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Mais ou Menos #75 —裏でも表でもないわたしたちの往復書簡 —

Mais ou Menos


Pちゃん
お疲れ様です。2人が苦手な冬も、あと少しやね。日本の春は、一番好きな気候だから、今からとても楽しみです。このまま、風邪をひかず乗り切りたいね。

Pのお友だちから手紙が届いて、婚姻届を出したと聞いて、私はとても嬉しかった。夫婦別姓とか、戸籍制度への疑問、モヤモヤすることが結構あったみたいだけれど、この人と家族になりたいという気持ちのふたりが、法律の上で家族になれることはとても尊いことやと思う。

日本の制度には納得していないけれど、彼女の文面からわたしたちのことを気にしていることがわかって、その慮りが個人的にすごく嬉しかった。「わたしたちは家族になったけれど、あなたたちが同じように法律の上で家族になれない現状には納得できないよ」っていう気持ちが心強く思えた。

日本ではまだまだ先のことかもしれない。わたしたちが生きている間には、叶わないかもしれない。でも着実に社会が変わっていけば良いなと思う。ただただその存在が普通としていられる日がくると良いな。

来月からは、わたしたちの生活も少しだけ変わることになるけれど、この一年半くらいの間に身につけた考え方とか、物事の捉え方は見失わずにいきたいね。辛いことだけじゃなくて、良いこともたくさんあるやんって。自分たち、思ってるよりも悪くないやんって。そう思いながら、新しい季節を迎えたいなと思います。

Maysa


まちゃんへ

お手紙ありがとう。
寒い冬の季節もあと少しやね。Pも春が来るのが楽しみです。

自分たちはまだ日本の法律では法的な家族にはなれないけど、周りの人たちがこの人と家族になりたいと思って法的にも守られる立場になるというのは、いいなという羨ましさと、とても素晴らしいことだと思う気持ちの両方あります。

誰もが一緒にいたい人と一緒にいることができたらいいなと思う。その形に性別が縛られなくなる日が早く来て欲しいです。

来月から新しい生活が始まる。不安もありつつ、でも新しいことが始まるので楽しみな気持ちもあります。
二人で身につけたこの一年半の気持ちを持ち続けながら、楽しい生活していきたい。

2021.2.9

P

Maysa Tomikawa

Maysa Tomikawa

1986年ブラジル サンパウロ出身、東京在住。ブラジルと日本を行き来しながら生きる根無し草です。定住をこころから望む反面、実際には点々と拠点をかえています。一カ所に留まっていられないのかもしれません。

水を大量に飲んでしまう病気を患ってから、日々のwell-beingについて、考え続けています。

PQ

PQ

ゲームと映画が好きです。
国籍も性別もない。

Reviewed by
小沼 理

日本で法的に家族になることは、同性のパートナーと暮らしている自分にとっても色々な感情が入り混じるものです。そもそも自分が結婚することを想像してこなかったから、今のままの生活で十分と思うときは多いけど、それは違うと思いもする。急進的に結婚制度自体を否定する考えを取り入れようとしたこともあるけれど、親しい人が結婚したと報告してくれる時には純粋におめでとうと思う。

両義的な感情を抱えて矛盾している自分に、居心地の悪さを覚えてしまうことがあります。でも、それは私たちのせいではないとはね退けながら、長い時間をかけて変わっていくと期待していたい。春の気配を感じながらそう思います。

来月から変わっていくという二人の生活。楽しい日々でありますように。

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