金曜日に有給を使い、3泊4日で札幌へ向かった。
意図していたわけでは無いが、本州にはちょうど台風が来ていて、結果的に台風から逃げるように向かった。
最安の航空券を取っていため、発着が羽田でなく成田で、しかも朝8時台のフライトだった。
登山にでも行くのかという時刻に起きて、始発に近い電車で成田へ向かう。少し贅沢をして成田エクスプレスに乗って向かった。結果的に、成田から札幌までのフライトよりも自宅から空港まで行く方が時間がかかった。
そして特急料金を考えると、羽田発の航空便にしておけばよかったと後悔。
離陸前から爆睡し、気付いたら千歳空港に着いていた。すぐに市街地に移動する予定だったが、結局空港内で味噌ラーメンを食べ、その後空港内にあった温泉に入った。
温泉施設に入る際にマスクを忘れたことを伝えたが、館内でマスクは不要とのことだった。ここ数年のどっちつかずの状態が終わったような気がした。
空港内の温泉は値段は高かったが、露天風呂もあり、仮眠室もありとても快適だった。何も成し遂げてなく、ただ早起きして移動しただけなのに、疲れを癒していた。
ついつい長居したくなる施設だったが、せっかく札幌にいるのに空港にいるだけではもったいないので、バスで市街地へ向かった。
市街地に着いて、まずは連泊する予定のカプセルホテルに荷物を預けた。
安いなという一択で特に場所も見ずに予約したが、ちょうど狸小路という繁華街の側でどこに行くのにもアクセスはよさそうだった。
北海道とはいえ日中はどうせ暑いだろうと半袖ばかり持ってきていたが、実際は日中から肌寒く、唯一持参していた長袖の服をずっと着るはめになった。
その日は夜に行きたいイベントがあり、それまでだいぶ時間があったので、映画館で映画を見ることにした。
シアターキノでアルマゲドンタイムという映画を見たが、久しぶりに映画館で爆睡してしまい、半分しか観れなかった。予定調和な展開が個人的には少し食傷気味に感じた。
ミニシアターを出るとまだ5時台だったが、目の前に”これは入らずにはいられない”という雰囲気の魚屋があった。
一人でも入りやすそうだったので、入ってカウンターに座る。
みながみな1時間の飲み放題を頼んでいたので、同じように頼む。
お通しは、セルフサービスで、何種類かのメニューを一つのお皿に一人1回盛り付けられるシステムだった。
念願のサッポロビールやお刺身も食べ満足したが、一方で何か北海道に来たらすべきことを義務的に一つ一つこなしているような気持ちにもなった。札幌に来ても堂々とサイゼリヤに入るような、謎の背徳感を味わうような経験もしてみたいと思った。
夜のイベントまではまだまだ時間があったので、一旦カプセルホテルに戻ることにした。
フロントに着くと、スタッフの1人がすごい剣幕で電話応対していた。
どうやら宴会コースを予約していたのにドタキャンがあったようだ。しっかりと顧客に対峙していることに好感を持つ。
2時間ほど仮眠して、今回の札幌滞在のメイン目的であるPrescious Hallへ向かった。
どこにも目印が無い入口、壁一面に置かれたスピーカー、真っ暗で撮影不可なフロアと、まさに洞窟のような素晴らしい空間だった。
朝まで踊り明かす体力は無く明け方3時頃までいて、その後に歩いて5分ほどのカプセルホテルに帰った。
翌日、札幌から電車で行ける場所がどこかあるか路線図を見ていると、苫小牧の名が目に入ったので向かうことにした。
途中、ウトナイ湖というラムサール条約に認定されている湖があり、その周りを散策したくなったが、電車の駅から1時間ほどの距離だったので、雨の日に行くものでは無いなと思ってやめた。
苫小牧に着いても雨は強く降っており、駅からどことなく歩いていると靴下まで濡れてしまった。
