長期滞在者
幼い頃、よく親戚と集まって賑やかに過ごした。大人たちはお酒を飲み、子どもたちはボードゲームをしていた。 色々なことがあって、今後の人生で親戚同士が集まることはもうないだろうという状況になったのだけれど、この家に誰かが来るとそのことを寂しいなんて微塵も思わなくなる。 4月1日(月) 元号発表の日。発表されたね、と純君と言い合う。正直な話、元号改定は手続きに則って決められるものだし、今まで問題だったこ…
長期滞在者
「自由な人間が、死ほどおろそかに考えるものはない。 自由人の叡智は死ではなく、生を考えるためにある。」 というのは、シュレディンガーが『生命とは何か』の 冒頭で引用した、スピノザが『エチカ』に綴った言葉。 で、彼自身はその前書きの中で次のように書く。 「われわれは、今までに知られてきたことの総和を結びあわせて 一つの全一的なものにするに足りる信頼できる素材が、 今ようやく獲得され始めたばかりである…
長期滞在者
〈写真家・深瀬昌久が生前に愛用した Nikon F3〉 前回は「アーカイブとはなにか:前編」と題し、物故作家のアーカイブ活動について書きました。アーカイブとは「記録し、保存する」だけでなく「成果を世に伝え」ることによって「後世に引き継ぐ」仕事だというビジョンについて。そしてそのためにはどんな伝え方をすれば、より身近に感じてもらえるかを試行錯誤することに楽しみがあること。その結果できあがった初の回顧…
長期滞在者
仕事帰りに、大学時代の友人のY君と久しぶりに再会し、ライブハウスへ行った。 直接面識はないが、Y君の大学時代の友人J君が出演するバンドのライブへ。 豊潤、色鮮やかに花開いた80年代末~90年代前半のオルタナティブの世界において、 とてつもない異彩を放ち、尋常じゃないテンションで突っ走り、そのくせ知性の欠片が見え隠れし、はたまた歌詞はブニュエルとダリによる古典映画アンダルシアの犬を題材としているとい…
長期滞在者
メール添付で送られてきたカレッジの地図を開くと、大きな庭が目に入った。3月の終わりに英国のオックスフォードでセミナーがあり、宿泊先は、カレッジと呼ばれる、キャンパスと寮を兼ねるような大学の敷地内にあった。カレッジはオックスフォードの街中にいくつも点在し、今回のセミナーで宿泊するところは、まだこれまでに入ったことがなかった。 —— 日本時間では深夜をまわったくらいの時差ぼけし…
長期滞在者
個人ではもう使わなくなったと思うけど、仕事の現場では今も、注文や、見積もりをファックスで送ったり、送られてきたりすることが多い。それでもいまは、文字や簡単な手書きの図表程度ではあるが、電子メールが普及する前は、写真の絵柄のやりとりも頻繁にファックスでやっていた。本や、生原稿を複写して送信するのだけれど、これがまた不鮮明な画像で、中には、真っ黒にしか再現されない場合も多かったが、とりあえず情報として…
長期滞在者
私が最初に洋楽の音源を買ったのは、家族旅行でハワイに行った時。 ショッピングモールにあったレコードショップで、 ティファニーの1stアルバム『Tiffany』とマドンナの3rdアルバム『True Blue』のカセットテープを買った。 家族でマイケル・ジャクソンやマドンナの来日公演を観に行ったこともある。 振り返ってみると、私の洋楽への入り口には家族との思い出がある。 2月のグラミー賞の発表が終わる…
長期滞在者
私はどうして家を開こうとしているのだろう。家を開くことで何を期待しているのだろう。予期せぬものとの出会い、この家がもっと愛されてほしいということ、新しい空気が入ることで健全さが保たれる場になること?どれも当たっているようで外れている。 そもそも。 愉快に過ごそうとすることに、理由を見出そうとするなんてナンセンスだということに気がついた。 時代が変わっても、楽しく過ごせますように。 3月1日(金) …
長期滞在者
季節の変わり目だからだろうか、ここ数日気分が冴えない。 自律神経に問題でもあるのか、体調も変な感じで、 風邪の症状はないのだけど、昼間でも足先が冷えていて、 今日あたりなんかは肩の辺りから体の芯に向けて 冷気のようなものが滑り込んでくるような感じが続いた。 なのでせっかく久しぶりに天気が良くなったものの、 その冷気に勝てず、今日は布団に潜り込んで午後までをすごした。 で、開いてみた本からの引用。 …
長期滞在者
”最近のアメリカは、すべてがリアルタイムで起きるリアリティテレビのようだ。リアリティテレビのスターを大統領にしたわけだから当たり前か” アメリカから東京に向かう飛行機の中で、大学生くらいの女の子が「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ」を視聴している。「バカバカしい」と評されるような、セレブ一家を追ったリアリティ番組だ。もともとはバカにしていたが、ある時から時折見るようになった。シリアスなニュース…
長期滞在者
カンボジアで日本人の若者2人が、金のためにタクシー運転手を殺めたというニュースを耳にした。 放棄しているようであんま使いたくないけど、あり得ないという言葉しか浮かばない。 今月のアパートメントでは、カンボジアにいる親友について書こうと決め、はてどんな内容にしよかなと妄想している時にこんなニュースが入ってきた。 そんな事件が起こる前、先週金曜に、私の勤務先の農業施設の視察に訪れた、以前から何回か会っ…
長期滞在者
〈下図版:資料はアーカイブの要。これらは全て深瀬昌久関連。左上のファイル群は200冊強の雑誌スクラップブック〉 2014年に深瀬昌久アーカイブス(以下、MFA)を起ち上げて、今年で5年目となりました。5か年というのはひとつの節目ですから、起ち上げ当初に私が掲げた目標と、それを実現するためのビジョンを改めて振り返るには丁度良いタイミングでもあります。そこで今回より数回に分けて、物故作家のアーカイブと…