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001 縫い目

ギャラリー・カラバコ

ある時ポストにこの部屋の地図と鍵が入っていた。
メッセージはなし。
ただ、「ギャラリー・カラバコ」 と。
宛名間違いだろうか? と封筒をじっと見てみたけれど、そこには確かにわたしの名前がある。
差出人の名前はなし。

ただのいたずらかもしれないけれど面白そう。
絵を見るのは嫌いじゃないし。
そう思って地図を辿ってみた。

とあるアパートの一角にそのギャラリーはあった。
鍵を開けると、ギャラリーらしい真っ白な壁に、額縁だけが無造作に並んでいる。
額縁を裏返すと、かすかに刻印された文字が読み取れる。
……写…館……写真館。
かすかに海の香りを鼻が捉えたような気がして振り向くと、
あ、額縁だけじゃなかった。
と気づく。

タイトルには 「縫い目」 とあった。


「縫い目」

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絵: 古林希望

縫い目2_2

文: カマウチヒデキ

ーーーー

共通のタイトルだけを手がかりに2人の作家が絵と小説を別々に制作し、掛け合わせていく企画「ギャラリー・カラバコ」。
ギャラリーの扉が半年ぶりに開きました。
鍵は無事に引き継がれたようです。

Exposition Past              :Exposition Upcoming
01 桟橋                  :Getting Ready….
02 物差し
03 帯
04 時化
05 吃り
06 影絵
07 隠者
08 ウミネコ
09 うぶすな
10 蟹
「ギャラリー・カラバコ」あとがき対談 2017

古林 希望

古林 希望

絵描き

私が作品を制作するあたって 
もっとも意識しているのは「重なり」の作業です。

鉛筆で点を打ったモノクロの世界、意識と無意識の間で滲み 撥ね 広がっていく色彩の世界、破いて捲った和紙の穴が膨らみ交差する世界、上辺を金色の連なりが交差し 漂う それぞれテクスチャの違う世界が表からも裏からも幾重にも重なり、層となり、ひとつの作品を形作っています。

私たちはみんな同じひとつの人間という「もの」であるにすぎず、表面から見えるものはさほどの違いはありません。
「個」の存在に導くのは 私たちひとりひとりが経験してきた数え切れない「こと」を「あいだ」がつなぎ 内包し 重なりあうことで「個」の存在が導かれるのだと思います。

私の作品は一本の木のようなものです。
ただし木の幹の太さや 生い茂る緑 そこに集う鳥たちを見てほしいのではありません。その木の年輪を、木の内側の重なりを感じて欲しいのです。

カマウチヒデキ

カマウチヒデキ

写真を撮る人。200字小説を書く人。自転車が好きな人。

Reviewed by
朝弘 佳央理

「ギャラリー・カラバコ」は2016年に始まりました。
管理人の鈴木悠平がタイトルを考え、そのタイトルから古林希望さんが絵を、カマウチヒデキさんが200字小説を書くというもの。
なかだちをするのはタイトルだけで、ふたりの作家の間に前もってのすり合わせはありません。
遠く離れたことをお互いが語り、それが同じ空間の中で融和することもあれば、
あるポイントが偶然に共有されていることに気づいてハッとするような瞬間もあったりして、
とても刺激的な展示でした。
ぜひ、前回の全10回と、それからあとがきも併せて読んでみてください。
(本文の一番下にリンクしてあります)

今回はタイトルを管理人の朝弘佳央理が考えました。
おふたりの作品にはどこか、この世ならぬものというか、世界の縁(へり)や境目に見るものをぐっと引っ張ってゆく重力があるような気がしています。
タイトルをたよりに二人が生み出した重力は、おとずれるみなさんをどこに連れてゆくのか。
とても楽しみです。

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