先週、訳あって京丹後を訪れた。
新横浜から京都まで新幹線で移動し、特急に乗り換え、さらにもう一度ローカル線に乗り換えた。
京丹後は長寿の地域で、普段の食卓でワカメなど海藻が並び、食物繊維をよく摂取することが大きな要因だと聞いていたのだが、タクシーの運転手に長寿の秘訣を聞くと「寝る直前に日本酒を呑むことやわ」という返答が返ってきた。
京丹後での宿泊先は歴史ある旅館をリニューアルしたホテルで、1泊5,000円ととてもリーズナブルだったので予約したのだが、実際は旅館の駐車場に停められていたトレーラーハウスの中に宿泊するプランだった。
けれども、温泉は本館のものを使うことが出来た。
日暮れ前に温泉に入ると、杖をついた老人が脱衣場にいて、ゆっくりと着替えをしていた。
湯に浸かってしばらくすると、杖をもったまま老人が入ってきた。
1つ1つどういう順番で身体を動かすべきかを綿密に計算しているかのように、ゆっくりと身体の各部位の関節を動かし湯船に入る。最後は、ほぼ寝転ぶような形で湯船に入っていた。
忙しなさから解き放たれたような、そこだけ時間が止まっているような空間であった。
その日の日暮れは17時30分頃で、日暮れを見に浜辺へ向かった。
途中、カニを目玉としたおみやげ処があったが、閉まっていた。シーズンオフなのだろう。

浜辺に着いたのは日暮れの直前だった。
そこに広がっていたのは、悠久な時間の広がる桃源郷のような場所で、靴と靴下をすぐに脱いで、裸足で波の近くまで歩いた。
数人のサーファー達も波乗りを楽しんでいた。
それが1日のサイクルの当たり前の時間であるかのように、波に乗っていた。
両手で数えられるくらいの観光客もいたが、広い砂浜の中で、人という存在の小ささを感じた。
たった15分いるだけで、数ヶ月分の心の垢が洗い流されるような、そんなかけがえの無いひと時だった。

日が暮れて、街灯も無く真っ暗な夜道を歩き、トレーラーハウスに戻る。
途中、魚屋があり、立ち寄るとサーフィン上がりの地元の若者がおり、店長に本日のおすすめを聞いていた。毎日来ているのだろうか。
この店で刺身と惣菜を買い、こじんまりとしたスーパーで地酒のワンカップを仕入れてトレーラーハウスでささやかな晩酌をすることにした。
ホテルに戻り、早速先ほど買った刺身を食べるととんでもなく美味かった。
400円でこんな幸せな気分になれるとは。
