長期滞在者
ヨーロッパの8月は学生だけでなく社会全体が夏休み気分である。 そういう気分に乗っかってのんびりしたかったのだけど、なかなかそうは問屋が卸さない。 やり残していた確定申告だとか、失業保険のための再登録手続きだとか、 飼っていたモルモット(羽左衛門)が急死したのでその葬式だとか、 人生初の運転免許講習だとか、水墨画の特訓だとか、相変わらずの作陶活動だとか、 今年一番忙しい月だったんじゃないだろうかと思…
長期滞在者
どんな言葉をつないでも どれだけ言葉をかさねても おそろしいことばかり思いついて 喉元から引き返してしまう では胃の腑に落とし込めるかなと 考えをめぐらせてぎゅうっと押したら おなかを突き破られちゃった ぽっかり口をあけた空洞には 時間を詰めてみるつもりだけれど 穴を塞ぐには当分かかりそうだよ
虫の譜
子どもの頃のカブトムシ・クワガタ捕りは、灯火にやってきたものを捕るのであったり、父と見つけた毎年複数匹のコクワガタが棲む木にピンポイントでじっくりと目を凝らすというのが主だった。それらはある程度「そこにいる」ことが分かっている確率の高い方法である反面、いなければもうその日はどうにもならなかった。だから胸の高鳴りは車が目的地に着くまでにどんどん盛り上がって、ポイントの木を見始めるときに最高潮を迎え、…
長期滞在者
仕事の移動中に昼食を摂る時間がなかったのでコンビニエンスストアでおにぎりを買った。コンビニおにぎりといっても最近はなかなか馬鹿にできなくて、 けっこう凝ってて美味いものも多い。買ったのはゴボウと鶏肉がゴロゴロ入った鶏牛蒡飯。僕はゴボウが好きなのだ。 が、切符を買い時刻表を見てあれこれ考えながら駅のホームへのエスカレーターを上っているうちにいつの間にか手の中におにぎりがない。何のことはない、無意識の…
ショートな絵本
夏の光がつよくあたって、野原はきらきらしていました。 大きな木が一本、見上げるような高さでたっています。 さわさわと風が葉の間をとおりぬけるたび、かわいくて小さい光がくすぐったそうにはじけました。 くすくすと笑いさざめきながら、光たちは葉っぱの間で顔をだしたりかくれたりして、あそんでいるのです。 夜がやって来て、 あの野原の木の上に流れ星がおちました。 木のてっぺんにあるくもの巣に、ながれてきた星…
長期滞在者
ぼくの父方の祖父は、その当時は教師だった そして母方の祖父は、その当時は銀行員だった どちらも戦争には行っていない 昭和20年、父5歳、母2歳 父の住む町は、京都に近いこともあり B29が飛び交う空を見上げることはあっても、空襲にあったことはなかった 母の住む町は長崎にあって 軍事工場が多いので危ないという噂から、佐賀県に疎開したのだという 父の住む家は、畑もあったし田んぼもあったし 庭にはポポー…
the power sink
こんばんは!今回も意味のない絵を載せます。では、よろしくお願いします! 僕はよく入眠前に体がじんじんして手足の感覚が無くなる 南の方に、ヤシの木と雑木林と花のついた広い家を買った。なんだか寂しい 心臓みたいなダイヤと、ロース肉と、2人の小人と一緒に僕はとても燃やされている 妖精 舌みたいな植物が蒸し暑い日光を浴びている 乾燥した…
長期滞在者
先日新宿のエプサイトで写真を売るということをテーマにしたレクチャーをさせて頂きました。35度越えの猛暑の真っ昼間だというのに、後ろの方で立ち見もでているくらいお越し頂き大変ありがたいと思いましたが、このようなテーマのトークショーに興味を持たれる方がこんなにもいるのか、ということも驚きでした。 最近写真を売る買うを始めとしたファインアートフォトグラフィーの仕事の様子についてお話をして欲しいという依頼…
イルボンと小鳩ケンタの空席商会
◇出てくるひと(順不同・敬称略) イルボン(gallery yolcha車掌/詩演家):以下、車掌 小鳩ケンタ(詩人):以下、鳩 Adama C.Turay(画家):以下、アダマ ◇◆◇◆◇ 【2014年7月の相席】 2014年7月13日、gallery yolchaにて収録。 Adama C.Turay Exhibition(2014年7月5~13日)展示最終日。 生後5カ月の娘を連れたAdam…
風景のある図鑑
「 白熱電球 : incandescent lamp 」 白熱電球は、ガラス球内にある螺旋状の細い線、フィラメントの電気抵抗を利用した電球です。 フィラメントに電気を流すと2000~3000度の高温になり、白熱化して強く光ります。 エジソンが発明した当時のフィラメントは炭化した竹でしたが、今はタングステンという金属が使われています。 フィラメントは大変高温になるため、少しずつ金属が昇華(固体から…
長期滞在者
2週間ほど前に、映画製作に携わっている友人から連絡があり、と ある短編映画に出演する若い役者たちの動きをコーチしてもらえな いかと相談があった。映画の現場には興味があるので面白そうなの でやってみる事にして、2日前にその撮影が終わった。 ストーリーは至ってシンプルで、暇を持て余している二人の若者が 田舎道沿いの塹壕跡で原チャリを乗り回しているときに、たまたま 通りかかった女の子に声をかけるのだけど…