何か食べようと思ったが店が見当たらず、結局駅まで戻り、駅直結のドンキホーテ内にあったラーメン屋に入った。
反射的に味噌ラーメン一択しか思いつかず、また味噌ラーメンを食べた。
なかなか苫小牧にいてすることが思いつかなかったので、1時間ほどほっつき歩いただけで再び札幌へ戻った。
電車の中で、仕事のことを考える。
モノが果たして売れるのか。なかなかすっきり行かない日が続き、ボディブローのように少しづつダメージが蓄積されている気がする。もっともっとシンプルに考えていきたいと思いながら札幌へ向かう。
前日同様、また夜にPrescious Hallへ向かうことにしていたので、カプセルホテルに戻り仮眠をとる。
仮眠を終えてすすきのまで歩き、交差点にあった半分野外の小さなジンギスカン屋に入った。
北海道のジンギスカンの肉はだいたいニュージーランド産で、ジンギスカンのタレを売るベル食品という道内の企業がいるから、北海道でジンギスカン文化が広がったと知る。
その店ではジンギスカンの作り方を間違えてしまい、なかなかうまく焼けなかった。そして、店内の他のお客さん達から作り方を見られているように感じ、どこか落ち着かなかった。
再びPrescious Hallへ向かうと、前日より更に人が多かった。フロアで大きな手拍子をしつつ、とてつもない踊り方をしている人がいて誰かと思えばBlue HerbのBossだった。
日曜日、昼頃まで寝て、カプセルホテル向かいのセイコーマートでヨーグルトとサンドイッチとコーヒーを買って、目の前にあったオープン前のパフェ屋さんの机を借りてモーニングをとった。
カプセルホテルでは爆睡出来ているようで、閉所で寝ているせいか、疲労があまり取れなかった。
その日もすっきりしない天気だっため、電車で小樽に行こうかと思ったがやめた。
札幌でやることが無くなり、丸善の中に入っていたブックカフェで時間をつぶしていた。と、その場に置かれていた雑誌の中で、札幌から数駅の琴似駅というところに名物店主が営む本屋があることを知り、向かうことにした。
琴似駅を降りて、店に向かうとそこには本屋が無かった。え、、と思いググってみると、店主が数年前に亡くなり、とうの昔に本屋は閉店していた。Twitterでその本屋を検索すると惜しむ声が多く並んでいた。
ただ、琴似駅に降りたったのも何かの縁だろうと思い、隣の駅まで散策した。
その日もPresciousHallに向かった。ちょうどロシアから人気のDJが来る日で前売りも完売だったためか、夜中にも関わらず長蛇の列が出来ていた。
前日に前売りを買っていたため中に入れたが、夜中3時になってもまだ並んでいた人がいた。帰る人がいたらその人数分を待機列から入れる仕組みを取っていたようで、朝まで中に入れなかった人もいたんじゃないかと思う。
3日通ってみて、こんなに音が良く、緊張感がありながら、一方で落ち着いた雰囲気のする場所はなかなか無いなと思った。逆にいつも通っていると、中途半端なものを受け付けなくなるような気がして、それはそれで勿体ないかもなと感じた。
翌朝の月曜日は普段札幌でテレワークしている職場の後輩と北海道大学のキャンパスで会うことになっていた。
彼を待つ間、おすすめされた古本屋に入って、北大の文芸部が発行している同人誌を買う。レジ横ではバックナンバーを無料で配っていたのでそれももらう。手荷物重量超えないか少し心配になる。
後輩と合流し、広大なキャンパスを歩いて学食で飯を食べる。久々に学食に寄ったせいか、学食で食べる飯がどんな食事よりも栄養バランスが整えられたように感じる。特にそんなわけでは無いだろうが。
キャンパスとその周辺を1時間ほど歩いて、県庁まで向かい、駅で別れた。
自然に圧倒されるような旅とは異なり、都市同士の微妙な差異を感じる旅を終えて、翌朝からまた日常生活を過ごした。