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3F/長期滞在者&more

雰囲気を身に纏っているひと

長期滞在者

活気のある商店街を歩いていて、そこにお肉屋さんがあると、ついそこのご主人の姿が気になる。お肉屋さんのご主人というのは、こちらの勝手な思い込みで申し訳ないが、いかにも美味しいものを知っていると思わせる雰囲気を全身で表現しており、あぁ、この人の作ったコロッケは間違いなく美味しいよね~と思わせるような何かを身に纏っているように見える。

物心ついた昭和の頃から平成~令和に至るまで、時代が変わり人々の価値観が変わり、社会の雰囲気がどうであれ、このお肉屋さんのご主人像というのは、さほど変化がないように感じます。

コロナ禍と呼ばれてすでに半年が経過して、ぼくの気持ちも徐々に誰かに会ったり、時には仕事帰りに食事に出たり、ということを少しづつ、元のようにできればと思い始めています。

作家さんにきてもらったり、こちらが出向いたり、来年の展覧会のための打ち合わせが今月はとても増えてきました。ここしばらくは全然できなかったことです。

いくつかの作品を間にして語り合う中から、徐々に展覧会の肝をどのように作るべきかの構想がゆるゆると立ち上がります。まるで秋の里山の隅っこに立ち上る煙にも似ていて形ははっきりしないが、かすかに野を焼く独特の香りが五感を刺激するように。

作り手と、ギャラリーディレクターが言葉を重ねていく中で、おぼろげなイメージは徐々に具体的な形を見せ始めます。

自分の中で言葉がポンポン出てくるのは、作品がそれだけ魅力的に映っているからだとずっと思っていました。でも、今月自分のオフィスの大きな作業テーブルの上にサンプルイメージを並べながら、作家さんと対話を重ねていくうちに、作品だけではここまでアイデアを積み上げることは不可能だったのではないか、という気がしてきました。つまり、それを生み出した作家さん自身が魅力的で面白いからいろいろなアイデアが浮かぶのかと。素晴らしい作家さんというのは、矢継ぎ早に面白い提案を差し込んできて、表現する喜びや楽しみを心の底から知っているぞという雰囲気を身に纏っているではないかとさえ思いました。

思考に思考を積もらせる時、僕たちの頭の中には、同じゴールのイメージがかなり具体的に見えてきます。今更なんだ、と思われるかもしれないけれど、オンラいんミーティングばかり重ねてきたので、このようにテーブルで向かい合ってやり取りすることが、こんなに脳を刺激してくれるのか、ということに驚いています。

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

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