長期滞在者
どうしても今の自分を肯定できないときは、知人の結婚式に出席するのがいい。 それは何もかも肯定しようとする空気が満ち満ちている場所。 もしくは、知人のお葬式に参列するのがいい。 それはこの世に残されたものをすべからく肯定しようとする場所。 事実がどうであれ、喜びと悲しみという違いはあれ、どちらもしあわせの在るべきカタチをイメージする場所。 あまのじゃくだろうがひねくれていようが、結局なんとなく心動か…
長期滞在者
友人からの電話を受けて、改めて考えたことがある。ひとは、どれくらい痛みを共有できるのだろうか。自分が経験していないことの痛みを、どれくらい感じて、察してあげられるのだろうか。 わたしも、悩んでいる人に言ってしまうことがあるけれど、 だいじょうぶだよ、 泣かなくていいよ、 でも、よくよく考えたら、そんなこと、どの口が言えるんだろう。 大学時代、「あなたのこと、わたしは理解しているよ」という…
スタッフの部屋
男の子を育てたことがないし、 兄がいるけれど、 歳も離れていたので あまり一緒には遊ばなかったし。 おまけに私は、近所の女の子とばかり遊んでいて、 こういった生き物と接する場といえば、 理科の時間くらいで。 どちらかというと、 虫が苦手で触れないような子供だった。 帰宅すると、 セイヤくんがバケツを持って 走り回っていた。 セイヤくんは近所の一年生で、 時々、長女が一緒に遊んでいる子。 もちろん、…
長期滞在者
サンパウロとカンピナスのちょうど中間くらいに、Jundiaíという街がある。ブラジルの中でも、人々の暮らしが豊かだと言われる街で、ユークリッドは、その街の中心街に住んでいた。 ユークリッドというのは、わたしの叔父のことだ。叔父、と言っても血がつながっているわけでもなく、親戚でもない。彼は、わたしの実の叔母の親友で、わたしにとっては実のおじたちよりも、ずっと身近で大切な人物だ。そのせいか、わたし…
長期滞在者
先日、カフェの開店準備をしていたときのことです。キッチンでの作業中、ふと顔をあげると、庭の木の周りを大きな蝶が飛びまわっているのが見えました。思わず、手が止まり、その蝶を眺めてしまいました。あたたかくなったのだなぁ、と息をついたとき、大きな渦に飲まれたような、ぐるんと目がまわるような感覚に襲われました。はぁ、っと息を深く吸いこむと、ぱっとまわりが明るくなった。気づけばそこは、わたしの生まれ故郷。…
管理人室の往復書簡
かおりさんへ まあ、相変わらず道は見つからず、迷子のままの私です。 なにを見ても言っても感じても、そこにある事実の前に最後、自分はからっぽになる。 でもね、このままでいいや、からっぽのままでいいや、どうしたって満ちることはないし、ならば空虚のなかに身を投じてその後のことはその時に考えようと思っているよ。 自分がからっぽだと自覚できるのは、しんどいがしかし、いいことかもしれない。 過去に重ねてきたも…
管理人室の往復書簡
かおりさん 今日のいわきは霧雨で、霧吹きで顔を冷やされているようで、いい気分です。 21日に、夜ノ森(よのもり)という地区に行ってきたよ。 そこは福島の双葉郡、富岡町にある地区。 とおり沿いに桜のトンネルができる名所で、春になると本当に多くの人々がそこを訪れていた。 原発事故のあった福島第一原発からの距離は7~8キロくらいで、今は警戒区域になっている。 桜というか、「場所」って、ひとりひとり、さま…
管理人室の往復書簡
かおりさん 東京はもう桜が散る頃かな。 いわきは、今日現在つぼみの時期。ふくらんでいるし、桜って「限界!」ってとこまでがまんして、ぽんと咲くから、きっともう満開の時期は近い。 むかし聞いた話で、へえ知らなかった!て思ったのがね、桜はすべての樹がおなじDNAなんだよって話。 1本の樹からはじまって、その樹から枝を分けて全国に広がっていったんだって話。 DNAがおなじだから、おなじ場所にいる桜はおなじ…
長期滞在者
去年の8月、思いがけないことが起きた。 パスポートを更新するために、五反田にある在日ブラジル総領事館に行った時のことです。もちろん、そこはまぎれもなく日本なのだけれど、総領事館への階段を一歩一歩踏み出して行くうちに、どうやらここは異国の雰囲気。わたしには、なじみの空気感、だけれども、ピンと張りつめるような緊張感に襲われる。急に喉が渇く。 階段という入国審査をこえると、開け放たれた入り口の扉の…
管理人室の往復書簡
かおりさん もうすっかり3月も終わりのほうになってしまっていた。 光の早さで時は経ってしまうね。 なんかね。 今年の3月11日が来るにあたり、なんというか、少しあの時の感情とか起こっていたことを必要以上に思い出してしまい、歯を食い縛っていた自分がいて、肩がこっちゃったよ。 同じことは二度と起こらないけれど、同じような事象があるのではないか、もしそれが起きた時に自分は、積み重ねたものをフル装備して冷…
管理人室の往復書簡
かおりさん 先日はどうもありがとう。 ギャラリーのタナカさんや、清史さん、そして森山隊長とも逢えたし、嬉しかったし、そしてさ、緊張した。 なんでこうも、ただ逢いたかったひとに逢いに行っているのに、嬉しいのに、話せばいいのに、固まるのだろうか。 おとなになればなるほど、緊張の度合いが>(だいなり)になっている気がしている。 シンプルに「わーい」って思っているのになあ! 展示されていた写真のこと、うま…
管理人室の往復書簡
かおりさん こちらもすっかり遅くなってしまってごめんね。 なんか、紙吹雪みたいな毎日です。ちりじりに広がっては落ちていく。 集めきれないものもあって、走って拾いに行くみたいな。で拾えないの!なにこれ!とか思ってる。 すべてが手に入るわけは、ないのにね。 フィルムで写真を撮ってみたいな。今度ね、ホルガを友だちに貸してもらうことになっていて、それがすごく楽しみだったりする。 カメラのことはよくわからな…