長期滞在者
さて、そろそろ夏である。 夏であるからにはもうすぐ休みを取り海に行くであろう。 おそらくそれは南仏あたりであったら素晴らしいであろう。 そして海パン一丁で海辺に寝そべったり、 そこに大きなタオルを羽織ったくらいの格好で海岸を徘徊したりするであろう。 今ちょうどそのための旅行計画などを立てているところなのだが、 特にそういったビーチ関連の状況を想定するたびに 前回取り上げた問題が心に引っかかるように…
長期滞在者
4月、わたしは小さな選択をした。ずっとやりたいと思ったことに、挑戦しないという選択だ。 挑戦をしないというのは、諦めのようでもあるし、成長を拒むような行為に思えるだろう。だけど、自分ときちんと向き合ったときに、今が挑戦のタイミングではないことは、自分自身がなによりも理解していた。今のわたしに必要なのは、新しい挑戦でなくて、今の自分の置かれている状況で、いかに健やかに生きていくかということだ。 わた…
長期滞在者
街に声を響かせるということは初めての経験だった。 2018年6月16日。 UNHCR駐日事務所、国連UNHCR協会主催「世界難民の日」 ソーシャル・アクション in 渋谷 #難民とともに。 6月20日の世界難民の日を前に、渋谷駅ハチ公前広場に、難民支援の現場でこれから使われる予定の最新型テントを設置。 テントの中に入って、避難生活を疑似体験することで難民について知る機会を設け、 オンライン署名や寄…
長期滞在者
ガードレールに挟まれた狭い歩道を通ってゆるい坂を登る。 左側に立つ電燈を過ぎると、自分の乗る自転車の影が右側のガードレール上に突然出現し、俊敏な黒い犬のように前方に駆け出して溶ける。 坂を登りきるまでに3つある電燈が、3匹の黒犬を走らせる。 毎夜通る坂道、毎夜見るガードレールだが、わかってはいても黒い犬の出現にはぞくぞくする。 昔読んだ漫画に出てきた、攻撃用に訓練された犬は世界最強だ、なんていうセ…
長期滞在者
このところ、ギャラリーに立ち寄る外国人の旅行者と思われる方々が目立ってきました。そしてリピーターになってくれる方が、家族やお友達を連れて再び来てくれたりすることが、徐々に増えてきています。 ギャラリーとしてのインバウンド対策、ということについて、今まで同業の誰ともそういう話題になったことがないのですが、日頃から備えておくことの一つとして、もっとも大事なのが、その場で持ち帰ることができる支度をしてお…
長期滞在者
「読むこと」というのは孤独な営みであると思う。たぶん、そうであるから、わたしは読むことが大好きだ。 本を広げて、目のなかにとびこんでくる活字を追っていくうちに、頭のなかにはだんだん別な世界ができあがっていく。電車に揺られていようと、ロビーで飛行機を待っていようと、心地よい自宅でくつろいでいようと、本を読んでいるあいだ、想像力は現実の世界を離れて、もうひとつの別な物語を生きている。わたしの実体はひと…
長期滞在者
台湾へ旅行したとき、友人がインスタントカメラをくれた。古道具屋で見つけたという古いカメラを手にしたわたしたちは、こどもの遊び相手のお人形みたいにいつでもカメラを持ち歩き、いつでも誰かが誰かを撮った。旅先から自分の日常に戻り、わくわくしながら現像に出したら、あまりに古いそのカメラにはほとんど何にも写っていなくって、茶色いテキスタイルみたいな、だるんと長いネガだけが戻ってきてガッカリしたのだった。しか…
長期滞在者
特別な経験よりも何気ない日常に光をあてることに、私は面白さを感じます。 私の住む家は20代後半から30代半ばの男女が5人住んでいます。 それぞれが個室を持ち、何か困ったことがあれば話し合って暮らしています。 この連載では家で起きたことを日記形式で綴っていきます。 こんな世の中にこんな生活があるのだと、愉快に思っていただけたら幸いです。 ※住人のプライバシーを守るため、名前は仮名を使用しています。 …
長期滞在者
先月初め、娘の誕生日を彼女より少し年上の息子と 彼らの母親と一緒に祝うためにヘルシンキに一週間ほど滞在した。 到着して数日間はまだ5月初めとしては異例の寒さが続いていて、 天気は良いのだけどダッフルコートが手放せなかった。 彼らの住んでいるところから徒歩20分くらいのところに とても設備の整った室内プールがあるので、 ヘルシンキに行くときは必ず何度か泳ぎに行くことにしている。 そこは10レーンもあ…
長期滞在者
「うーん、様子を見るしかないですねえ。どうしても体調が優れないようであれば、また相談してください。」 定期検診で、久々に会った主治医は淡々とそう言った。診察票を挟んだピンクのファイルを手にとって、扉に手をかけたら、後ろからお大事に、と声がした。(お大事に、か…) 診察室を出るときの扉が嫌に重たかった。顔を上げるとパートナーが心配そうな顔で私をみていて、その瞬間、緊張が解けたのか、いろんな感情が湧き…
長期滞在者
自分がゲイであることは、なるべく早めに言うようにしている。単に「彼女はいる?」「好きなタイプは?」といった質問に嘘をつき続けるのが負担なのと、時間を重ねるほど言い出しにくくなってしまうから、そうしている。だからその人と今後も関係が続いていきそうか、偏見が少なそうかを確かめてから言うし、言わないこともある。 言った時には、その人にとって「生まれてはじめて、現実世界で出会った同性愛者」になることもある…
長期滞在者
泣いている時に、「今から行く」と言ってくれる人がいることにどれだけ救われているか。 私が泣いている理由は、世の中の差別に対してだった。 明らかにそれは大切な仲間の人権を侵している。 その疑問を表した時に、 「差別ではないでしょう」、「問題があるとは思えない」と、投げかけられた言葉の前に立ち尽くした。 「この表現は人を傷つけているのではないでしょうか?」と問いかけた言葉が、 あっという間に消えていく…