それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
何かを綺麗だと感じて、それを伝えたいと心に浮かぶ人がいる。美しいと感じることをあなたに伝えたい、と思うことは愛に近いと言ってもいい。 そこまで考えて、ロシアの映像作家、ユーリ・ノルシュテインのアニメーション「霧につつまれたハリネズミ」が自然と思い出される。主人公のハリネズミ、ヨージックが森の仲良しのコグマに会いに霧の中を歩くあいだの出来事を10分ほどで描いたアニメーション。ヨージックとコグマは毎晩…
長期滞在者
カレーを作るときに味見をしながらスパイスを足していくのと同じように、暮らしにも刺激を足すことができるはずだと思う。どんな類の刺激であっても良いわけはなく、それはやはりカレーのように意外性があり、思わず微笑むようなものであってほしい。 最近の私は暮らしにより強い刺激を求めるようになっている。そしてそれだけでなく、より安らかな時間も求めている。 10月1日(月) 絹江ちゃんがカレーを作っていた。良い匂…
お直しカフェ
10月は関西にいた。私もだが、祖母があまり元気でないので、祖父母宅に入り浸って編み物でもしようかなと企んでの帰省だったが、急遽祖母は長期入院となり、編み物セット一式とおやつ、水筒にいれたお茶を持参して病院へお見舞いに通う日々となった。 10月17日 今日は祖母宅に寄って、棒針を探し出してから病院へ。足が不自由になってから、これまで祖母の城だった二階の部屋はどこも結構散らかってしまっていて、探すのに…
長期滞在者
先週末のこと、ベルギーの西端にあるトゥルネーという町で、日本関連のイベントに参加していた友人から連絡があり、その翌日に企画されていた茶道のデモンストレーションをやる予定だった人が急にキャンセルしてきたので、その穴埋めを頼まれた。キャンセルしたその人はぼくの知人でもある茶人なのだけど、ぼくは茶道なんてちゃんと学んだこともないし、そういうちゃんとした人の穴埋めなんてできないと最初は丁重にお断りした。そ…
メニハ ミエヌトモ
発酵生活の道にハマっていったのは 実は「自ら」というより娘の存在が大きい。 娘がいなかったら、発酵の世界にここまで入り込まなかったのかもしれない。 まるで「首根っこを掴まれてヒョイとこの世界に放り込まれた」、 どちらかと言えばそんな表現がぴったりだ。 不思議だけれど。 そもそも発酵との最初の出会いは 子育て中によく遊びに行っていた施設で天然酵母パンの教室があり、 しかもその告知のチラシには「酵母お…
長期滞在者
先日、体調が悪くて横になっていたとき、何気なく、スマホでfacebookを開いてみた。普段頻繁にチェックしているわけでもないし、ましてや投稿することも滅多にない。少し邪かもしれないけれど、facebookは一方的に近況報告ができるし、細かな説明が省けるから、遠くブラジルに暮らす家族への近況報告に都合がいいのだった。特に、対話を避けたいわたしにとっては、ちょうどいい距離感を維持できる方法なのだ。 …
長期滞在者
良いエッセイは、読むと読者の中に著者の像がしっかりと立ち上がってくる。 寺尾紗穂さんの『彗星の孤独』も、そんな一冊だった。 寺尾紗穂『彗星の孤独』(スタンド・ブックス) 『彗星の孤独』は音楽家であり、文筆家でもある寺尾さんが身の回りのことを綴ったエッセイ集だ。書き下ろしもたくさんあるけれど、これまでに雑誌や新聞で発表されたものや、自身のオフィシャルブログから収録されたものもある。書かれた時期も媒体…
ギャラリー・カラバコ
満月の夜を指折り数えるのが習慣になった。 いったい誰がこのギャラリーの鍵をわたしに届けているのかわからない。 待ち構えてそれを突き止めようとは思わない。 夜なのにそこここに影が落ちていて、私はそれをざぶざぶとかき分けながら進む。 ほとんど息を止めて、わたしはギャラリーの扉を開ける。 〈前回までの展示〉 『縫い目』 『つむじ』 『鏡』 『耳鳴り』 — 「植物園」 絵: 古林希望 文: カマウチヒデキ…
長期滞在者
秋という季節が苦手だ。 夏、それも焼けるように熱い夏が大好きなので、数ヶ月ぶりに長ズボンをはいたお盆過ぎの雨の日や、ふと、太陽の力が弱いなと感じる9月の終わり頃や、10月に入って、朝晩の冷気に長袖をひっぱりだしてくるときなんかに、ああ、今年の夏ももう終わってしまったか……と悲しい気分になってしまう。1ヶ月前はこの時刻でもまだ明るかったのに、と思い出して、暮れゆく灰色の陽を必死に目で追いながら、憂鬱…
長期滞在者
以前、このアパートメントに当番ノート第7期火曜日担当として書いていたときの文章に『摩擦係数 (μ) 』というのがあります。 皮膜一枚の内と外。 自分と世界を隔てるもののあやふやさ。 でも人はこの皮の中で生きて死んでいく。 物理的な意味でも、陳腐を承知で比喩的な意味でも、自分と世界の関わりはこの皮に生じる摩擦係数の物語である。 その摩擦を、親和を、振動を、温度変化を、痛覚を、愉楽を、違和感を。 それ…
メニハ ミエヌトモ
そう言えば、それは幼い頃から始まっていた。 確実に存在しながらも見えないものに常に興味を抱いていたと言っても過言ではない。 身近な所で言えば、風であったり音であったり。 風の姿は目には見えないけれど確実に存在する。 風は木々を揺らし、花を揺らし、これまた目には見えないけれど 確実に私に言葉にならない「何か」を囁き続けてくれていた。 子供の頃から本当に素敵だと思っていた。 音だってそうだ。 音の存在…
長期滞在者
働いていたカフェが閉店した。 駅前の美術館の三階にあって、一階には市民図書館、美術館内には市民ホールが併設されていたから、平日は、図書館に通っている人やご近所さんが、お昼やお茶休憩をしながら過ごし、休日は美術館に訪れる人たちが足を運んでくれたし、ホールでピアノ発表会や、あとはフラダンスやジャズの演奏会があるときには、ドレスやタキシードを着たこどもたちとかそれぞれの衣装を着た人たちで店内がいっぱいに…