長期滞在者
暖かくなって、男の子達が、久しぶりに神社の裏手で話し込んでいる。小さな神社の裏に、小さな茶色いベンチが置いてあって、彼らはそこで尽きない話をしている。大体三人ときどき二人、親には聴かれたくない本音の話しのようである。きょうは、おれら二人とも酔っ払ってしまうと、どちらも止めることができないやろなどと、お酒を飲んだ時の危機について話し合っている。ここ二年ぐらい、夕ぐれまでの時間にやって来て、だらだらと…
当番ノート 第19期
(学生時代の作品より) 沢山の年齢の女性と会って、お話を伺って見えてきたことがあります。 10代〜20代は未経験な事だらけで、早く大人になりたいと、もどかしさに苦しんでいて、けれど肉体のもつ若さのパワーが武器だと、気付いていなかったり、気付いている娘はある意味凶悪だったり笑。 30代からは生きてきた背景が身体の内側から溢れる空気や美しさ、エレガンスに影響するのではないかと思うのです。40代は30代…
当番ノート 第19期
【第8話 体とヤバい女の子】 ◾︎ろくろ首 およつ(列国怪談聞書帖) 十返舎一九の『列国怪談聞書帖』に登場する女の子 およつは首がのびる。 彼女は愛しあって駆け落ちした恋人に、金のために殺された。恋人の名は回信という。 回信は駆け落ちの途中で金と未来が惜しくなって彼女を殺した。ひとり楽しく暮らす回信は旅先で宿屋の娘と懇ろになる。ピロー・トークの最中、にわかに娘の首がのび、およつの顔に変わる。およつ…
幻覚にカーテンコール
不要ならば捨ててしまって下さい。 私はカーテンの中に居りますから。 私を起こさないで下さい。 そこに私の席はありませんから。 私を番号で呼ばないで下さい。 その音が実像を結ぶことはありませんから。 塩素の匂いとプール熱。 熱冷ましは要りません。 私を囲むそのカーテンを、 摂氏零下四〇度の極光で染め上げて下さい。 オゾン層にはラジオゾンデを浮かべて。 傍らには無菌室の宝石を。…
当番ノート 第19期
外国語を勉強するのが好きです。 今まで、色々な言語を勉強してきました。 一番最初に出会ったのは英語で、中学、高校と6年間勉強しました。 時々、『ENGLISH JOURNAL』とか、ちょっと楽しい英語雑誌を買ってきたり、字幕で映画をたくさん見たりしながら、適当に覚えていきました。 大してしゃべれもしないのに英語で授業をする大学の学部に飛び込み、未だにそんなに上手くはないですけれども、英語…
当番ノート 第19期
イエローとグレーの間の色の名前かと思ったら、 そういう花があった。 原産はインド。彼方の道。 実も花も葉も染料になる。 motoco oki
当番ノート 第19期
畑の住人たちにはうれしい 雨の多い春先になりました。 あんなに寒かった冬もおわったと思ったら あっという間に春のよそおい。 お茶畑では根っこからぐんぐんと水を吸い上げて 秋から冬にたっぷり枝にためた栄養をエネルギーに ちいさな新芽を大きくひらかせようとしています。 お茶の新芽の収穫まで、あと1ヶ月半。 ここからあっという間の成長です。 日に日に大きくなる芽をみて、また1年がすぎたなと感じるのです。…
当番ノート 第19期
家族と長い事過ごした尻尾がくるりと揺れる犬。 今でも茶色いかたまりを見ると、彼を思い出す。 日差しの中で丸まって眠る犬の毛の一本一本が明るい茶色。 なんて男前なんだと思っていた。 何処かの海で拾って来た流木の木目の色。 その上に乗せる色は何だろう。 そのままでも十分美しいのだけど、その木目の茶色い筋をたどる様に 絵の具を置く。 ラオスに行った人の話を聞いた。 ナイトマーケットで一心不乱に人形を作っ…
長期滞在者
2015.3.3-3.8 ギャラリー・マゴット(大阪・四ツ橋) カマウチヒデキ写真展『風景について 2 』より抜粋。 ・・・・・・ 一つの展示が終わったら、ああ自由の身だ、とか思う。 終わった展示の内容に引きずられることなく、何を撮ってもいいのだ。 何かしらの「まとまり」に対する整合性とか、全部ご破算になるのだ。 自由なのだ。 そして、その「自由」が一番やっかいで手強い相手なのだ。 なのだ。なのだ…
当番ノート 第19期
いつも実体験を元に書いています。 今回はつい最近、ようやく父離れをしたお話です。 女性の皆さん、お父さんの匂いが嫌になったのはいつ頃ですか? 私の記憶では12、13歳ごろだったような気がします。 そして同時に、多感で片思いを沢山していた時期だったことを思い出します。 思春期の少女がお父さんの匂いや言動が嫌になる、というのはよく聞く話ですが 思春期の少年がお母さんの匂いが嫌になる、はあまり聞かないよ…
当番ノート 第19期
【第7話 嘘とヤバい女の子】 ■磯良(雨月物語) 上田秋成の《雨月物語》の中の一話「吉備津の釜」には好きな男に騙されて死に、好きな男を騙して殺す女の子が登場する。 彼女は名前を磯良(いそら)という。 彼女の夫 正太郎は何度も恋に浮かれて浮気をし、見かねた両親に座敷牢に入れられる。 正太郎は愛人と別れるために要ると嘘をついて磯良に金を工面させ、その金を持って愛人と逃避行の旅に出る。 磯良は焦がれて死…
長期滞在者
妻が久しぶりに劇場の舞台に立つことになり、初日の公演を観に行ってきました。場所は新宿二丁目・タイニイアリス。10年ぶりに訪れるこの古い劇場は間も無く30余年に及ぶ歴史に幕を降ろすそうです。 お芝居の世界には、「初日乾杯」というのがあって、初日の舞台が終わった後、出演者と観客一同に飲食が振る舞われます。 無事初日の芝居を終えた後の演者さんたちの晴れがましい表情、それを受け止めるお客様が一体となった独…