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002 つむじ

ギャラリー・カラバコ

ポストに入っていた鍵を握りしめて、部屋を出る。
風がわたしの息をふさぐ。
路地の灯りに照らされた私の影と、街路樹の影が、長く道の先で交わりながら踊る。
あ、そうか。
今日は満月なんだな。
満月のひかりは、満月の前の日や満月の次の日のひかりと、どうしてこんなにも存在感が違うのだろう。

「ギャラリー・カラバコ」の扉をそっと開く。

そこには、前回の『縫い目』とは違う作品がかかっていた。


「つむじ」

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絵: 古林希望

つむじ

文: カマウチヒデキ

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共通のタイトルだけを手がかりに2人の作家が絵と小説を別々に制作し、掛け合わせていく企画「ギャラリー・カラバコ」。
また来月のオープンをお楽しみに。

Exposition Past              :Exposition Upcoming
01 桟橋                  :Getting Ready….
02 物差し
03 帯
04 時化
05 吃り
06 影絵
07 隠者
08 ウミネコ
09 うぶすな
10 蟹
「ギャラリー・カラバコ」あとがき対談 2017

古林 希望

古林 希望

絵描き

私が作品を制作するあたって 
もっとも意識しているのは「重なり」の作業です。

鉛筆で点を打ったモノクロの世界、意識と無意識の間で滲み 撥ね 広がっていく色彩の世界、破いて捲った和紙の穴が膨らみ交差する世界、上辺を金色の連なりが交差し 漂う それぞれテクスチャの違う世界が表からも裏からも幾重にも重なり、層となり、ひとつの作品を形作っています。

私たちはみんな同じひとつの人間という「もの」であるにすぎず、表面から見えるものはさほどの違いはありません。
「個」の存在に導くのは 私たちひとりひとりが経験してきた数え切れない「こと」を「あいだ」がつなぎ 内包し 重なりあうことで「個」の存在が導かれるのだと思います。

私の作品は一本の木のようなものです。
ただし木の幹の太さや 生い茂る緑 そこに集う鳥たちを見てほしいのではありません。その木の年輪を、木の内側の重なりを感じて欲しいのです。

カマウチヒデキ

カマウチヒデキ

写真を撮る人。200字小説を書く人。自転車が好きな人。

Reviewed by
朝弘 佳央理

タルコフスキーの『惑星ソラリス』という映画が好きだ。
ソラリスは惑星なのだけれど、ひとの思考をうつしとる。
かき混ぜられる海は、大きな羊水のよう。

つむじ、って体にとって何なんだろう?
波?
何かが噴出する場所?もしくは埋没。
からだぜんたいの、指紋のようなものだろうか。
それは地図のようなもの??

希望さんの絵も、カマウチさんの文章も、この世とどこかの境界線にいつもあるような気がする。
そのふたつが接し、私たちはその境界線に立たされる。

また来月も、満月の日に。

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