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3F/長期滞在者&more

ここにいることを知らせる

長期滞在者

夏休みを取ったのはいいけれど、雨続きで、自宅にこもっているのもすっかり飽きてしまい、車に乗って都心をぐるぐると巡ってみました。

デパ地下の入場制限がはじまった影響もあるのか、銀座や日本橋のデパートはガラガラで、表通りを行き交う人々の姿もまばらです。逆に原宿の人の多さが際立っており、振り続ける雨の中いまどき原宿に行かないと手に入らないモノや体験とは一体何なのだろうか、と思いながら眺めていました。商業施設の近くには、必ずスターバックスコーヒーがどんと構えているが、コロナも雨も関係なく盛況だ。数軒先の200円のセルフ式コーヒーショップだって普段なら、同じくらい混雑すると思うけれど、こちらは、ほとんど人が入っていない。

都心の狭い住宅に暮らす人たちが、自室で過ごす時間を持て余し、第二のリビングスペースとして、使っていると考えるとその集客のコントラストにも合点がいきます。

それにしても、都心で暮らす人がこれだけ増えているというのに、ギャラリーの近辺から集まる人たちというのは、それほど増えていません。もちろんゼロではなく、日本橋界隈に暮らす新しい住民の方々に、ぼくたちのギャラリーを楽しく使っていただいていることは間違い無いのですが、昼間は人影がまばらで、日が暮れる頃に、他のエリアにあるショップの袋を下げてこの街に帰ってくる姿をたくさん見かけると、もっと何とかしなければ、といつも思います。都心で暮らす人たちは定住率が悪く、絶えず人の入れ替わりがあるとも聞きます。確かに年中引越し業者のトラックが同じマンションの前に横付けされているのをしばしば見かけます。この地域に何があるのか、どんなことが起こっているのかは、絶えず周知を繰り返していく必要があるのだと思います。

学芸大学や高円寺に住みたい人と、ここ東日本橋で暮らす人では、基本的に住まう土地に期待するポイントが全く違うということはわかっているつもりでいましたが、地域の魅力を定着させていくのがこんなに難しいものだとは思いませんでした。

街の書店が姿を消し、気の利いたセレクトの音楽を物色することもできず、休日の過ごし方はスタバと、狭い公園と、休日営業をしている数少ないカフェ、夕方は自宅でNetflix見ながらUberで頼んだ食事を取る以外に、楽しみの選択肢を増やさないと、せっかくの都心暮らしも彩の少ない、退屈な日常のように思えます。人々が交わり、新しい世界を背伸びして観る、楽しみ方が、コロナ禍の単調になりつつある生活にメリハリがつくことを願って、そしてギャラリーがその一端を担えるように、もっともっと努力を重ねていかなければと思っています。

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

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