長期滞在者
わたしの調子の良くないときに限り、妹のなんとなくモヤッと暗い電話が掛かってきます。お化け屋敷でこんにちは。 いつも良い反射が出来るわけではないので、今回は、キズバンを貼るのに失敗しました。良い反射ができるときは、会話の中で何かがほぐれるのですが、魔法使いでもないので毎回そうはいきません。つれない態度になってしまい、敵対は良くないという学習まではできているので、電話はあっという間に切れました。 母に…
長期滞在者
昔一時期、ペンタコンシックスという東ドイツ製の中判カメラ(6×6)を使っていたことがある。ビオメターという名の標準レンズの写りが美しく、カメラのデザインもなかなかかっこよかったのだが、肝心のカメラボディが一癖も二癖もある大変な代物で、フィルム1本(12コマ)に1~2コマは必ず妙な露光ムラが出るとか(シャッター幕の走行に変な癖があるらしい)、そもそも露出自体安定しないとか、コマ間隔が適当でたまに重な…
長期滞在者
大阪と奈良を分ける二上山麓の小さな田舎町がぼくの一人暮らしのスタートでした。部屋は7畳半でグレーのパンチカーペットが引いてあるだけのただの四角い部屋で、北側に腰から上へ半間の窓が1枚。部屋の隅っこには申し訳程度の小さな流し台があってトイレは共同でした。それで家賃15,000円が安いのか高いのかよくわからないのですが、とにかくぼくはここで写真の勉強を始めることになりました。東京湾岸の埋め立て地で、植…
Mais ou Menos
———————— 16.01.31 ぴちゃん ただいま。いま、神山から帰りました。帰りのバスでは、気づいたら寝てしまっていて、いつのまにか京都でした。時間を感じなかったからよかったけれど、家に帰ってきたらなんだかぽかんと寂しい気持ちになったよ。 ずっと住んでいる家なのに、まるで自分の居場所じゃないような感じ。ここ数日過ごしただけの古い里山の家の方が、ずっと昔から住んでいた場所に感じるくらいに帰って…
長期滞在者
「無限ホテル」をご存知だろうか。 「無限ホテル」はその名の通り、無限の部屋があるホテルだ。 ある日、「無限ホテル」に無限にある部屋は、すべて満室になっていた。 そこへ一人の男が部屋を求めてやってくる。 「無限ホテル」の支配人は、慌てずにこう言う。 『ご心配には及びません。1号室のお客様を2号室に、2号室のお客様を3号室に、とすべてのお客様を移動すれば、一つ空き部屋が出来ます。何せ、このホテルには無…
the power sink
こんばんは!今回も絵を載せます。見て頂けると嬉しいです。 ではよろしくお願いします! 頭がじんじんしているのに、何でか頭はからっぽの大きな穴になってしまった気分。その穴の上に穴に入らないような黒っぽい物が乗っかってくる気分なんだよ 車がぶつかりそう 四つ葉のクローバー。幸運を 唇が分厚いのか、唇が全く無いのかどちらかの人達 大き…
はてなを浮かべる
いっそ自分からこぼれるべき? 分断されてるみたいに思う?自分のことなのに? 発したものの受けとられ方が不安で仕方ない? (一人歩きさせる勇気がない?) ふりかかってくるものを避けるほど意志がないだけ? 湯気は泣かせ上手なのか? 隙間から覗くことをやめないほうがいい? いちいち計り直しているから面倒くさがられる? た…
日本のヤバい女の子
【2月のヤバい女の子/第二の人生とヤバい女の子】 ●鬼神のお松 二つの人生を生きた女の子がいる。一つめは人間の女性として。二つめは鬼として。 ---------- 《鬼神のお松》 昔々、深川にひとりの遊女がいた。名をお松といった。ある男が彼女に首ったけになり、身請けをした。男の名は立目丈五郎といった。二人は結婚し、穏やかに暮らし始めた。 満ち足りた日々は長くは続かなかった。ある日丈五郎は仙台藩士 …
長期滞在者
一体全体、おれにどんなカルマがあるというのだろう、 と書き始めてみて、ふと思う。 この「一体全体」という言葉は一体全体どうして疑問文を強調するための副詞として使われているのだろうか。 というか、なんでこの言葉がそういう機能を持たされているのか、 見れば見るほど良く分からない。 検索してみても、その由来なんかは出てないようだし、 仕方ないので久しぶりに三省堂の新明解国語辞典を引いてみたが、 期待して…
長期滞在者
家の中にあるたくさんの本。日本に戻ってきたばかりのころは、本を増やすものかと思っていた。本だけじゃない、物も増やしたくなかった。でも、十年もいたら物も増えるし、本には本当にたくさんお金を使った。中学生のころから、ファッションやメイクには目もくれず、本と音楽ばかり。ものは増やさないと思っているくせに、本は買ってしまう。本を全部読んでいるわけでもないのに、本屋に行くとわくわくする。まるで、本の中には…
長期滞在者
若い人へ こんな書きだしではじめると、いかにも自分が歳をとったように感じます。研究者としては未だに若手とされますし、立派な中年になる覚悟が定まっているわけでもないにしても。放っておいても心身が回復し成長していく時期が過ぎ、「おぅ、あとは死ぬだけだなぁ」と体感したのが数年前。とはいえ、生きていることがいずれ訪れる消滅の瞬間へのカウントダウンだという事実は、年端も行かぬ子供であったころの中心的なテーマ…
ギャラリー・カラバコ
アパートメント管理人が考えたタイトルで、古林希望が絵を描き、カマウチヒデキが200字小説を書きます。 二人のすり合わせはありません。お互いタイトルだけを頼りに、自由に考え、せーのでこのギャラリーにアップします。お互いの思惑が重なることもあれば、まったくかけはなれたものになることもあるでしょう。一つの言葉の持つ強度や振り幅の実験、みたいな感じになれば面白いと思っています。 「ギャラリー・カラバコ」と…