当番ノート 第34期
「蒐集」と書いて読みは「しゅうしゅう」だが、僕は最近まで読み方を知らなかった。 「蒐」の字面から、コレクションの完成のために生活を省みず私財を擲ち、修羅道を往く鬼の如きコレクターの姿を想像して、「収集」とは別個の単語だと認識していた。実際は、殆んど同じ意味で使われている。(似たような勘違いをしたことのある人もいるのでは?)僕の場合、初めて見た「蒐集家」という肩書の人物の写真の形相がそうしたイメージ…
当番ノート 第34期
一点の傑作を作るには膨大な無為な時間とどうしょうにもない駄作が不可欠だ。少なくとも私には。 1990年後半、私は富山県の片隅にある化学工場に勤めていた。三日働いて一日休みで勤務時間は昼番・夕番・夜番と三交代で作業させ24時間、工場は操業していた。狐色した作業着を着て指示された作業をこなす仕事で、タッチパネルで配管を流れる化学的な液体を調整したり出来上がった製品をフォークリフトで運搬したりしていた。…
当番ノート 第34期
それでも地球は回っているのだな。っと思う事がしばしある。 みなさんは松崎しげるが唄う「愛のメモリー」という曲をご存知だろうか? きっとたいていの人は知ってるだろうと思う。もし、知らない人がいたら一度は聞いてみるべきだ。 その「愛のメモリー」であるが、私の生まれる何年も前に発売された曲であるにもかかわらず、物心ついた頃には耳に馴染んでいたし、思春期に聞いてた小室ファミリーやジャニーズ音楽のように私の…
当番ノート 第34期
私は砂漠の女である。 てりたまバーガーの卵そっくりな半熟の太陽に、パキパキと音を立てて水がとび、乾き、飢える。 砂の道には時々ごろりと頭蓋骨が転がっており、「一歩間違えばこうなるな」とあぶら汗をかく。 過酷な場所では、覚悟する人間が勝つ。 もし不意に死んでも、未練に背を向けてクールに成仏しようと心に決めた。 頑張って道を進んで行くと、オアシスを発見し、溺れるほど水を飲んで木陰で休むことができる。 …
日本のヤバい女の子
【8月のヤバい女の子/幽霊とヤバい女の子】 ●お菊 ――――― 《皿屋敷(落語)》 ある夏の夜、一人の男が肝試しをしようと言い出した。 近くにかの有名な番町皿屋敷跡がある。青山という男が美しい女中お菊に横恋慕するが相手にされず、腹いせに家宝の十枚一組の皿を一枚隠し、菊に濡れ衣を着せて指を切り落とし、井戸に吊るして殺してしまった……というアレだ。青山の屋敷には今もなお古い井戸がぽっかりと残っていて、…
当番ノート 第34期
このたび火曜日を担当させていただく事になった、佐原まどかと申します。 私、佐原まどかは生まれも育ちもスカイツリーのお膝の先、東京都墨田区東向島です。仕事は向島百花園という都立庭園の中で、お土産物・喫茶販売と、園内併設の集会施設でクラス会や法事をされるお客様への仕出し料理・飲み物の提供をする自営業をしております。 一回目の今日は私の源である向島百花園の事を書かせて頂こうと思います。…
長期滞在者
はじめにー いつも、ひどく個人的なことばかり書いているけれど、今回はさらに個人的なことを書かせてください。他のことが考えられないくらい、7月は自分の体と向き合う時期だったので。それに、これ以外に書くことが思いつかないのと、これを書かずには次に進めないというか。他人の体調のことなんてどうでもいいと思うけれど、暖かい気持ちで読んでいただけたらと思います。 ことのはじまりー 実は、7月24日から29日ま…
当番ノート 第33期
僕にとっての珈琲は、 朝自分を目覚めさせる1杯だったり、好きな音楽によく合う香りだったり、それがふわりと優しい空気作ったり、大切な人に気持ちを伝えるためだったり。 二ヵ月頭の中でぐるぐると考えていてもはっきりとした答えは出なかったけれど、 でもいつも、1杯の珈琲は僕と誰かを繋いでくれるものでした。 ここで文章を書いてるのもきっかけは1杯の珈琲だったし、仕事、ワークショップやイベント出店のきっかけも…
当番ノート 第33期
あの日、スコットランドのエジンバラでストーリーテラーを目指してからずっと、自分のストーリーテリングを模索し続けてきた。 そんな中、このアパートメントの住人、礼子さんと出会い、コラムを書かせていただくこととなったのだ。 毎回のステキなレビューは、読み聞かせ、語りをされるふきさんが担当してくださった。今回が最終コラム。 右往左往しながらも、どうにか2か月書き続けることができたのも、このアパートメントに…
ギャラリー・カラバコ
ここはとあるアパートの一角にある、小さなギャラリー「カラバコ」。 白い壁に空っぽの額縁が無造作にならび、その下には題字だけが添えられています。 タイトルだけを頼りに、二人の作家が別々に文と絵を寄せ、2つが合わさった時に初めて作品が完成するのです。 01 桟橋 02 物差し 03 帯 04 時化 05 吃り 06 影絵 07 隠者 08 ウミネコ 09 うぶすな 第10回は「蟹」 このギャラリーにあ…
当番ノート 第33期
嘘を書かない、それが難しかった。 9回にわたって、中学と高校時代を過ごした下宿のことについて書いた。本当に居た人たちのこと、本当にあったことを、本当にあのころ感じていた通りに。それが、連載を始めるときに決めたことだった。 卒業して8年経ったのだ。いま下宿について書くということは、以後それが、私にとっての下宿の記憶になっていくということだ。書くならば、書いてしまうならばできうる限り、どんどん弱ってい…
長期滞在者
テレビドラマを、というかテレビを見る習慣が小さいころから本当になかったので、坂元裕二という脚本家のことはつい最近まで知らなかった。きっかけは今年の冬に放送されていた「カルテット」という作品だったけど、それは昨年の暮れに「逃げるは恥だが役に立つ」を見て、毎週一度の放送を待つわくわくとか、映画とはまた違ったテレビドラマの面白さを知り、その後番組だったから見てみた、という感じで、1話は家事をしながら見て…