長期滞在者
10月1日から、また入院する。 これまでホルモンの補充療法を続けていた中枢性尿崩症とは、まったく別の難病を発症している疑いがあり、再度一週間の検査入院することになった。1ヶ月前にはこんなことになるなんて想像すらしていなかったけれど、今このタイミングで入院することになってよかったとも思う。正直にいうと、自分の体が少しずつシャットダウンしていっていることには、少し前から気づいていたし、自覚症状はたくさ…
長期滞在者
ライターという仕事をしているのに、人と話すのが苦手だ。正確に言うと、できないというより、強烈な苦手意識がある。 インタビューなどであらかじめ決められたテーマがあるときはまだいい。でも、お互いに「これからこの話をしますよ」という前提が共有できていないと、途端によそよそしくなってしまう。正直、視線を合わせることもできなくて、目が泳ぎまくっていることさえある。 雑談が苦手なのかもしれない。そうしたコミュ…
長期滞在者
笑う門には福来たる。 縁あって、1966年から放送されているテレビ番組『笑点』の公開録画にお邪魔させて頂いた。 一緒に行った人たちと後楽園ホールでの収録会場に入っただけで、みんな笑顔。 子供の頃から見たことがあるテレビ番組のセットは見ているだけでわくわくした。 ラジオでDJをしている私にとって、落語を観る時は楽しむことはもちろん、とても勉強になる機会。 声と音だけで想像して楽しんで頂くラジオトーク…
長期滞在者
阪急神戸線の線路北沿いの道を塚口から園田方面へ、夜遅く自転車で出発する。 山陽新幹線と阪急線が交差する複雑な高架下を掘るようにくぐったその先に、黒々と藻川(もがわ)の水面が見えてくる。 最近僕の中で流行っている「藻川西岸南下・神崎川・左門殿川から2号線コース」(塚口発着で約15km)である。 ここは藻川に散らばるもこもこした中洲群がなんだかシュールな影絵を形作っていて、昼間に通っても不思議な景色な…
長期滞在者
いくつかの作品を引き取るために、先日 レジェンドと呼んでも差し支えない作家さんのご自宅へ行ってきました。今はご遺族がプリントと原版の管理をされているが、アトリエを処分してしまったので、自宅のマンションに棚をたくさん入れて、50年分の写真のことを全部収納してるということで、実際行ってみたら、自宅の一角どころか、自宅の大半がその作家さんが残した作品などで、むしろ塊の中で暮らしているようにも見えました。…
長期滞在者
わたしにとっては、その年はじめて茄子を食べた日から、夏が始まる。旬の茄子を手にとって眺めてみてほしい。太陽の強い光がぎゅっと濃縮して、それでかえって漆黒になってしまったかのような、つやつやとした紫色をしている。光にちらちら当ててみると、深い水の底をのぞきこんだときのように、紫色に深みを感じることができる。キュッと曲がった形をしていて、切りづらかったりもするのだけれど、その型にはまらない感じすら愛ら…
長期滞在者
世界が素晴らしいと思えないときがある。 人生にはいろいろなことがあるから、それは別に不自然なことではないと思う。 ただ自分を少し見つめ直すだけだ。 ぼんやりとした私は生活の営みを通してぐいぐいと現実に引き戻される。 だから私は家にいるとほっとするのだ。 8月1日(水) 洗濯物を取り込んでいたら羽虫が入ってきて天井に張り付いてしまった。私は椅子に乗っても天井に手が届かないので、部屋にいた昴君を無理や…
長期滞在者
大学の後輩が某航空会社で CAをやっていて、 ブリュッセルに来るというので、 20数年ぶりに会って食事をした。 当時から人付き合いの苦手だったぼくは その後輩ともあまり話したことはなかったのだけど、 会ってみると意外と覚えていることもあるもので、 危惧していたほど会話に困ることはなかった。 西洋舞踊専攻のコースに在籍していたぼくたちは、 それぞれ踊ることはあまりなくなっているけど、 やはりその大学…
長期滞在者
体調の浮き沈みは、病気になってから日常的なものになっているけれど、8月中旬ごろから水棲ゾンビのような状態でいます。 まともな精神状態をキープするのって、どうしてこんなに難しいんだろう。仕事に行く、食事を作るなど、生活の基盤となる様々なことがままならない状態が続くと、人ってこんなに心が荒むんだって、この身をもって実感している。人と建設的なコミュニケーションをとる余裕もないし、ましてや、溢れ出す思考を…
長期滞在者
小説を読みながら、音楽を聞きながら、映画を見ながら、「まるで自分のための作品のようだ」と感じる瞬間がある。 特に孤独を感じているような時、そんな作品に出合うと、固く閉ざされていた扉が開いたような気持ちになる。見つけたのは自分なのに、世界のほうが見つけてくれたような気持ちになる。 スペインのブロガー、マイク・ライトウッドさんが書いた小説『ぼくを燃やす炎』は、多くのLGBTにとってそんな気持ちを与えて…
長期滞在者
このアパートメントでの連載でlynch.の曲で言葉を巡らせるのは2回目である。 2016年1月16日に公開した「EVOKE」。 この文章を書き上げた時、私はとても怖かった。公開まで怯えていた。 果たしてこの想いが伝わるだろうか? たった1人にだけ、事前に読んでもらった。 「どう思う?」と尋ねる私に友人の彼はすぐにこう言った。 「大丈夫ですよ。これは伝わりますよ」と。 そうして公開した記事は、多く…
長期滞在者
夜、港に近い工業地帯を自転車走行中、地べたに羽を広げて貼りついていたアオスジアゲハの真上を轢いてしまった。 ライトで視界に入ったときにはもう避けられなかった。 むごいことをしてしまったと、引き返してみたら、蝶形に広がったゴムカスの上に青い紙くずがへばりついていただけだった。 ・・・・・・ アオスジアゲハが好きだ。 ジャコウアゲハ等クロアゲハ系も好きだが、なぜかよく見かけるし、しかも死に際によく会う…