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3F/長期滞在者&more

恥ずかしい事を思い出した時の独り言ってどうしてあんなに大きな声が出てしまうんだろ。

長期滞在者

19

ゆうやけビルジングに映る私のまわりには
柔らかい泡ぶくが生まれては溶けていく
足元から大地の熱気を包んで皮膚をなぞり
指のまたを這い上がって
頬をつたいのぼって 頭をかき回してしがみつく

らせんはきらい

そう囁いて鼓膜をびるびる震わさして
ひとしきり三半規管を縦横無尽に跳ね回って暴れると
小さいうめき声をあげて舞い上がる
そうすると瞬く間に泡ぶくは飛行魚に喰われて溶けてしまうのだ

それは誰かが誰かを忘れてしまった刹那

朱い美を潰して歩け 
瞳の底まで染め上げるように

.
.
.

22

あかるく
ずうずうしく
ちょっと
せつなく

古林 希望

古林 希望

絵描き

私が作品を制作するあたって 
もっとも意識しているのは「重なり」の作業です。

鉛筆で点を打ったモノクロの世界、意識と無意識の間で滲み 撥ね 広がっていく色彩の世界、破いて捲った和紙の穴が膨らみ交差する世界、上辺を金色の連なりが交差し 漂う それぞれテクスチャの違う世界が表からも裏からも幾重にも重なり、層となり、ひとつの作品を形作っています。

私たちはみんな同じひとつの人間という「もの」であるにすぎず、表面から見えるものはさほどの違いはありません。
「個」の存在に導くのは 私たちひとりひとりが経験してきた数え切れない「こと」を「あいだ」がつなぎ 内包し 重なりあうことで「個」の存在が導かれるのだと思います。

私の作品は一本の木のようなものです。
ただし木の幹の太さや 生い茂る緑 そこに集う鳥たちを見てほしいのではありません。その木の年輪を、木の内側の重なりを感じて欲しいのです。

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