入居者名・記事名・タグで
検索できます。

3F/長期滞在者&more

いいね、を行動で示す

長期滞在者

今月からデジタル印刷機を使った写真集や画集の出版と販売を行うことにしました。
版を用いずに、1冊単位で制作できるシステムは以前から知られていましたが、ここ数年で印刷品質の向上に加え、コストが大幅に下がりました。巷に出回っているフォトブックサービスも同じ印刷システムを使っています。

最大の特徴は、必要な分だけ印刷して、足りなくなったらその都度制作することができる点です。

このシステムを活用してルーニィで何ができるのかを考えてみました。

1、写真集を作りたいという需要はとても大きなものがあるが、そういう需要に単純に応える印刷製本サービスのようなものはやらない。

2、つまり、作りたい欲求を満たす「作ってあげる」型ではなく、作ったものを売るための備えまで並行して準備されている「作品を届ける」システムでありたい。

3、会場での販売を目的に一定部数制作するが、会期終了までになるべく売り切る量だけを制作することで、作家さんが本来負担するべき書籍の制作代金の実費を限りなくゼロにすることができる。同時に任意で設定した売り上げマージンは売れた冊数分全額作家さんにお支払いする。

4、年間で開催した展覧会の中から特に印象に残る作品のダイジェストを収録したイヤーブックを定期的に刊行することもできる。近年増えてきた海外からの旅行者向けのカタログとして頒布して彼らが自国に持ち帰ることで、新しい顧客の開拓にも繋げることができる。

5、無駄を省くため、ほかの書店への卸や、アマゾンなどへの出店は行わない。ギャラリーの店頭とオンラインショップ、ならびに著者の手売りのみとする。

6、昨今、凝った装丁によるブツとしての魅力を高めた本作りに関心が集まっているのも事実だが、あくまで基本に忠実で、作家さんのイメージの保管場所の枠組から逸脱しない。

7、小回りの効くシステムの特徴を最大限活かすため、良質な内容の本をコンスタントに制作する。

主にこんなことを考えながら、今月はじめての本を作りました。これからほぼ毎月、新しい本作りを進めていきます。

自分が良いと思った展覧会でその気持ちを強く作家さんに表したいと思うとき、日頃おつきあいのある仲間の新たな試みに敬意を表す時、何か形のあるものを買うことで、その気持ちを伝える手段の一つになればと思っています。これまでは、数万円が相場の展示作品か、100円の絵葉書くらいしかありませんでした。
とはいえ、毎回色々な作品を購入するのは、現実的ではありませんし、絵葉書では、気持ちを表すには軽すぎます。せめて軽やかな体裁の図録を作ろうと思うと、従来のシステムでは、必要な冊数の何倍も作らねばならず、費用ばかりかその保管場所も大変な苦労があります。
作家さんなら誰でも一瞬躊躇せざるを得ない問題を、作品をお預かりするギャラリーがサポートできたら、という思いはずっと前から持っていました。

本の良いところは、展示が終わった後の記録集になることです。会期が終わった後も、継続してギャラリーのブックスペースで閲覧できるようにすれば、展示を見逃したお客様も新しくその作家さんのお客様になってくれる確率は格段に上がります。自前のネットショップを通じて東京以外の方々へも作品をお届けすることもできますし、気に入ったイメージがあれば、本のページをギャラリーに知らせてくれれば、オリジナルの作品の注文も簡単にできます。

いざ作った本を並べてみると、こちらの予想以上の反応でした。売り上げ予想を低めにしすぎて会期中に増刷を2度したのは、嬉しい誤算でした。「いいね」の気持ちを行動で示すことは、応援してる作家さんの次の展開に間違いなく後押しになります。

新しい作家さんとの繋がり方をこれから丁寧に育てていきたいと思っています。

6009A626-154D-4A2B-B869-97134913D603

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

トップへ戻る トップへ戻る トップへ戻る