当番ノート 第36期
高校までに教わる教科の勉強なんて、 社会で生きていくには、ちっとも役に立つはずがない、と思っていた。 目に前のテストや受験に「使えたら」、それでいいと。 それは多分まちがっていなくて、 だけど、この歳になるまで(どの歳だ?)生きてくると なぜか、ふと、突然、 「ああ、あの定理って、こういう人生の文脈の中では、 つまり、こういうことを説明してくれていたわけね!」と、 まったくもって、正解からは程遠い…
日本のヤバい女の子
【12月のヤバい女の子/抵抗とヤバい女の子】 ●松浦佐用姫 ――――― 《松浦佐用姫》 佐賀県唐津市。今から1500年前、この土地に一人の男性が立ち寄った。彼は大伴狭手彦(おおとものさでひこ)という名で、新羅へ出征する道中だった。 松浦の地に身を寄せた狭手彦を、地元の長者の娘が世話をすることになった。松浦佐用姫という少女だ。あれこれと面倒を見るうち、二人は仲良くなり、恋が生まれるまで時間はかからな…
当番ノート 第36期
魂のどこかが繋がっているかのような、心が不思議に近しく感じる種類の友人が、ここ一年ほどで数人できた。 そのうち一人は、同い年の女の子だ。 私たちは同居人だった。 今年の春先に、東京のとあるシェアハウスに3ヶ月間だけ住んでいた。 元々実家に帰る予定だったのだけれど仕事の都合などもあって、どうしてももうしばらく東京に留まる必要があった。 留学を控えていて、ほとんどのものを実家へ送り、仕事の道具と少ない…
当番ノート 第35期
こんばんは。はじめましての人が大半だろうに、でも久しぶりの人や、しょっちゅう顔を合わせてる友人にも読んでほしいなと思って、それでどちらかというと近況報告のような心持ちではじめたこの連載も今日で最終回です。長くて短かった、週1回×2ヶ月の全9回。ふと思い出して、いつか全部読んでね。 すみだで暮らしています。それから。 毎朝、通勤ラッシュとはおよそ無縁でのどかな東武線に揺られて、すみだから浅草そして赤…
当番ノート 第35期
幸福な気持ちで眠りにつく時、僕はいつもひとりだった。 数年前に自分が書き残した、その言葉は けっして嘘ではなかった、と思う。 ひとり目を閉じて、ぼんやりとしながら 瞼の裏をかけめぐる光に自らを委ね、 心から満たされていた夜を、その幸福な記憶を、 僕は幾つもたぐりよせることができるのだから。 だけど本当はその時、ひとりでありながら 「ひとつ」だったのではない…
当番ノート 第35期
こんにちは。辺川銀です。ぺんかわぎんと読みます。ペンギンが好きです。あと猫も好きです。10月から11月までの2ヶ月間、このアパートメントで「天国を探して」という短いお話を連載させていただきました。 週にいちど、二ヶ月間の連載ということで、物語のほうも全8回ということでプロットを作り書き始めたのだけど月曜日の担当ということで、月曜日の担当には暦の都合で第9回まであるんだよということが判明しましたので…
当番ノート 第35期
「地獄寺」―あの世とこの世の境界にある、人間の本音が隠れている場所― ◆地獄めぐり day 27 この日はヤソートーン県の市街地にあるワット・パーシースントーンへ向かう。朝8時過ぎに宿を出発し、15分ほどで到着した。しかし、早すぎたのか人がまったくいない。とりあえず、お目当ての地獄絵を見に行くことにした。 境内には芝生が広がっていて、いくつものお堂があった。そのうちのひとつに地獄絵が描かれて…
長期滞在者
いかにも何か大事なことが書いてありそうな本。やわらかな質感の桃色の表紙に、ミントグリーンの太い帯が巻かれたその本を書店で見た時、まずそう思った。本の名前は『うしろめたさの人類学』。著者はエチオピアでのフィールドワークを続けながら、文化人類学を研究している松村圭一郎さん。個人的な感情である「うしろめたさ」と人類学が、どう結びつくのか。帯を見てもわかるようなわからないような……だったけれど、本の放つ説…
当番ノート 第35期
こんにちは!今日は新宿ルミネのカフェバイザシーから。ここもは、某カフェカンパニーさんによって運営されている、ある意味東京のお手本的カフェをチェーン化したお店。まだ、夕方だというのに、ターゲットそのままだろう20~30代女子(OLではなさそう)が集まってきている。すごい。カフェカンパニーの系列店はどこもいわゆるカフェ飯も充実していて、(いわゆる男性に比べ)経済感覚のすぐれた女子が、(経費でなく)自腹…
当番ノート 第35期
はてしなくどこまでも続く一本道。 真夏の美しい夕暮れのひろがり。 水田に描かれた軌跡と、そこに映し出された空。 一日のはじめの陽射しが注がれる窓辺。 白い息の向こうにともる、誰かの温もり。 風景の記憶を辿る時、その多くは新潟に帰っていく。 たとえば、雪原の静けさに身体を預けた記憶。 実家の犬と一緒に、近くの広い空き地にあるちいさな雪山にのぼって、 てっぺん…
長期滞在者
「明日、待っていますね。」 そう約束をしていた、毎日言葉を交わすことが楽しかった人が、その明日に突然死んでしまってから、 私は明日を信じなくなった。 あれから、眠る前に毎晩思う。私に必ず明日が訪れるわけではない。 このまま眠って、私が目覚めないことを想定する。 例えば、今Twitterに残したこの言葉は、明日私が死んでしまったら、最期の言葉として残るのだなと考えて、 言葉を綴るようになった。 「未…