なくなって、今よりも半分くらいの事務所物件に借り換えると言ってました。感じの良い方々だったのでとても残念なのですが、昔から仕事をしている人たちが事業規模を縮小し、別の街へ移転する代わりに、一見空っぽに見えるこの街で事業を起こしたいと集まってくる若者たちもいます。

この一月くらい、この界隈で起業した様々なジャンルの若い経営者たちの話を聞く機会を得て、面白いなと感じたのは、小伝馬町という街のイメージにとらわれず、様々な理由から積極的にこの地を選んだということです。
ある人は、交通の結節点としての魅力を、ある人は、海外からの旅行者が数多く宿泊しているという人の交流に期待し、ある人は、古いビルと広い一方通行の街路がニューヨークのそれを連想させるから、という理由であったり、そこらじゅう空きビルだらけだからという人もいました。
さらに興味深いのは、この街が多くの人々が訪れない点もビジネスとしての魅力と映っていることです。空っぽの街に絵を描くように新たな魅力を生み出し、他所にはない価値をつけて地域全体を盛り上げていこうという考え方です。少し前ならば、それは建て直したり、内部既存の建物の内部を大きく作り変えたりというハコの作り方の議論でしかありませんでした。

いまこの街で起こっていることは、例えば駐車場の跡地でバーベキューをしたら楽しそうとか、夜のビル街の一角で小さなライブやDJイベントをやってみたいとか、ホテルのロビーの絵を宿泊者が自由に続きを描き続けていったら凄いぞ、といった空間の中で何をするかという会話が普通に飛び交っています。そして、街を面白くするために欠かせない要素としてアートが絶対に必要だと思っている。
今までそういうのは、専門家の間でのみ交わされたある種の理想論でしかないと半ば諦めていたのに、ぼくよりも若いこの街の第二ウェーブとても呼ぶべき人たちが、ごく自然にアートのある生活に関心を持っていることに驚いています、しかもまだ評価の定まっていない作品に対してもです。

この界隈で何が起こっているのかを可視化するために、地域のマップを作ろうという話が持ち上がり、僕たちも喜んでお手伝いさせて頂いています。
地域で暮らす人、働く人、海外から東京に来てしばらく滞在する人たち、そして何かが始まることに興味を持ってくれる日本各地の人たちがこの街で混じり合う結果どういう変化が起こるのか今からとても楽しみです。
思えば、移転後半年が経過して、少しづつこの街の繋がりを手に入れてきているのかもしれないです。

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

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