それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
自分の年代の子が遊んでいる場所よりも年上の人たちが遊んでいる場所が好きだ。なぜだろう。自分が普段いる場所から逃避したい気持ちと、大人になる楽しみを見つけることに単純に魅了されるからかもしれない。 今では大人になったのでそういう場所はどんどん少なくなっているけど、高校生だった私にとってのそれは、新潟・東堀通にあるライブレストランだった。当時のオーナーが長い髪をポニーテールにした背の高い美しい女性だっ…
長期滞在者
斜面の両端に植わった桜は零れ落ちる寸前で、淡い桃色を鈴が鳴るように震わせていた。 淡く霞んだ海と空の境界線は曖昧で、途切れることなく船が行き来する。 大きなのと、小さなのと、右から、左から。 3艘の船が白い線を引いて交差するのを見つけて、満たされた気持ちになる。 理加さんは、やわらかな地面に種を蒔くみたいにして話す。 この日豊島へ行ったのは、踊る人でありからだのことを考える人でもある濱田陽平さんの…
風景のある図鑑
宇宙背景放射 : cosmic microwave background 宇宙背景放射、宇宙全体から放射されている電波です。 1964年、ペンジアスとウィルソンという二人の科学者が、電波望遠鏡で宇宙を飛んでいる電波を調べました。その時、宇宙のどの方向からも同じ一定の雑音が入ってくることに気がつきました。普通の雑音は、音源からの音が最も大きいものですが、この音は宇宙全体から一定の大きさで聞こえてくる…
Native Language
長期滞在者
うーむ。 この3月は何やらいろいろ収穫の多い月だった。 ような気がする。 以前、やっと成形が終わってホッとしている、と書いた、 やきもの仕事の本焼成が二月半ばすぎにやっと終わったのだけれど、 その直後にプチ・バーンアウト状態になったのもあり、 3月前半は2週間の休暇を取ることにした。 1月に訪れたフランスのメッスに再び向かい、 今回は坂本龍一x高谷史郎によるライブコンサートを鑑賞し、 その後で、も…
日本のヤバい女の子
【4月のヤバい女の子/ オタクとヤバい女の子】 ● 鬼を拝んだおばあさん ――――― 《 鬼を拝んだおばあさん》 昔々、今でいう富山県の辺りに一人のおばあさんが暮らしていた。 おばあさんは変わり者で、鬼を熱心に信仰していた。普通の人が「仏様…仏様…」と唱える場面で、一人だけ「鬼様…鬼様…」と祈るのである。 周囲の人々は皆「やばいって、やめなよ」ととめるが、聞く耳を持たない。結局、年を取って亡くなる…
長期滞在者
桜が咲いて、マグノリアの花も、もう散り始めた。精密検査にための通院ラッシュがひと段落して、普通に働く生活戻らないといけない。季節の変わり目だからなのか、気分が優れない日々が続いているものの、天気は日々好転しているので、うざうざした気持ちのままでいるのは正直勿体無い。だけど、濡れた顔のアンパンマンのように、力が出ないのも本当で、毎日今日も一日頑張らないといけないのかと、朝お布団の中でしばらく泣きそう…
長期滞在者
かつて自分を祝福し、遠くまで走らせてくれた言葉が、気付くと足かせになっている。進んで手にした役割だったはずが、いつの間にか呪いのように自分を苦しめている、そんなことがある。 言葉や肩書きはぼやけた自分にフレームを与えてくれるものだけど、そのフレームの居心地がよすぎると、「自分」は本当は流動的なものだということを忘れてしまう。そのことに息苦しさを覚える時にはすでに、フレームは簡単に壊せないほど固まっ…
長期滞在者
大阪・谷町8丁目交差点の坂の下にある伽奈泥庵(カナディアン)は、創業50年を超える、大阪の、いや多分日本の、エスニック喫茶の草分けである。 今でこそインド風の煮出したミルクティ「チャイ」は日本でも全国区の飲み物になっているが、最初にこれを日本に紹介したのは伽奈泥庵とカンテ・グランデ(大阪・中津)だった。 僕はカンテ・グランデの方で働いていたのだけれど、伽奈泥庵にもよく通った。 自分の成人式の日に、…
長期滞在者
2018年3月8日。 朝から雨が降るその日は、しっかりと防寒をしないと外を歩くには辛さを感じるほどの気温の低さだった。 国際女性デーのこの日、19時からウィメンズ・マーチ東京2018が開催されることが発表されていた。 私は初めてこのマーチに参加することを決めていた。 雨かと思いながらも、行かないという選択は私には無かった。 2017年1月21日。 ドナルド・トランプ大統領の就任と女性蔑視発言などに…
画家と7人の肖像
最後の肖像画はここに載せない。彼女とそう約束している。 Photo by Kazuki Hiro 4月、展示会場に来た人達だけが、最後の肖像画が誰のものなのか知ることになる。一つヒントを書くと、きっとみんな彼女の歌を知っている。この肖像画の制作中に参列した友人の結婚式でも、彼女の曲は演奏された。「今この声の人を描いているんだな」などと、一人密かに感慨を噛み締めるなどしていた。 最後のモデルの方の制…
長期滞在者
今となっては考えられないことだけれど、到着する日の宿泊の予約さえせずに、わたしはひとりインドに旅立った。帰りの飛行機は3週間後。唯一の計画らしい計画は、ガンジス川を見ること。ほかは何も決まっていない。黄色の小さなデイパックのなかには、替えのTシャツ・下着が2-3枚、ストール、洗面具、筆記具、持っていくか最後まで迷ったラップトップ、直前に無印良品で買ったアイマスクとエア枕 (これに関してはけっきょく…