長期滞在者
2013.03.11 10:00頃に目が覚める。 今日は久しぶりに部屋でゆっくりしようかと思っていたけれど、 ふと思い立って1人で海に行くことにした。 電車を乗り継いで、13:30くらいに茅ヶ崎に到着。 安かったので、途中の八百屋さんでイチゴを買う。 コンビニで買ったおにぎりは海に着くまでに食べてしまった。 1人だし、トンビこわいし。 着いてすぐに靴を脱ぐ。砂はあたたか。 もう砂のあ…
長期滞在者
今日は久々に、日が射している。ここしばらく、雨や雪で、空は濁った灰色のままだったから、このまぶしい暖かさが心地いい。冬場の雨、雪は寒さを増幅させるけれど、乾燥を和らげてくれるので嫌いではない。だけど、そのぐずぐずした天気が続くと、どうしても日の光が恋しくなるし、今日のような寒い日に、窓辺のあたたかな日差しを浴びていると、まだ来ぬ春への期待や、恋しさで胸が焦がれてしまうのも無理はない。 ふと、ブ…
スタッフの部屋
人生って、何がどうなるのかわからないな、と、そんな事を思わずにはいられない数年前から、今があります。 わたしは浅田泉として去年こちらのアパートメントに住んでいた者です。 改めまして、こんばんは。 浅田泉としてではなく、藤田莉江として、このアパートメントの運営のお手伝いをさせていただくことになりました。 出来る事は少ないかも知れませんが、この場所を大好きに思うひとりとして、携われること、嬉しく思いま…
管理人室の往復書簡
かおちゃんや。 こんにちは。 アパートメントの寅さんこと、はるえです。 いやほんとに書けなかったね。 最後に書いたのはいつぐらい前かなといま確認したら。去年の5月。9ヶ月。半年くらいかとばかり思っていた。 かおちゃん、年があけて今日は、1月16日だ。 そう、わたしたちが東京のカフェで会った日だ。アパートメントをつくろうとなった日だ。 記念日関係、自分の恋人の誕生日や別れた日とかおいっこの誕生日、高…
長期滞在者
昨年末、新幹線でげろげろ酔いながら、家族の暮す群馬へと帰省した。群馬の土地を踏むのは、一年ぶりだった。まず、大学時代の恩師と品川で会ってから、混雑した電車に飛び込んだ。見慣れていたはずの東京の雑踏、人の群れ。何度利用しても好きになれない赤羽駅で乗り換えて、いつもの二倍、三倍の人でごったがえしていた本庄駅でむかえの車を待った。駅前のミスドがなくなっていた。 もう長く顔を見ていなかった父方の祖父母…
長期滞在者
今日、ぼくの中の止まってしまっていた時計の針が静かに、だけど確実に動き出した。 五年前のあの日、針が動きを止めたあの場所で。 ひさしぶりに行ったあの場所は、これから起こることへの期待とあたたかで楽しげな笑顔に溢れていた。 その瞬間はセンセーショナルに、ある意味予定調和的に始まった。 五年前と何も変わらない、でも五年間確かにいろいろな道を踏みしめてきた彼らがそこに立っていた。 懐かしいあの音、あの笑…
スタッフの部屋
「支援という仕事をください。」 宮城県気仙沼市から「復興印刷隊」を立ち上げた有限会社 阿部印刷さんのサイトにこう書いてあります。 ここを知ったのは、アパートメントにコラムを寄せてくださったフリーランスライターの畠山理仁さんのtwitterからでした。 2011年3月11日、気仙沼市にかまえる会社で被災した阿部印刷の阿部孝市さんは、その会社に関わる命綱すべてを津波で失いました。 + 「津波は1階事務…
長期滞在者
へジナウドの息子さんが癌である、そういう話が飛び交ったのはある朝のことだ。事務員さんが話しているのを盗み聞きしてしまった学生がいて、その話は、乾いた土に降る雨のように、あっという間にクラス中に広まった。友達のいなかったわたしでさえ、それを耳にしていた。あまりにはやく広まったこの話が真実なのか、ただの噂なのか、誰しもが気にしてた。校長に問いつめてみよう、と言う者もいた。だけど、クラスのリーダー的な…
長期滞在者
人間には理解できないような不思議な生活史をもった生き物がたくさんいる。 ウナギはマリアナ海嶺の深い海で生まれたあと、ひらひらと葉っぱみたいな透明の体ではるばる日本(をはじめとする東南アジアの国々)まで、徐々に細いウナギの形に姿を変えながらやってくる。日本に着いたら川をさかのぼり、時には陸を移動して川から孤立した山中の沼にまで棲みついたりして5年〜10年。時期がくるとまた遥か遠いマリアナ海嶺へ、産卵…
長期滞在者
沈黙が、ひとを繋ぐことがある。語らなくても、なにかが深く互いのこころに染み込んで、言葉にしなくても通じ合う。沈黙が放つ閃光は、あまりにも微かで、あまりにも儚い光だから、見逃してしまうことも多い。だけど、なにかの拍子に、他人同士が隣り合って、肩を並べて、互いの痛みを分かち合う、そんな深い関係になれもする。わたしが予備校生だったころ、そんな経験をした。 ヘジナウドは、カエターノ・ヴェローゾによ…
長期滞在者
いまのわたしには、足りないものがある。ことばも、気遣いも、なにも必要のない、まっしろになれる時間を、いつのまにかどこかに置き忘れてきたらしい。Guarulhosを離陸した瞬間、空からどこかの海に落っことしてしまったのかもしれない。いまは、その術さえおぼろげで、どうやってまっしろになっていたろう、って、そんなことしか考えられない。絡まり合った、真っ黒い糸の塊、ぐちゃぐちゃで、糸端がどこにあるのかわ…
長期滞在者
たくさんの人がここに話に来ていた。 旧盆の頃に誰と何を、と考える。 当たり前なんだけど、この海はここに住む人たちの海なんだという事。 魂とか心が由来する場所なんだと思う。 流されてしまった家の横に、新しい営みが繰り返されている。 はるえさんが折っていた折り紙の鶴を僕は胸ポケットに忍ばせて 帰り際に、この海に流してきた。