長期滞在者
新宿で生まれ育った私には、一人になりたい時に必ず行く、新宿高層ビル街のふもとがある。 ある夜、一人で想いを巡らせたくてその場に座り込んでいた時に、突然降ってきた大粒の雨。 雨が、思考の流れも、時間をも遮っていった。 自分が無になっていくような感覚。 自分がこうしたいという気持ちよりも、相手の気持ちを優先してしまう。 その人が幸せであるために、自分がどう言葉を返すのが良いか。 自分の中でおしころして…
長期滞在者
水炊きの豆腐を取り皿の中で冷ますために四つ割りにしながら思い出したのは、たぶん小学校低学年か中学年の頃のこと。 同じように熱い豆腐を箸で切りわけ、冷ましていた。 豆腐は丸ままにしておくよりもいくつかに割っておいた方が早く冷める、という小学生なりの経験により、なんとなくそうしていたのだろうが、それを見ていた父が 「どうして豆腐は割ったら早く冷めると思う?」 と聞いてきた。 「知らない」 「割ったら豆…
長期滞在者
今年の冬の東京は、よく晴れた日が続いています。新しい仕事場の窓から毎日明るい陽射しが入り込んできてとても気持ちがよく、朝早く出勤して午前中の営業時間前に色々仕事を片付けることが多くなりました。窓の外は、最近出来たばかりと思われる高層マンションが数多く立ち並び、日曜日の朝などは、一斉に洗濯物や布団を干す様子が見られます。 3年くらい前から、日本橋界隈は急激に居住人口が増えているのだそうで、ここに来る…
長期滞在者
渋谷の街中をぶらりとしていると、キャッキャと甲高い声でおしゃべりしながら、移動する女子大生らしき子たちが4人で歩いている。 自分が学生のときを思い出した。そういえば、沖縄という田舎から上京したのもあって、渋谷というのは行くのにエネルギーがいる場所なんだけど、少しテンションがあがる街だった。 そして、さきほどの女子大生たちも、ぼくらから見ればただ「遊んでいる」ように見えるのだが、彼女たちからすれば、…
長期滞在者
ちょうど一年前と同じく、今、日本に滞在している。 ここ数年、身に染みるように実感していることなのだけど、 日光を浴びる時間というのは本当に大切だ。 ベルギー辺りで極端に日照時間が減る11月頃から、 体調が悪くなり、活気も失せて行くのが毎年恒例のようになってしまった。 そういう場所に住んでいると、そういう状態が普通なのだと思ってしまうのだけど、 ぼくの場合、それを放置しているとまたうつ病になってしま…
長期滞在者
バーカウンターのなかにいると、常連さんから一見さんまで、日々、否応がなしに、さまざなな人と接することなる。 すると、お酒の注文の仕方や飲み方、好みのカクテル、どんな人を連れてくるのか、などの店内の立ち振舞が、その人の趣味嗜好だったり、人間性を知るためのヒントだと気づく。自分のなかだけの法則が見つかる。 例えば、バーカウンターに一人で座って、スコッチなどで通なウィスキーを、ストレートで飲むような女性…
長期滞在者
「不幸中の幸い」って、実際によく起きることだと思う。生きていると、そりゃあ悪いことも起きるし、嫌なことも多いんだけれど、今、この段階でわかってよかったということは、やっぱりある。大抵は、どこかに予感があるわけだし、そういうサインは見逃さないようにしないとな、と自戒を込めて思う。 新しい一年のはじめの月は、忙しいやら、大変やら、ほんとうにドタバタした。仕事でも、私生活でも、ジェットコースターのようだ…
長期滞在者
自分の気持ちを押し込める癖がある。解決していないことでも自分が我慢してなんとかなるなら口を噤む、ということが多いし、人に相談するのも苦手だから、溜め込んでしまう。 少し前、うつ病の自己診断を1日に何度もやって過ごしていた時期があった。 「いつでも憂鬱だ」「眠れない」など、うつ病の兆候を示す項目が20個ほど並んでいて、直近の自分と照らし合わせて程度や症状の有無をチェックしていく、あれである。グーグル…
長期滞在者
最近、フィルムを使って撮ることが増えている。 仕事 (営業写真館のカメラマン兼レタッチャー) ではもう10年以上デジタルカメラを使っているけれど、仕事ではない「自分の」写真にデジタルを使い始めたのはここ5年くらい。フィルムを併用しつつも、最近はデジタル比率がぐんと増していた。 デジタルというのは簡便だと考えられがちだけれど、機種ごとの使いこなしや絵柄の癖に慣れるまで時間がかかるし、プリントにも銀塩…
長期滞在者
馬喰横山駅で降りて、仕事場へ向かう階段を上っていくと、東京の地下鉄の駅では珍しく立ち喰いそば屋のダシの良い香りが上から降りてきます。 早い、安い、うまいは、商売人の街は基本中の基本。新宿とは随分とちがう土地にやってきたな、と思った瞬間でした。 ルーニィは、年末年始のうちに無事に荷物の引越しを済ませ、小伝馬町へやってきました。 オープン当日、もうこの先の人生でこれ以上ないというくらい、たくさんのお花…
長期滞在者
2015年7月 夕方、いわき平のデニーズ。 黒づくめのスーツにサイドを刈り込んだ髪型、茶色の先がとがった革靴の男性4名が喫煙テーブルの奥に陣取り、ひとりが携帯で電話の向こうのだれかに大声で話す。男性の声はいやでも私の耳に入り、「金貸してるのはこっちです」「30万て金額じゃない」「もう4年経って厳しいも何もないでしょう」と途切れに聞こえて、混んでいる時間帯なのに彼らのテーブルの周りにはだれも座らず、…
長期滞在者
悲しみの分量を多く抱えてしまった2016年だったが、 その終わりは、温かい気持ちになれる仕事の現場が続いた。 図書館で10代の子達と本について語る新春ラジオ特番の収録を行ったり、 ディズニーの世界に包まれた場所で、クリスマスのゴスペルコンサートの司会を務めたり。 こういうことをしている自分が好きだと思える時間を毎日過ごしているうちに、新年を迎えた。 「自分がどういう考えの人間に共感するのかというこ…