長期滞在者
活気のある商店街を歩いていて、そこにお肉屋さんがあると、ついそこのご主人の姿が気になる。お肉屋さんのご主人というのは、こちらの勝手な思い込みで申し訳ないが、いかにも美味しいものを知っていると思わせる雰囲気を全身で表現しており、あぁ、この人の作ったコロッケは間違いなく美味しいよね~と思わせるような何かを身に纏っているように見える。 物心ついた昭和の頃から平成~令和に至るまで、時代が変わり人々の価値観…
長期滞在者
束の間の休暇は、久しぶりに海へ。 神奈川県には10年以上住んでいたのに不思議と愛着がわかず、東海道線に乗りながら「本当はもっと遠くに行きたい」と思っていた。けれど江ノ島や鎌倉を歩いていたら、いつの間にか「このへんで良い物件はないかな」と考えはじめている自分がいる。 海に近い土地から離れて8年経つ。いつかまた海を身近に感じられる場所でと思っていたのが、急に芽吹いたようだった。 ただ広い、大きな海があ…
長期滞在者
フランス語でお茶はThé(テ).たった一音.簡潔で気持ちのいい響きだ. 紅茶ならThé noir(テ・ノワール)、緑茶はThé vert(テ・ヴェール)、白茶はThé blanc(テ・ブロン)、烏龍茶はThé oolong(テ・ウーロン)、とても簡単. 私のお茶好きは親しい友人なら誰もが知るところだ.今、キッチンで目に入るものだけでも30種類はあった.毎日ざんざん飲むので茶葉が古びる暇もない. *…
長期滞在者
朝目覚めて、その日を終えるまでに、今日の自分を使い切る。余力を残さず。そして眠りについて、しっかりと力を蓄え、明日を生きる。 「無理をしてはダメだけど、無茶はしてもいい。」 ラジオDJとしてまだまだ駆け出しだったころ。信頼するラジオディレクターが言ってくれた言葉を、もう一度自分に掲げたような夏だった。 2020年8月30日。毎年夏に、レギュラーラジオ番組『Voice of Heart』を担当してい…
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1. 別れと出会い。終わるという始まり。 一昨晩、24日夜に書き換え直した。 整理できなくなった。 記すのは落ち着いてからにする。 出会いより別れは衝撃的かつ直接的に感じやすいのが一貫している。 晒されるというか、カバーもフィルターも抜けてしまったというか。 対して、出会いは区切り目は設けない限り線を引けない。 引かないと見えにくい。 相当、シームレスであるように思える。 人の習慣に、記…
長期滞在者
今月の頭、社内で数少ない同い齢のTから「今月で会社を辞めることに決めたよ!休職の際は、色々アドバイスありがとう」と連絡が来た。 チームが違ったのに加え、もともとリモートワークが可能な会社であったために私が気付いたのはしばらく経ってからであったが、Tは年明けから出社する日数が減っていた。休みがちになっていたことを知った夜に連絡してみると、「社内にいるとドッと疲れが出てきてしまうが、それ以外の生活では…
長期滞在者
カメラは重力に従う。それが物理だ。ほっておけば落ちるものを、人は手放すまいと緊張したり、ストラップをかけたり、法則に逆らった努力をする。以前とあるギャラリーで若い男の子が珍しいレンズをつけたカメラを持っていたので「ちょっと覗かせてもらってもいいですか?」とお願いしたら「ちゃんとストラップ手に通してから持ってくださいね」と念を押された。以前誰かにカメラを落とされたのかもしれない。その慎重さに感心した…
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毎週教えに行っている学生たちと、Instagramのストーリーを使って「作品」ではなく、自分をプレゼンテーションする短い動画素材を作る実験をしています。 もともと、SNSの趣味的な投稿というのは、自分にとっては仕事の一部であって、プライベートで投稿(プライベートっぽく見せる投稿はある)したことがない事情もあって、インスタのタイムラインに保存されるタイル状のサムネイルこそ僕にとっては、情報発信の重要…
長期滞在者
先駆性!根源性!現在性! 最近の口癖である。 今年に入って多々再認識することがあり(7回以上は)、先週にもその体験が、、、 ひとり池袋駅から家へ帰る時、雨降る空を見ながら、「卑弥呼さんも聖徳太子さんも空海さんも、地球側から天空に顔を向けて思い耽ることをしていたのかな… 時間と空間を超えて似ていることをしている… 間接的にコミュニケーションできてありがたい… いま…
長期滞在者
布はフランス語でToile.女性名詞で、トワール、と読む. 自分の部屋を居心地好くするためには労力も時間も惜しまない性分だからか、持ち物が多い.とにかく引っ越しが多いのだけれど、どこの家に移っても、荷ほどきすれば、そこは私色の空間だ.フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、台湾、日本…各地から運び込まれたベッドリネンやクッション、カーテン、タッセル、テーブルクロス、ラグ、大小の花瓶、額縁、絵画やリト…
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8月。私はずっと、日本の夏は喪の季節だと思っていた。日本の歴史的にもそうだし、私の大好きだった祖父母も夏に死んだから。 夏には、蝉の鳴き声や空の色を眺めながら死について考える時間が必ずあった。それが今年はなかなか外に出ないせいか、季節感もないまま時間が過ぎている。何かが欠けている。 けれど欠けていることに違和感を持つのもおかしなことなのかもしれない。常に何かが欠けたまま、世界は動いているから。 た…
長期滞在者
3年ほど前から、タイヤが小さいながらも、なかなかにスピードが出る自転車に乗っている。 同居人の親友から譲り受けたものだが、サイズ感も手入れのしやすさも、凝り過ぎることなく自転車ライフを手頃に楽しみたい私にはぴったりであった。 また、偶然にも、チェーンロックの4桁の番号が私の誕生日と同じ番号であった。元々の持ち主が、とあるテクノユニットの片方のメンバーの誕生日をチェーンの解除番号にしていたようだが、…